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佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

2011.02.25

2011年02月25日 22時50分28秒 | 抄読会
暖かい一日でした。
読影室にこもっていましたが…

ネタが無いので、論文の抄録の稚拙な訳を書いておきます。

In Vitro Assessment of Flow Patterns and Turbulence Intensity in Prosthetic Heart Valves Using Generalized Phase-Contrast MRI
John-Peder Escobar Kvitting et al.
JMRI 2010;31:1075-1080
<Abstract>

○目的
さまざまな人工弁における3次元での平均速度フィールドと乱流の程度?(turbulence intensity:TI)をPC-MRIを用いてin vitroで評価する。

○方法
4種類の27mm径大動脈弁をsteady inflow conditionでプレキシグラスファントムを用いて評価した。3D PC-MRIで平均血流フィールドと乱流運動エネルギー?(turbulent kinetic energy:TKE)、direction-independent measure of TIを測定した。

○結果
金属部分のシグナルボイドを除き、弁の上流と下流において速度とTIの推定が可能であった。検査した弁では、速度およびTIの部位や程度について相違があった。TKEは弁により異なった値であり、tilting disc, 100J/mm3; bileaflet, 115 J/mm3; stented, 200J/mm3; stentless, 145J/mm3であった

○結論
人工弁から下流のTIは弁のデザインに依存している。Generalized 3D PC-MRIは人工弁術後患者において弁下流の速度やTIの評価を行うことができる。

2009年にワイハじゃなくて、ハワイで行われたISMRMで発表されたネタのようです。
この論文も、4D PC-MRIでこのところ一番論文を発表しているであろうスウェーデンのリンショーピン大学から出されています。
どんなヒト達がこんな論文を書いているんだろう?

撮像機種はPhilipsの1.5T Achievaで、膝コイルを使用しています。
商用のPhase contrastシーケンスで撮像しており、空間分解能は2平方ミリメートル。
解析は、お得意の?EnSightを使用。

それにしても、ハワイ…いいな。

背景や考察に書かれている中で興味を惹かれた部分、とそこで引用されている文献は

・Conventional PC-MRIでは乱流の影響の評価ができない。しかし、強度画像で信号低下が起こることはよく知られている[20]
20. Higgins CB, Wagner S, Kondo C, Suzuki J, Caputo GR.
Evaluation of valvular heart disease with cine gradient echo magnetic resonance imaging.
Circulation 1991;84:I198–I207.

・近年、一般化されたPC-MRI技術によりTIの定量化ができるようになり、疾患についても評価されている[21-23]
21. Dyverfeldt P, Sigfridsson A, Kvitting JPE, Ebbers T.
Quantification of intravoxel velocity standard deviation and turbulence intensity by generalizing phase-contrast MRI.
Magn Reson Med 2006;56:850–858.

22. Dyverfeldt P, Ga˚rdhagen R, Sigfridsson A, Karlsson M, Ebbers T.
On MRI turbulence quantification.
Magn Reson Imaging 2009;27: 913–922.

・この方法はMRI信号強度上の速度のばらつきを、ボクセル内における速度分散の標準偏差(intravoxel velocity standard deviation, IVSD)の推定に利用する。
 IVSDは乱流に存在する速度のばらつきの強度(TI)の尺度である。

このようなところ。
今、2011年に出たばかりの4D PC-MRIの総説(22ページに及ぶ大作です…)をちょっとずつ読んでいるところなので、終わったら読んでみようかと思っています。
ちなみに、物理は全く分からないのでおかしな訳があると思います。参考になるような図書をご存じの方がいらっしゃいましたら、ご連絡やコメントをいただけるととても嬉しいです。

2011.02.16

2011年02月16日 22時19分48秒 | 抄読会
最近の記事を振り返ると、遊んでばっかりみたいなので…
たまには真面目な記事を。


Time-Resolved 3-Dimentional Velocity Mapping in the Thoracic Aorta
Visualization of 3-Directional Blood Flow Patterns in Healthy Volunteers and Patients
Michael Markl et al.
J Comput Assist Tomogr 2004;28:459-468
<Abstract>
○目的
正常被検者および患者での病的な胸部大動脈血流の解析を示す。さまざまな可視化ツールが、胸部大動脈全体を撮像した一つの3 component velocity volumetric acquisitionに対して使用された。
○方法
3方向への拍動する血流速度を描出できるようなシーケンスで胸部大動脈全体を空間、時間的にカバーできるように3D CINE PC MRIを撮像した。
任意の2D断面に再構成したtime resolved 速度ベクトルフィールド、3D streamlines, time resolved 3D particle tracesが10名の正常ボランティアで解析された。4名の患者についてもボランティアと同様のスキャンが行われ、胸部大動脈のcommonな病的所見に伴った血流の特徴を提示した。
○結果
これまで報告されていた胸部大動脈における血流パターン:右回りのoutflow、収縮後半での後方血流、大動脈弁の平面における加速 が正常ボランティアで描出された。上行大動脈瘤、大動脈弁逆流症、大動脈解離といった臨床症例において、疾患が空間時間的な血流パターンに及ぼす影響が解説された。
○結論
Time-resolved 3D velocity mappingは10名のボランティアと4名の症例における病的所見を良好に描出し、正常と病的パターンを描出解析する、信頼できるツールであると示された。

time-resolvedは辞書をみると、時間分解した、というような意味なのですが、どうも日本語としてはまりません。何か上手い訳はないでしょうか?

