佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

2010.08.31

2010年08月31日 22時29分35秒 | 抄読会
Usefulness of diffusion-weighted MR imaging in the evaluation of pulmonary lesions
Eur Radiol (2010) 20: 807-815
Haidong Liu et al.
<Abstract>
◎目的:
 肺悪性腫瘍と充実性の良性病変の鑑別におけるDWIの役割を調査
◎方法:
 1.5T MRIで62症例の66病変についてDWI(b=0,500s/mm2)を撮像
 信号強度、ADC値を測定し、検定を行った。
◎結果:
 信号強度の差はなかったが、良性病変のADC値は有意に高かった。ROC解析では、ADC値の閾値を1.400×10-3mm2/sとすると感度83.3%、特異度74.1%となった。小細胞癌と非小細胞癌でも差があり、前者が有意に低値を示した。
◎結論:
 肺結節の鑑別診断において、DWIは有用である。

<本文>
◎方法
・患者群 62症例 66結節
 充実性の腫瘤で、含気のある領域を持たない
 病理学的、あるいは臨床データから組織が確定された結節
 最小径は1.4cm
 MRIの禁忌なし
・MRI:GE製1.5T Twin-Speed Infinity with ExciteⅡ
 8チャンネル Body phased-array coil
 T1WI(fast SPGR),呼吸同期T2WI
 DWI:シングルショットEPI、ASSET併用(R factor=2)、b値0,500、read, phase, section方向に印加 TR/TE=4000/48.9, FOV=36cm, matrix=128x128, thickness=6mm, gap=1mm
・画像評価
 2名の放射線科医の合議
 DWIの信号強度(骨格筋と比べ、hypo, moderate, high intensity)を視覚評価 
 ADC maps(AW4.0で作成)
○ROI:
 円形、あるいは楕円形のROI
 病変の充実部分に置き、壊死領域は除く。壊死領域がないようならば、病変の中心部にできるだけ大きなサイズで置く。
 3回施行し、平均のADC値を得る。
・統計解析:
 SPSS ver.13.0を使用
 DWIでの信号強度と良悪性の比較:Pearson’s chi-square test
 平均ADC値と良悪性の比較、SCLCとNSCLC、NSCLCと良性病変:independent samples t test
 良悪性の鑑別におけるADC値の診断能:ROC解析
 P<0.05を有意差とする

◎結果
・DWIの信号強度についてTable.2:
悪性病変は骨格筋と比較して高い信号強度を呈する。Fig.2cには無気肺+肺癌のMRIあり
・ADC値の良悪性の比較:
 良性1.648±0.416×10-3mm2/s
 悪性1.256±0.320×10-3mm2/s 前者が有意に高値を示す(t=-3.637, p=0.001)
 ADC値の閾値を1.400×10-3mm2/sとすると、感度83.3%、特異度74.1%
・ADC値とSCLC(9例), NSCLC(35例)の比較:
 SCLCは1.064±0.196×10-3mm2/s
 NSCLCは1.321±0.335×10-3mm2/s 有意差がある(t=2.967, p=0.007)
 NSCLCは良性病変より有意にADC値が低い(t=-2.744, p=0.009)

◎考察:
・撮像法について:自由呼吸撮像は、息止めと比較してSNRが高い(13)
・DWI診断の定性的な評価:(11)、(15)
・無気肺と肺門部肺癌の分離:(10)
・ADC値の測定による定量的な評価:細胞内腔と細胞外腔の比率(16)、細胞密度の増加による細胞外腔の低下(17)、細胞内の細胞骨格、小器官、可溶性の大分子などが影響する(18)
・ADC値を測定することは、良悪性の鑑別、NSCLC, SCLCの鑑別に有用かもしれない。
○limitation:
・肺領域での磁化率アーチファクト
・EPI法に基づくアーチファクト、巨視的な動きによる画像の歪み
 →今回の撮像では、診断の妨げになるほどではなかった
・良性病変の数が少なく、病理診断ができていない

2010.08.29

2010年08月29日 22時52分34秒 | オフタイム
夏の終わりの日曜日。
家族ぐるみでお付き合いの、Y君と愛娘Hちゃんと公園で遊んできました。

さすがに遊具で遊んでいると、暑いのですが、日陰にいると涼しい風を感じます。

たくさん撮ったうちの一部の写真をアップしています。

http://blog.goo.ne.jp/photo/28965

どうも順番などがうまく指定できないので、時系列がおかしく、ちょっと見づらいかもしれません。

コドモはふたりとも2歳ちょっと。保育園の方針で、すっかりハダシが板についています。面白かったのは、小さな木の実(なんだろう?)を大事に両手で抱えてきて、セミの赤ちゃん!と見せてくれたこと。
最近、どんどんおしゃべりが上手になってきて、楽しませてくれています。

