佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

2008年1月の研修医の感想 その1

2008年01月31日 20時36分30秒 | ローテーター研修医の感想
 あっという間に1月も終わってしまいました。
 佐賀大学での初期研修は、中央診療部門という形で1ヶ月(正味3週間弱)の放射線科研修があります。短い間でも、目的意識がはっきりしていると、こちらも的を絞って教えることができるので良い研修をしてもらえると思います。
 今回は必修研修だけでしたが、Tくんに無理をいって感想を書いてもらいました


 1ヶ月間必修として放射線科の研修をさせていただきました。
 この研修は自分が読影したものを上の先生方がfeedbackしてくださるので、自分の読影の仕方の足りないところにきづけて、大変勉強になりました。いい研修をさせていただいていると実感しました。今まで読影は苦手意識が強かったのですが、この一カ月の研修により今までよりも様々なことを意識してX線を読むようになれたかなと思えるようになれました。

 またCT室で先生方から指導を受けることにより、単純CTの必要性、緊急性があるかどうかなど自分なりに考えてオーダーできるようになれたと思います。今まで自分がいかに何も考えずCTをオーダーして、先生方に迷惑をかけてきたかなと実感しました。
 1ヶ月と短い期間でしたが、読影能力、CTの撮り方の知識を得ることができ大変有意義な研修だったと思います。
 熱心に指導してくださった放射線科の先生方、並びに放射線技師、看護師の皆さん1ヶ月間ありがとうございました。


 Tくんは小児科に進路を決めていたので、画像検索の仕方をアドバイスしたところ、毎日遅くまで(時には休日まで)熱心に小児のX線を中心とした画像をみていました。4月からの実戦に役立ってくれれば良いなと思います。また、最近僕が若干はまっている小児中枢神経の発達過程についても、良い画像を過去画像からピックアップしてくれました。HTMLを覚えて、良いアトラスを作ったら送るからね。

 と、非常にまじめなTくんですが、バイタリティにもあふれていて色々な活動もしています。
 明日は引き続きTくんの感想です。お楽しみに










2008.01.30医局会前カンファレンス

2008年01月31日 07時00分20秒 | オンタイム
 2008年の1月も今日で終わりです。あっという間ですね。

 水曜日は、医局会前に学生・医局員向けに回り持ちで、症例検討形式のカンファレンスを行っています。
 今回は僕とMIZ先生の当番でした。

 僕の症例は頭囲拡大+びまん性白質病変+皮質下嚢胞を呈した症例です(詳細は割愛させて頂きます)。FLAIR像を2枚提示します。

   
 
 丹念に所見を拾い、臨床所見と併せて鑑別を絞る練習となる症例のつもりで選びました。結構難しい症例だと思いますが、今週の学生さんも非常に勉強してくれていたので、すらすらと進めることができました。 ちなみに、確定診断はまだついていません・・・

 MIZ先生は、リスクマネージメントの観点から画像診断が貢献できうる症例を、ティーチングファイルの中から数例を提示していただきました。いずれも貴重な症例で、まとめて発表されることが待たれます。

肝血流動態イメージ研究会

2008年01月31日 00時23分11秒 | 研究会・学会
先週末に横浜で開催された肝血流動態イメージ研究会に参加してきました。
毎年開催される、非常にマニアックな肝臓のみの研究会です。

今年は、昨年頭に発売されたソナゾイドが主役でした。
超音波検査用の造影剤で、血流評価およびクッパーイメージの両方を得ることができる薬剤となっており、腫瘍性病変の評価に有用です。薬剤はマイクロバブルであり、これまで同様の薬剤として存在したレボビストよりも頑丈なバブルとなっているのが特徴です。

個人的によかったと感じたものは、SPIOを用いて、簡便に局所治療効果判定を行う方法の発表でした。いつも使っている薬剤ですが、一工夫するだけで、今まで苦労していた評価を簡単に行えるようにする方法であり、感激しました。実際には、①SPIOを投与してクッパー細胞に取り込まれている間に治療を行う②治療範囲のクッパー細胞は障害されSPIOクラスターが残存したままになる③焼灼部位はT2*WIで著明な低信号部として残存するし、治療された腫瘍は高信号を呈する、というステップです。3D T2*WI開発と方法を考え出された筑波の先生方に感謝します