最近は、血流の可視化にちょっと興味があっていろいろとしてみようと思っているのですが、この論文でもEnSightが用いられていました。フォーマット変換をするのが大変そうですが、解析はいろいろと自由が利きそうに見えます。さずが汎用ソフトウェアです。工学系の技術者がいないと、利用は難しそうです…
日本では、浜松医大の先生が2007年のJMRIに頭蓋内の血管の描出に関する論文を発表されていました(まだ読んでいませんが…)。

ちなみに、この論文ではtime-resolved 3D-PC MRIを撮像し(15~23分)
ノイズフィルタリングと渦電流によるアーチファクトの補正(15~20分)
EnSightのフォーマットへの変換(10~15分)
EnSight上で3種類の処理(1~3時間)
かかったそうです…

3Dの血流解析に関する、基本的な事項を学べる勉強になる論文でした!

2010.12.19

2010年12月19日 22時37分37秒 | 抄読会
このところ遊んでる記事ばかりだったので、ちょっと反省。
じつは以前、オンセットから5日ほど経っていると思われる偽腔閉鎖型大動脈解離(あるいはaortic intramural hematoma)症例のCT診断に迷ったことがあり、単純CTでどのくらいの時間が経てば等吸収となるのかが疑問でした。そのうち調べてみよう、と思っていたのですが、2009年のRadiographicsにレビューがあったのでご紹介を。
偽腔閉鎖型の大動脈解離と壁内血腫の議論を十分に理解できているわけではありませんが…
例によって、長いです。

Christine P et al.
Natural History and CT Appearance of Aortic Intramural Hematoma
Radiographics 2009
◎Pathophysiology and Clinical Manifestations
○intramural hematomaはvasa vasorumの破綻により動脈中膜へ出血した状態である。それにより動脈壁の脆弱化が引き起こされる。古典的な解離と区別する点は、内膜の破綻がない点である。
○急性大動脈解離の徴候を呈していた患者の5-20%であり、死亡率は21%(5,7)
 143例のメタアナリシスでは
 Stanford type Aが43%、type Bが57%(7)
 94%が非外傷性で、外傷性の75%は交通外傷である
 男性が61%で年齢の中央値は68歳
◎Advantage of CT for Diagnostic Evaluation
○MDCTの感度と陰性的中率は100%近い。
 単純CTを撮像しないとわずかな壁内血腫がわかりづらくなる(12)
○CT所見
・単純CT:crescentic, eccentric, hyperattenuating region of the aortic wall
・造影CT
・読影のポイント
 大動脈の最大径(*最大短径??)、血腫の最大の厚みおよび、そのレベルにおける内腔の長径、短径
 →壁内血腫の予後予測因子となる(4,6,16,17)
 フラップやintimal tear, PAU所見がないことは壁内血腫の必要条件である
○Features of Subacute and Chronic Intramural Hematomas
●症状発現から1週間で、単純CTにおいて血腫は動脈内の血液と等吸収になる(14)
 血腫の縮小は数カ月で、消失には1年ほどかかるとされる(4,5,14,17)
・しかし、さまざまな合併症が問題となるために、厳重な経過観察が必要である
例)ULPの形成から解離の惹起、嚢状動脈瘤、紡錘状拡張の形成、破裂(6,18)
○Hyperattenuating Crescent in AAA
・巨大なAAAの周囲に見られる高吸収の三日月状リムはimpending ruptureの特異的な徴候である(19,20)病理学的にintramural hematomaと異なるが、既存のAAAに合併して起こることもある。いずれにせよ、この所見が見られる場合は緊急手術の適応となる状態と考えられる。
◎Other Useful Imaging Modalities
・MRI, 経胸壁あるいは経食道超音波、血管造影検査
・MRIにおける経時的な壁内血腫の信号強度の変化(2,3)
 GRE法(white-blood とあるが詳細不明)
 7日未満:T2 signal hyperintensity
 7日以上:intermediate T2 signal intensity
 T1WI SE法(black-blood)
 急性期:等信号…オキシヘモグロビン
 その後高信号化…メトヘモグロビン
*典型的な信号変化を来さない場合は、出血が持続し予後不良の可能性あり(3)