ぶどうは昨日、N先生から頂いたもの。T病院近くで採れたてのぶどうです。お風呂入りたくない~と、泣いていたのがケロっと泣き止んで美味しそうに食べていました(実際、美味しかったです!)。ものすごくジューシーで、肘からポタポタと…

2010.08.27 軟部腫瘍のADC値

2010年08月28日 21時20分30秒 | 抄読会
久しぶりの論文。
RSNAの資料用に書き落としているものです。

乱雑な記事ですが、軽い論文紹介と思ってご容赦ください。

JMRI29:1355-1359(2009)

Diffusion-Weighted Echo-Planar Magnetic Resonance Imaging for the Assessment of Cellularity in Patients With Soft-Tissue Sarcomas

Dirk Schnapauff et al.
<Abstract>
◎目的:軟部肉腫の細胞密度を評価する方法としてのDWIの適格性を検討する

◎方法:
症例数30 31の組織が確定された腫瘍 1例が生検 30例が切除標本
14症例が化学療法前、16例が化学療法後

◎結果:
腫瘍の細胞密度は、最小ADC値と相関していた(Pearson correlation coefficientで-0.88 95%信頼区間)
先行する抗腫瘍療法の影響を受けない
低ADC値ほと高グレードであったが、P=0.08と依存は顕著ではなかった

◎結論:
ADC値は軟部肉腫の細胞密度を評価するのに有用と示された。
DWIは、腫瘍の細胞密度の変化を評価することで、細胞障害性の治療効果をモニターする非侵襲的な手法となるかもしれない。

<本文>
◎背景
 DWIは水プロトンの可動性の情報を提供し(4)、グリオーマや脳メタの細胞密度を反映する(3-7)
 巨視的な容積の反応に先んじて、細胞の変化を早期に検出する感度の良いバイオマーカーとして評価されている(8-17)。

◎方法
MRI装置:Siemens 1.5T Symphony
撮像から切除まで14日以内
症例群は上記
スキャンプロトコル:
 Single shot EPI, TI=180, TR=10,000, TE=108, NEX=2, FOV=180-250mm2, matrix size=256x256, thickness=5mm, interslice gap=1mm, partial Fourier transform and EPI factor=88, b=0,500,1000
ADC(mm2s-1) = [ln(S0/Sb)]/b
S0,Sb:それぞれのb factorでの信号強度
ROI:
2名の放射線科医で合議
20ピクセル以上を含むROIを3箇所
他のシーケンスで充実部分と確認される部位で、最も低いADC値をとる
ADC値が上昇している部分は嚢胞変性や、壊死などの可能性がある(5)
3個のROIの平均で症例のADC値を代表させる
細胞密度:
切除面における核の面積の割合と定義??
顕微鏡の設定
0.01mm2内の細胞の数として表記されている
統計解析:
・細胞密度とADC値;Pearson’s correlation coefficient
・最小ADC値と腫瘍の悪性度:Student’s t-test
・2つのサブグループ(前治療の有無)の差はAN-COVA test
・SPSSで解析
・p<0.05を有意差とする ◎結果
最小ADC値:41×10-3mm2/sec~232×10-3mm2/sec
細胞密度:20-107/0.01 mm2

◎考察
・単位面積内での細胞密度は、水の拡散に影響する重要な因子であるとされる。水の拡散は細胞内腔と細胞外腔の割合に依存する(25,26)。
・腫瘍学的な観点からのDWIの応用について
骨肉腫(14)肝癌(15)乳癌(16)結腸癌肝転移(17)
放射線治療での軟部肉腫の検討(28)
・良悪性の鑑別について
細胞密度との相関関係はあるが、組織型や悪性度の推定は困難かもしれない。ただし、悪性度は細胞密度のみで決定されるわけではないので、驚くべき結果ではない。

ROIのとり方、細胞密度の定義の仕方、考察のもって行き方などが勉強になりました。
論文はフリーのPDFです。内容に誤り等があれば、ご指摘いただけると幸いです。

2010.08.27

2010年08月27日 21時25分06秒 | オフタイム
今朝は病院の画像カンファレンスでした。
病院に泊まり込みで準備。と、いうのは若干大げさで、前もってやっていなかったのが悪いだけなのですが。
今回の症例は、大学の勉強会でも使おうかなと思っているので、疾患名は伏せておきましょう。認定医たちに当てる予定です。楽しみにしていてください?