得るものはあったし、移籍されたT井先生(鹿児島でご活躍中)に会えたし、いいことずくめの肝血流でした。
来年も行けることを祈って、この辺で寝ようかな

今日の医局会

2008年01月30日 23時46分46秒 | オンタイム
今日の医局会は抄読会&雑誌紹介の予定でしたが、保険診療に関する講習会(どんな薬や検査が保険で切られやすいのか、等の話)があったので次週に延期となりました。ですので今日の医局会はあっさりと終わりましたが、盛り上がった話が二つあって、ひとつは電子カルテが新しくなる際にどうするか(電子カルテが使えない時間帯の読影レポートをどうするか、新しい電子カルテで運用される初日は混乱が起こることを想定して検査を少し絞った方が良いのではないか、など)と、もうひとつは医局長の提案で医局にあるティーチングフィルムを棚ごと処分して、作業&くつろぎスペースにしてはどうかといったことでした。後者の話に関してはProfの賛成が得られず、少なくとも今年度中には実現できなさそうです。個人的にはあのばかでかい棚は撤去して欲しいのですが、Profいわく「買うときはん百万した」とのことです。フィルムに関してはAU先生が長年かけて集められた貴重な症例もたくさんあるのでスキャナーで取り込んだりして保存する必要はあると思います。Profも納得してもらえるような良い案を考えていきたいと思います。
ちなみに昨日は注腸の検査中に透視台が調子悪くなってごたごたしたり、いすに足をぶつけたりと散々でした。               by guri

第26回佐賀CT・MRI研究会のご案内

2008年01月30日 07時50分30秒 | 研究会・学会
 日曜の春のような天気がウソのような曇り空が続いています。幸い気温はそれほど低くありませんが、体調は崩されていないでしょうか。

 今週の金曜:平成20年2月1日 18:30より、佐賀市新栄東3丁目7-8 マリトピア
 にて、第26回佐賀CT・MRI研究会が開催されます。

 テーマは「胸部領域の画像診断」です。
・教育講演として、「肺寄生蠕虫症の画像診断」を
 九州大学大学院医学研究院 保健学部門医用粒子線科学分野 医用放射線科学
 准教授 坂井修二 先生

・特別講演として、「肺結節性病変の画像診断-肺癌 vs 非癌病変」を
 滋賀医科大学放射線部
 准教授 高橋雅士 先生

 に講演していただきます。
 
 日医生涯教育制度認定講座でもあるので、是非ご参加下さい。
 学生さんや、研修医の方もお待ちしています。

冬の金沢へ~びまん性肺疾患の研究会に

2008年01月29日 20時32分09秒 | 研究会・学会
先週土曜日、石川県金沢市で行われた白山カンファレンス(はくさん)という、びまん性肺疾患の研究会へ出かけてきました。私は実家が富山県ですが、長く冬の北陸に帰っておらず、お誘いを受けて嬉しくなって遙々飛んでいきました



小松空港に着く頃には下方に広がる真っ白な平野が見え、降り立ったところは雪景色。懐かしい景色に一人で大はしゃぎでした。北陸では雪に備えて植木に雪吊りという縄張りをするのですが、その光景すら懐かしく新鮮で、おもわず写真をパシャパシャ。まるで初めて都会に行ったお上りさんみたい・・・



研究会は4例の症例を臨床・画像・病理を含め、じっくり検討するもので、何と1例1時間半くらい続き、かなりハード(濃い?)な会でした。簡単に・・・ご報告。

症例1:セラミック製造業者に出現した間質性肺炎の1例。
 両側下肺野末梢胸膜下に胸膜より若干離れた部分を主座として非区域性・帯状に広がるすりガラス影で、収縮性変化を伴う。経時的には緩徐な進行あり。f-NSIPに近い画像だけど、微妙に違う要素があり、膠原病や薬剤関連をr/o・・・という感じ。抗ARS抗体に関連した肺病変が疑われるという結末でした。