◎Differential Diagnosis
・通常は急性の症状でCTが撮像されるので、無症候性に偶然見つかる大動脈腔の異常とは鑑別可能である。しかし、無症候性のPt.で壁内血腫の所見(大動脈壁の肥厚)が見つかった場合には急性の症状を来さない大動脈疾患が鑑別となる。
・大動脈炎:壁肥厚の分布、増強効果の有無が有用 後腹膜の線維化所見、傍大動脈リンパ節腫大
・粥腫:壁内血腫と比較して、内腔面が不整である 動脈硬化性変化は複数部位に起こる 石灰化の位置
・大動脈解離、PAUは胸背部痛を来すことがあり鑑別が重要!偽腔開存型は造影CTで容易に鑑別可能 偽腔閉鎖型では濃度が上昇していくmultilayered patternが見られる(5)
長軸方向にらせんを描くのは解離 Penetrating ulcerの多くは腹部大動脈あるいは胸部中部~遠位1/3にある。
◎Natural History and Management
○Stabilization, Regression, and Resolution
・壁内血腫は経時的な所見の変化がない場合もあるし、大動脈径の減少を伴う壁肥厚の改善が見られることもある(14,16))
・早ければ1カ月で完全に消退する場合もあると思われるが、さまざまな経過を取る点や検討が小数例であること、フォロー用のプロトコールが確立されていないことから、安定化、退行、消失する割合がどの程度かを判断するのは難しい。
 血腫の厚みが減少するにもかかわらず、合併症が起こる場合もある。壁内血腫があるために壁が脆弱化し、瘤あるいは古典的な解離へと進展すると考えられている。
 フォロー期間、方法のガイドラインはない。
○Development of Ulcerlike Projection
・初診時に見られないULPが出現した場合には新たに内膜の破綻が起こったことを示唆する。
・PAUとULPの差異を認識することが重要
・ULPは上行~弓部に起こりやすく(greater hydraulic stress)、Sueyoshiらの検討(18)では約1/3の症例で3カ月以内に新たなULPを形成するとされる。この部位の壁内血腫は頻回のフォローが必要と思われる。文献32,33では比較的合併症が少なく、保存的治療で良いとされる…
○Progression to Classic Aortic Dissection
・Type A, B血腫のいずれも顕性の解離へ進行しうるが、解離・破裂はType Aにより多い(4,16)。Type Bは保存的治療がスタンダードだが(5,6,17)Type Aは確立されていない。
●Type A増大の最も強い予後予測因子は
最大径(短径か不明…)で50mm以上だとPPV 83%、NPV 100%と報告されている(4,17)
 心嚢液、胸水、大動脈弁逆流、縦隔血腫は中等度で、相反する結果が報告されている(4,8,16)
・どちらの型の壁内血腫であってもsurveillance imagingが必要。
○Development of Aortic Aneurysms
・壁内血腫の部位には血腫が縮小、消失したとしても紡錘状あるいは嚢状動脈瘤を形成することがある。
・嚢状動脈瘤:仮性瘤であり、ULPから発生する。遠位弓部に発生する場合が大部分で、紡錘状動脈瘤よりも早期から出現する(1W-7M vs 1-26M)
平均1.2cm/年で増大し、破裂の危険性が高い。
・紡錘状動脈瘤:真性瘤であり下行大動脈に多くみられる。ULPは見られない。

オリジナルの論文を読んでいないので、どういった検討をされているのかわかりませんが、最近話題のバイオマーカーと併せて調べ直してみると面白いかもしれませんね。

b factorとADC値

2010年10月25日 21時42分54秒 | 抄読会
最近、遊んでばかりの記事だったので反省。
雑な文章で申し訳ないのですが、拡散強調画像についての論文アブストラクト訳です。

Quantitative Diffusion Weighted Imaging for Differentiation of Benign and Malignant Breast Lesions: The Influence of the Choice of b-values.
Nicky H.G.M. Peters et al.
JMRI 2010; 31: 1100-1105
<Abstract>
◎目的
 乳腺病変のDWIの診断およびADC値に与えるb値の選択および組み合わせの影響を調査する。
◎方法
 73名90病変を3T-MRIで撮像。b値は0,150,499,1500 s/mm2
 ADC値を計算するためのb値の組み合わせは5通りであり、それぞれ潅流や拡散の影響を受ける。良性病変、非浸潤性病変、浸潤癌のADC値の中央値を比較した。
◎結果
 88例を解析(良性37例、非浸潤性病変13例、浸潤癌38例)。いずれの方法でも、もっともADC値が高かったのが良性病変で、中間は非浸潤性病変、もっとも低いのが浸潤癌であった。もっとも低い2つのb値から計算されたADC値がもっとも高く、もっとも高い2つのb値から計算されたADC値がもっとも低かった。ただし、全ての方法でROC解析によって得られるAUCは同程度であった。
◎結論
 乳腺病変のADC値が異なったb値の選択により変化しうるということは、良悪性を鑑別する閾値を設定する場合に注意すべきであることを示す。しかし、異なったb値の選択によっても定量的なDWIの診断能には変わりがない。