それにしても、朝夕は涼しくなりかけてきましたね。昨夜などは秋の夜の風情が漂っていました。

2010.08.25

2010年08月25日 21時57分51秒 | オンタイム
手前のことなので、ちょっと書きづらいのですが…
今年度の認定医、専門医の受験者、無事に合格いたしました(本ホームページにもアップされています)。

ご心配くださった方々、ご声援いただいた皆様、ありがとうございます。

まだまだ先は長いですが、ひとつの区切りということで気持ちを新たに頑張っていきたいです。


2010.08.24

2010年08月24日 21時52分40秒 | オフタイム
今日は研修日。久しぶりに大学へ行ってきました。
あいにく、目当ての検査は入っていませんでしたが、たくさん文献を仕入れることができました。
大学は夏休み期間中で、居残り組がとても忙しそうにしていました。夏の疲れが出てくる頃なので、体調には十分、注意したいですね。

全然、関係ないのですが、トライアルで使っていた PC法の解析ソフトがなんと8700ユーロと判明しました…いくら円高とはいえ、ちょっと手が出ない額ですねぇ。かなり面白いソフトなのですが。なんとか入手するための良い案をお持ちの方がいらっしゃったら、こっそりメールで教えていただけるとうれしいです。

2010.08.23

2010年08月23日 21時51分38秒 | オフタイム
さて、試験もおわって少し気がラクになりました。
また忙しくなる前にipadの練習をしてみようかな、と言う訳でこの文章はipadで打っています。キーボードの操作性にはほとんど問題ないのですが、やはり不慣れなためか言葉まで浮かびにくくなっています…変換などは思ったよりずっと優秀です。
ちょっとだけ、入力媒体に依って文体が変わりうるなんていうことがあるのを実感しています。
たかだか道具ひとつ違いなのですが、面白いですね。

2010.08.試験終了

2010年08月22日 22時13分19秒 | オフタイム
ようやく試験が終了して帰宅しました…
試験監督の先生方、他の受験生の方、どうもお疲れ様でした。

案の定、iPadがネットに接続できなかったので、更新が今日になってしまいました。

とりあえず、トウキョウの写真をアップしています(うまくアップできず、時系列が逆さになっていますが…)。

http://blog.goo.ne.jp/photo/28193

今回はiPadのアプリについていた、夏目漱石の「こころ」「三四郎」を読みながらトウキョウにのぼってきたので、街並みや雰囲気がとても不思議に感じられました。変わり続けるところが、変わらないところなのかな、なんて。

全くの余談ですが、東京についた日の晩、京王プラザホテルで夕食を摂ろうと並んで待っていると、女子バレーの超有名選手が次に並んでました。失礼ながらどうしても、どうしても名前が思い出せず、サインなどもらえなかったのが残念でした。なんと、あの木村沙織選手です。すらっと背が高くて、ちっちゃい顔でした。

試験前に「ド忘れ」がでるなんて…とちょっぴり不安になり、せっかくの食事中に舌をかんでしまったりしました…まだ痛いです。

試験自体は、ぼちぼちといった感じですが、結果がわからないので感想は伏せておきます。
面接がシングルの狭い、暗い部屋で行われていたのはちょっと面白かったです。
心臓MRIの有名な先生にご挨拶できたのは、今回最大の収穫ですね。

試験後は六本木やら表参道やらを案内してもらって、大都会を満喫することもできました。
何しに行ったんだか…という声も聞かれそうなので、今回はこの辺りで。

それでは。

2010.08.18

2010年08月18日 22時43分48秒 | オフタイム
明後日から専門医試験ですね。専門医の受験は僕だけですが、認定医試験は4名(…かな?)が受験。
あの頃は県病院に勤めていて、guri先生たちから厳しい指導を受けていたっけ。

時間がたつのは早いものです。

試験問題のPDFを入れた(なんとかできた!)iPadは持ってきますが、WiFiスポットにうまく繋げるか分からないので、僕からは日曜日までブログを更新できないかもです。

みなさま、どうか試験の無事を祈っていてください。

2010.08.17

2010年08月17日 23時12分37秒 | オフタイム
各地で残暑が厳しい日々が続きますが、通勤中にみえる入道雲は、梅雨明けの頃のイノセントな感じがなんとなく失われてきたように感じられます…

「盆明けだから」という色メガネで見ているせいか、本当に色メガネ(サングラス)を掛けているせいか。

そういえば、この間は昼間に海に入ったのですが、珍しく電気性眼炎にならずにすみました。サーフィン用サングラス、効果絶大ですね。だれも掛けていないところでするのは、ちょっと勇気がいりますが。もっとサングラスする人、増えないかな。