症例2:Sjogren症候群による間質性肺炎が疑われた1例。
 気腫性変化と軽度の線維化、小葉間隔壁肥厚などを伴う肺野濃度上昇域が胸膜直下に斑状に分布。UIPともHSPとも言い難いが無理に分類したらそんな感じの病変。鳩飼育や羽毛布団など、鳥関連の生活歴豊富で、後になって唾液腺萎縮が出てくるというエピソードでした。病理はHSP説が優勢、SjS関連説もあり。という感じ。

症例3:消長を繰り返した多発肺結節影の1例。
 両肺末梢胸膜沿い、肺底部などを主体に多発腫瘤を認め、いずれも辺縁がややにじんだような線状影が連続する感じ。リンパ路に病変がある雰囲気がとても強い画像でした。造影縦隔条件では病変内部が不均一で増強効果に乏しく壊死が疑われる感じ。リンパ腫様肉芽腫症でした。

症例4:過敏性肺臓炎との鑑別が問題となった間質性肺炎の1例。
 ライスセンターという米の工場?みたいなところで毎年仕事をする男性に呼吸困難、乾性咳嗽などが出現。画像はまさにHSPという広範な淡い小葉中心性斑状・すりガラス影がベースで、右下葉にのみ浸潤影/融合影が合併している感じ。近くで画像が見えなくて集簇した粒状影かな、と思っていたのですが、コメンテーターJ先生の解説では分岐状影などが多数ある感じで、濃度が高く、非定型抗酸菌症の可能性を考えるというコメントでした。病理学的にも肉芽腫形成が目立ち、非定型の感染checkが必要とコメントされていました。

 以上、ご報告です。知らない場所の研究会は新鮮でしたが、こんなにゆっくり画像を見る暇がない研究会は初めてで、とにかく見えない&見る機会がない・・・。やっぱり内科主体だからかな?すっきり結論が出たのは3例目のLYGのみって感じでした。さすがびまん性肺疾患の研究会・・・。放射線科人口は少なそうでした。コメンテーター以外の放射線科医っていたのかしら?
 でも、とても楽しかったです。いつもと違うっていうのも微妙な緊張感だし、お誘いしてくださったJunF先生にもいろんな先生を紹介していただきました。以前大阪で会った学生T君はJun先生と一緒に(というか行ったら既に)顕微鏡見てました。すごい。

IMRTについて その5

2008年01月28日 06時57分21秒 | 診療紹介Q&A
 連載でお届けした、hirako先生の「IMRTについて」最終回です。機器の問題を含め、放射線治療の現状の一端をお伝えします。
 

 最後に、IMRT専用の放射線治療装置があれば別ですが、従来法と兼用で装置を使用した場合、IMRTが長い時間装置を占拠してしまい、従来法がさばけなくなるといった弊害もあります。(いわゆるスループットの問題)市中病院でも放射線治療が普通に行われている都会ならともかく、限られた病院でしか行われていないような地方では、高精度の放射線治療を行うことが、骨転移などすぐにでも放射線治療が必要な患者さんの治療機会を奪うことにもつながりかねないという現実があります。

当院でも治療機器の更新に伴い、技術的にはIMRTが可能になります。しかしスタッフの数や従来法の症例数から考えると、なかなか容易に足を踏み出すわけにはいきません。

 by hirako

 放射線治療についてのご質問や、「こんな記事がみてみたい」というご要望がありましたら、是非コメントをください。また、放射線治療に興味をもった学生さん・研修医がいましたら、一度見学に来てください。toku先生、hirako先生、pachinker先生などが待っています
 連絡先はこちら→
佐賀大学医学部放射線科 E-mail sagarad2007@mail.goo.ne.jp
所在地 佐賀県佐賀市鍋島5丁目1番1号  医局直通TEL 0952-34-2309  医局直通FAX 0952-34-2016