 よく知らなかったのですが、古い文献Radiology 1988;168:497-505(古すぎるせいか、フリーではないのです…)を読み直してみると、拡散強調画像は初めの頃はIVIM (Intravoxel incoherent motion)imagingと呼ばれていて、ADC値を計測することで潅流を評価しようという手法だったようです。
 いつの間にか、細胞密度(や細胞性浮腫)を反映する方法として良悪性の鑑別や腫瘍の悪性度を評価するための方法として普及してきましたが、オーバーラップがあるにも関わらず、結構な正診率を有するカットオフ値が示されるなど、その定量性がちょっと一人歩きしているのかな…?という気もしていました。
 結果は理論通りなのだと思うのですが、改めてシーケンスの組み方や読影の仕方、そしてスタディの組み方を注意しなければいけないなと思いました。

原発性耳下腺腫瘍の拡散強調画像

2010年09月27日 22時30分57秒 | 抄読会
今日は、書くことが思い浮かばないので、RSNAの準備のために読んだAbstractの訳を…

Diffusion-Weighted Echo-Planar MR Imaging of Primary Parotid Gland Tumors: Is a Prediction of Different Histologic Subtypes Possible?
C.R.Habermann et al.
AJNR 2009: 30;591-596
<Abstract>
◎目的
原発性耳下腺腫瘍の組織型の鑑別におけるEPI-DWIの意義を求める
◎方法
149名の耳下腺腫瘍が疑われた連続症例
1.5T装置でEPI-DWIを撮像し、2名の放射線科医が独立して評価し、intraclass correlationを算出
ADC値はpaired 2 tailed Student t testとBonferroni correlationを使用して検定
◎結果
136名で、原発性耳下腺腫瘍の組織型が確定診断された
読影者間での一致率は高かった
多型腺腫では、myoepithelial adenomaを除いて、他の組織型よりもADC値が高かった
ワルチン腫瘍では他の組織型と比較すると、
myoepithelial adenoma P<.001, lipomas P<0.0013, salivary duct carcinomas P<0.037という結果であったが、
mucoepidermoid carcinoma P=0.094, acinic cell carcinomas P=0.396, basal cell adenocarcinoma P=0.604
と鑑別ができない
◎結論
EPI-DWIは多型腺腫とmyoepithelial adenomasを他の組織型から鑑別できる可能性が示された。ただし良悪性だけでなく、組織型間でのオーバーラップもあるので、ADC値単独では診断されるべきではない。それゆえDWIと形態的なクライテリアや他のシーケンスなどを組み合わせることが必要であると考えられる。

本文PDFはフリーで手に入ります。興味のある方はどうぞ。
サスガにAJNRなので、ROIのとり方や考察の仕方などとても勉強になる論文でした。
AJNRの論文はいつも勉強になります(いつも、というほどは読んでませんが…)。どんなヒトが書いているんだろう。

2010.08.31

2010年08月31日 22時29分35秒 | 抄読会
Usefulness of diffusion-weighted MR imaging in the evaluation of pulmonary lesions
Eur Radiol (2010) 20: 807-815
Haidong Liu et al.
<Abstract>
◎目的:
 肺悪性腫瘍と充実性の良性病変の鑑別におけるDWIの役割を調査
◎方法:
 1.5T MRIで62症例の66病変についてDWI(b=0,500s/mm2)を撮像
 信号強度、ADC値を測定し、検定を行った。
◎結果:
 信号強度の差はなかったが、良性病変のADC値は有意に高かった。ROC解析では、ADC値の閾値を1.400×10-3mm2/sとすると感度83.3%、特異度74.1%となった。小細胞癌と非小細胞癌でも差があり、前者が有意に低値を示した。
◎結論:
 肺結節の鑑別診断において、DWIは有用である。

<本文>
◎方法
・患者群 62症例 66結節
 充実性の腫瘤で、含気のある領域を持たない
 病理学的、あるいは臨床データから組織が確定された結節
 最小径は1.4cm
 MRIの禁忌なし
・MRI:GE製1.5T Twin-Speed Infinity with ExciteⅡ
 8チャンネル Body phased-array coil
 T1WI(fast SPGR),呼吸同期T2WI
 DWI:シングルショットEPI、ASSET併用(R factor=2)、b値0,500、read, phase, section方向に印加 TR/TE=4000/48.9, FOV=36cm, matrix=128x128, thickness=6mm, gap=1mm
・画像評価
 2名の放射線科医の合議
 DWIの信号強度(骨格筋と比べ、hypo, moderate, high intensity)を視覚評価 
 ADC maps(AW4.0で作成)
○ROI:
 円形、あるいは楕円形のROI
 病変の充実部分に置き、壊死領域は除く。壊死領域がないようならば、病変の中心部にできるだけ大きなサイズで置く。
 3回施行し、平均のADC値を得る。
・統計解析:
 SPSS ver.13.0を使用
 DWIでの信号強度と良悪性の比較:Pearson’s chi-square test
 平均ADC値と良悪性の比較、SCLCとNSCLC、NSCLCと良性病変:independent samples t test
 良悪性の鑑別におけるADC値の診断能:ROC解析
 P<0.05を有意差とする

◎結果
・DWIの信号強度についてTable.2:
悪性病変は骨格筋と比較して高い信号強度を呈する。Fig.2cには無気肺+肺癌のMRIあり
・ADC値の良悪性の比較:
 良性1.648±0.416×10-3mm2/s
 悪性1.256±0.320×10-3mm2/s 前者が有意に高値を示す(t=-3.637, p=0.001)
 ADC値の閾値を1.400×10-3mm2/sとすると、感度83.3%、特異度74.1%
・ADC値とSCLC(9例), NSCLC(35例)の比較:
 SCLCは1.064±0.196×10-3mm2/s
 NSCLCは1.321±0.335×10-3mm2/s 有意差がある(t=2.967, p=0.007)
 NSCLCは良性病変より有意にADC値が低い(t=-2.744, p=0.009)

◎考察:
・撮像法について:自由呼吸撮像は、息止めと比較してSNRが高い(13)
・DWI診断の定性的な評価:(11)、(15)
・無気肺と肺門部肺癌の分離:(10)
・ADC値の測定による定量的な評価:細胞内腔と細胞外腔の比率(16)、細胞密度の増加による細胞外腔の低下(17)、細胞内の細胞骨格、小器官、可溶性の大分子などが影響する(18)
・ADC値を測定することは、良悪性の鑑別、NSCLC, SCLCの鑑別に有用かもしれない。
○limitation:
・肺領域での磁化率アーチファクト
・EPI法に基づくアーチファクト、巨視的な動きによる画像の歪み
 →今回の撮像では、診断の妨げになるほどではなかった
・良性病変の数が少なく、病理診断ができていない

2010.08.27 軟部腫瘍のADC値

2010年08月28日 21時20分30秒 | 抄読会
久しぶりの論文。
RSNAの資料用に書き落としているものです。

乱雑な記事ですが、軽い論文紹介と思ってご容赦ください。

JMRI29:1355-1359(2009)

Diffusion-Weighted Echo-Planar Magnetic Resonance Imaging for the Assessment of Cellularity in Patients With Soft-Tissue Sarcomas

Dirk Schnapauff et al.
<Abstract>
◎目的:軟部肉腫の細胞密度を評価する方法としてのDWIの適格性を検討する

◎方法:
症例数30 31の組織が確定された腫瘍 1例が生検 30例が切除標本
14症例が化学療法前、16例が化学療法後

◎結果:
腫瘍の細胞密度は、最小ADC値と相関していた(Pearson correlation coefficientで-0.88 95%信頼区間)
先行する抗腫瘍療法の影響を受けない
低ADC値ほと高グレードであったが、P=0.08と依存は顕著ではなかった

◎結論:
ADC値は軟部肉腫の細胞密度を評価するのに有用と示された。
DWIは、腫瘍の細胞密度の変化を評価することで、細胞障害性の治療効果をモニターする非侵襲的な手法となるかもしれない。

<本文>
◎背景
 DWIは水プロトンの可動性の情報を提供し(4)、グリオーマや脳メタの細胞密度を反映する(3-7)
 巨視的な容積の反応に先んじて、細胞の変化を早期に検出する感度の良いバイオマーカーとして評価されている(8-17)。