 これまでの「IMRTについて」の記事はこちらです。
IMRTについて その1
IMRTについて その2
IMRTについて その3
IMRTについて その4

1月最後の波乗り 

2008年01月27日 21時41分12秒 | 波乗りなど
 当直あけでしたが、気持ちのよい晴れだったので海に行ってきました。
 ホントは昨日の方がよい波だったのですが
 
 立神に入りましたが、春がもうすぐ来そうなのんびりした明るい海の色でした。昼からだったので、波はダラダラでそれほど良くなかったのですが、久しぶりに楽しむことができました



 結構、人が入っていますよね。これでも減った時に撮っています。

IMRTについて その4

2008年01月27日 08時48分20秒 | 診療紹介Q&A
 hirako先生のIMRT記事、第4弾です。
 脚光をあびるIMRTの影の部分を、放射線物理学的にそして実際の照射の観点から解説してもらいました。

 次に線量率の問題があります。仮に従来法で300cGy/分の線量率で治療を行っていると仮定します。IMRTでは、照射内にばらばらな線量を当てるため、照射中にブロックが動きながら割合を調節しています。このため、平均すると30cGy/分程度の線量率ということになります。300cGy/分で1分間の治療と、30cGy/分で10 分間の治療、放射線生物学の知識がある方ならこの効果に差があることは容易に理解可能な話です。知識のない方でも、100kgの荷物を1m移動させるのと、10kgの荷物を10m移動させるのにどちらが体力を消耗するかということを考えていただければ想像可能かもしれません。つまり、正常組織への負担も軽い代わりに、病気への効果も同じ線量であれば劣る可能性をはらんでいるということです。

 また従来法では、治療中の臓器の動きはあまり考慮する必要がありませんでした。照射野内は均一な放射線があたるため、少々移動したとしても、あたる放射線の量に変わりがないからです。しかしIMRTでは、照射野内にばらばらな線量が当たるため、数mmの移動で、全く異なった放射線の量が当たることになります。前立腺は膀胱内の蓄尿の程度、直腸内のガス・便塊の動きで容易に移動します。また1分間程度であれば身体を動かさないことは可能であっても、10分間身体を動かさないことは、とても大変なことだと考えます。

 次回はいよいよ最終回です。照射機器の問題をふくむ、現場での問題点があがってきます。

 IMRTについてその1 IMRTの原理はこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/d3912274b82d637eb72bd76e94fe1792

 IMRTについてその2 前立腺がん・頭頸部がんへのIMRTはこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/c5c2b96df7e59a4a4bbd3f168be03b50 
 
IMRTについてその3 IMRTの問題点、計画段階での問題点はこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/18633dc3e6f215ca0b18753d4f94b3bd

第43回九州MRI研究会 膵内副脾

2008年01月26日 16時48分51秒 | 研究会・学会
 第43回九州MRI報告も残り少なくなってきました。

 症例の概略です。
 症例は80歳代女性。慢性心不全で加療中に、高血糖を指摘された。また、採血上CA19-9の上昇をみとめた。単純CT上、明らかな異常を指摘されなかったため精査目的にMRIが施行された。検査データ上、CA19-9上昇と軽度のCRP上昇あるのみで、その他明らかな異常値をみとめない。

 MRI所見:膵尾部にdynamic studyを含む全てのシーケンスで脾臓と同等の信号強度を呈する境界明瞭な結節をみとめる。MRCPでは、主膵管の拡張や狭小化はみられない。膵体部に主膵管と連続が疑われる小嚢胞が複数みられる。小嚢胞内には明らかな充実部分は指摘できない。

 解答:膵内副脾 解答者の先生は、脾臓と同様の信号パターンや結節の局在から比較的容易に解答に至ったようです。精査をするのであればSPIO-MRIを、とのコメントをされていました。また、CA 19-9の上昇はおそらくIPMNによるものでは?とのコメントもありました。

 ティーチングファイルより典型的な画像をもってきました。




 参考文献です。
Kim SH et al. MDCT and superparamagnetic iron oxide (SPIO)-enhanced MR findings of intrapancreatic accessory spleen in seven patients.
Eur Radiol. 2006 Sep;16(9):1887-97.