◎方法
MRI装置:Siemens 1.5T Symphony
撮像から切除まで14日以内
症例群は上記
スキャンプロトコル:
 Single shot EPI, TI=180, TR=10,000, TE=108, NEX=2, FOV=180-250mm2, matrix size=256x256, thickness=5mm, interslice gap=1mm, partial Fourier transform and EPI factor=88, b=0,500,1000
ADC(mm2s-1) = [ln(S0/Sb)]/b
S0,Sb:それぞれのb factorでの信号強度
ROI:
2名の放射線科医で合議
20ピクセル以上を含むROIを3箇所
他のシーケンスで充実部分と確認される部位で、最も低いADC値をとる
ADC値が上昇している部分は嚢胞変性や、壊死などの可能性がある(5)
3個のROIの平均で症例のADC値を代表させる
細胞密度:
切除面における核の面積の割合と定義??
顕微鏡の設定
0.01mm2内の細胞の数として表記されている
統計解析:
・細胞密度とADC値;Pearson’s correlation coefficient
・最小ADC値と腫瘍の悪性度:Student’s t-test
・2つのサブグループ(前治療の有無)の差はAN-COVA test
・SPSSで解析
・p<0.05を有意差とする ◎結果
最小ADC値:41×10-3mm2/sec~232×10-3mm2/sec
細胞密度:20-107/0.01 mm2

◎考察
・単位面積内での細胞密度は、水の拡散に影響する重要な因子であるとされる。水の拡散は細胞内腔と細胞外腔の割合に依存する(25,26)。
・腫瘍学的な観点からのDWIの応用について
骨肉腫(14)肝癌(15)乳癌(16)結腸癌肝転移(17)
放射線治療での軟部肉腫の検討(28)
・良悪性の鑑別について
細胞密度との相関関係はあるが、組織型や悪性度の推定は困難かもしれない。ただし、悪性度は細胞密度のみで決定されるわけではないので、驚くべき結果ではない。

ROIのとり方、細胞密度の定義の仕方、考察のもって行き方などが勉強になりました。
論文はフリーのPDFです。内容に誤り等があれば、ご指摘いただけると幸いです。

2010.03月抄読会 その2

2010年03月26日 18時23分09秒 | 抄読会
 とりあえず、もう1本の論文です。
 4月からはフィリップスユーザーになるので…こんなアプリケーションがあるのかはわかりませんが。

 最近、抄読会のまとめというよりは、単なる訳になってしまっています。どんどん長くなるばかり。でも、読んでいるとどれも大事に思えてきてしまって…もっと慣れたらエッセンスを抽出できるようになると思うのですが。

 他でも役に立つかな?と思ったのは、パラレルイメージングでのSNRの計り方です。詳しい方法をご存じに方いらっしゃいましたら、こっそりメールをお願いします。

Radiology2008:249:493-500
Sven Plein et al.
k-Space and Time Sensitivity Encoding-accelerated Myocardial Perfusion MR Imaging at 3.0 T: Comparison with 1.5T
○背景
心臓MRIのアプリケーションにおいて、心筋パフュージョンのようにSNRにより制限されるような方法は、高磁場の利点が得られると考えられる[1-9]。過去の報告でも、3Tと1.5Tを比較して、SNRや増強効果、診断能が改善したとされている[1,2,5]。
ファーストパス灌流MRIの挑戦は、モーションアーチファクトを減らすためにデータ取得時間を短くすること、カバーする心臓の範囲を広げることにある。SENSEのような、特別なアンダーサンプリング技術はデータ取得の速度を上げるが、SNRを犠牲にする。この現象は2D撮像法においては2倍のアクセラレーションで著明に増加するとされる[10,11]。
k-t SENSEのように空間と時間の相関を利用したアンダーサンプリング技術は、更にデータ取得時間を短縮することが出来うる[12-15]。k-t SENSEは、対象物からのトレーニングデータにより再構成時の時間的なバンド幅を適正化することによりSENSEと比べ、SNRがよいとされている(?)。
高磁場はある程度SNRの損失を補うことが出来るので、空間的、空間時間的なアンダーサンプリング技術を3T MRIの灌流MRIに用いることは魅力的である。
本研究では、3Tでのk-t SENSEを用いた高時間空間分解能心筋灌流MRIおよび通常分解能MRIを1.5T装置での前者撮像法を比較する。
○方法
・被験者
2006年1月~12月にプロスペクティブに集められた51例
14例:健常ボランティア
33例:患者のうち、検査が完遂できたもの
●パルスシーケンス
k-t SENSEはsaturation-recovery gradient echo pulse sequenceと組み合わせて使用。パラメータは[14]に準ずる。傾斜磁場の差および、取得ウィンドウを一定にするために1.5Tと3Tではin-plane空間分解能が異なるように設定されている(1.5×1.5 vs
1.3×1.3mm)。
通常分解能(2.5×2.5mm)の灌流MRも同様に撮られているが、2倍の(twofold)SENSE accelerationを用いている。
●灌流MRI
装置:1.5T、3Tともにフィリップス社製Achievaでコイルはそれぞれ5エレメント、6エレメントを使用。
撮像断面は、左室短軸を4スライス。
造影剤はガドビストを0.1mmol/kg、パワーインジェクターで5ml/sec、20ml生理食塩水で後押し。
・ボランティア撮像
安静時の画像を1.5と3T別の日に撮像。また3Tでの安静時灌流twofold SENSEを撮像。
SNRを計測するために、ノイズマップを作成(方法よくわからない…0フリップ角での無信号画像?)。
SNRは平均の絶対信号強度と、心筋においたROIでのそのチャンネルのノイズSDの比?
更に、ボクセイルサイズも合わせて機種間で比較した。
・患者群撮像
表1
それぞれの装置でアデノシン負荷灌流MRIが撮像された(順不同)。それぞれの撮像は冠動脈造影から14日以内に行われた。
・データ解析
1名の放射線科医(7年の潅流MRIの経験)が臨床情報を伏せて読影。
画質評価は、(0 = nondiagnostic, 1 = poor, 2 = moderate, 3 = good, 4 = excellent)で評価。
アーチファクト:k-t reconstructionによるもの、呼吸運動、心電図ゲート、endocardiac dark rim artifact(?)の存在→(0 = none, 1 = minor, 2 = moderate, 3 = severe, 4 = images nondiagnostic)で評価。endocardiac dark rim artifactに関しては、心筋壁に対する幅を計測。
ボランティアデータから、MASSを使って心筋の信号強度曲線を作成。
●ROIの置き方
CER=(P - SIb)/SIb
CER:増強効果の比
P:ピーク SIb:ベースの信号強度
信号強度の測定は、収縮期の心室中部レベルで行った。

患者データでは、2名の放射線科医が読影。
AHAの16セグメントモデルを使用。欠損は(0 = normal, 1 = probably normal, 2 = probably abnormal, 3 = abnormal)で評価。異常の判定は、離れた部位から遅延して増強されること、壁内での信号強度勾配があること。潅流スコアは、全セグメントの合計で表す(0-48点)。
・冠動脈造影
MRIから14日以内にスタンダードな冠動脈造影を施行。
・統計解析
連続データは平均±SDで表示。2群間の比較は、two-tailed paired t testを使用。
不連続データはパーセンテージで表示。
カテゴリーデータはカイ2乗検定で比較し、P<.05を使用。
SNRは統計学的に解析をしていない(4例のみのため)
正診率:2mm以上の径の血管で50%以上の狭窄というクライテリアを用いてROC解析を行った(Analyze-it)。
0-48で示される潅流スコアを解析の基準として用いた。
○結果
・ボランティアでの1.5Tと3Tの比較
3Tのk-t SENSEでは、画質が良いが(表2、図1)、画質及びアーチファクトスコアは1.5Tと有意差はなかった(表2、図2)。
Endocardiac dark rim artifactは小さかった(高分解能データの差に一致)。
SNR:3T:1.5T k-t SENSE 11.6±1.5:5.6±0.6(ピーク値での比較)
CER:3Tで有意に低かった
・3Tでの5倍k-tと2倍SENSEの比較
 5倍ではより高画質でより薄いendocardial rim artifact(表2、図2)。CERはほぼ同程度であった。
・患者群での検討
 各装置で撮像時に心拍数、血圧などの差はなかった。
・画質評価
画質スコア:3:1.5T=3.7:3.3 (P=0.4)図4
アーチファクトスコア:3:1.5T=0.7:0.8 (P=0.56)
 最も多いアーチファクトは呼吸運動によるもの
 Endocardiac dark rim artifactは双方で半数にあり、拡張期のデータのみで見られた。
・正診率
ROC解析:3:1.5T=0.89:0.80 (P=0.21)図5-7
○考察
3Tによるk-t SENSEは十分使用可能な検査法である。1.5Tと比較してSNRは向上している(少数なので統計学的に検討できていない)。3TではCERが低かった。2倍SENSEよりは空間分解能、画質ともに優れていた。
 1.5Tでのk-t SENSEによる潅流MRIの有用性は示されている[14]。今回の検討では、3Tでも高速で平面内の高空間分解能を取得できることが示された。Gebkerら[15]は、派生技術であるk-t BLASTを採用しているが、空間分解能は2.6×2.6mmである。k-t accelerationの自由度は本法の特徴である。
 3TにおけるSNRの向上(通常のGREシーケンス)は過去の2つの文献で示されている[1,5]。過去の報告と異なり、今回はノイズをゼロフリップ角によるノイズマップを用いている。理由としてはパラレルイメージングでは、場所に応じたノイズの増幅によりコンベンショナルなノイズの推定ができないためである。Difference methodでは心拍あるいは呼吸運動により一連のフレームでSNRが信頼できないことが示された。
 3TでCERが低かった理由としては、磁場強度が上がりrelaxation rateが下がるためである[16]。また、静磁場の不均一性による影響もある[17]。Adiadaptic or multipulse saturationが3Tでは必要と思われる。過去の報告では、3TでCERが増加したという、対立する結果もある[1,5]が、造影剤の差が関係しているかもしれない。
 ROC解析による、正診率は1.5と3Tで差がなかった。Chengら[1]は、3Tで優れていたと報告している。
 1.5Tでの報告と同様に、2倍SENSEと比較してk-t SENSEは空間時間分解に優れ、dark rim artifactを軽減することができた。厚みは1.6mmで、診断の妨げにはならなかった。良好な画質が得られ、過去の視覚的あるいは定量的な潅流MRIの報告[6-9]より有望であった。
 近年、定状状態パルスシーケンスを用いた潅流MRIによりGRE法よりもSNRを得られるという報告もされている。3Tではbalancedシーケンスはアーチファクトが起こりがちであり、現在は非balancedシーケンスが用いられている。K-t SENSEとBalanced SSFPの組み合わせが出てきており、将来評価されるべきである。
Limitation
 傾斜勾配磁場の差により、それぞれの静磁場強度で空間分解能が異なっている。ただし、SNRの計算では補正されており、ほとんどその他の計測でも問題はないと思われる。

2010.03月抄読会

2010年03月24日 20時39分25秒 | 抄読会
急いで読んだ文献です。
CTを読んでいると、ちょくちょく心筋内に脂肪と思われる低吸収が見られますが、一つの原因として陳旧性梗塞があります。陳旧性心筋梗塞と脂肪化(accumulationをどう訳すのか困ってますが…)についてまとめた初の論文だそうです。
いつも通り長いです。

AJR2009;192:532-537
CT Detection of Subendocardial Fat in Myocardial Infarction
Sung Soo Ahn et al.

○目的
心筋梗塞(MI)患者での心筋内への脂肪沈着(?)の特徴について、さまざまな臨床情報から全体的に解析する。
○背景
MDCTによりCTは心臓の新たな診断手法となった。左室壁の心内膜下に脂肪が見られるということが過去の報告[1,2]でも見られる。MI部位に、単純および造影CTで低吸収として脂肪が見られるのは一般的であるが、その本体は明らかではない。
 虚血性心疾患を有する患者の摘出心では68%に左室心筋の瘢痕に脂肪沈着があり、MIの既往がある患者では84%であった[3,4]。脂肪抑制パルスを利用したMRIでも脂肪が検出されると報告されている[5-8]。
○方法
・症例:161例(男性129名、女性32名、平均年齢60.7歳)、過去にMIと診断され、冠動脈CTが施行された症例。期間は2003年2月~2005年4月。
・MDCT:
シーメンス社製16列MDCT。単純+冠動脈CTAを撮像。
・脂肪の解析方法:
断面は、軸位、短軸、vertical long-axisを作成。脂肪は、2名の放射線科医(7,4年の経験)が、単純CTで局所的な低吸収があると同意した場合に確定。病理学的な確診はない。脂肪を同定した後に、CT値、分布、壁の進展度を分析。
 ROIの置き方は図1。単純CTでとったのと同様のROIを造影CTでもとる。脂肪の分布は、血管造影所見から左前下行枝LAD、右冠動脈RCA、左回旋枝LCXに対応する領域として決定。
 壁内の進展度は、(心尖部は長軸を使用)短軸で最も低吸収の大きかった部位で、壁厚に対する厚みを計算。進展度はGrade1,2,3,4(0-25, 26-50, 51-75, 76-100%)で評価。
 検討した臨床情報としては、CKMBやトロポニンTの最大値、ST上昇あるいはQ波の存在、責任病変の狭窄度とCAGでの狭窄病変の数。MI後の経過時間、心エコー所見(局所の壁運動異常5段階評価、EF)、Tc-99m SPECT所見も比較。
・統計解析
2群間での連続データの解析:independent two-sample Student’s t test。
カテゴリ変数は、chi-square test or Fisher’s exact testを使用。
MI後の脂肪沈着の独立した予測因子:Logistic regressionを使用。
P Valueは0.05未満を有意とする。
○結果
・心筋内の脂肪の特徴(図2,3)
MIの既往がある患者のうち40/161例、43の独立した冠動脈支配域で脂肪が同定された。
3名で2領域に脂肪があり、36名で脂肪沈着はMI後の部位に一致していた。4/7領域において、過去のMI部位と一致していなかったが、同部は50%以上の狭窄を呈する動脈に栄養されていた。残りの3領域(2領域はLCX、1領域はLAD)は、MIあるいは虚血の証拠がなかった。
 心筋内脂肪の平均CT値は単純CTで-29.6HU、造影後で-11.2HU。正常な心筋では単純で41.6HU、造影後で10.7.5HUであった。増強効果は、脂肪で18.5HU、正常心筋で65.9HUであり、有意差があった。
 領域での比較。27例でLAD領域(全LAD領域梗塞の30.3%)、9例でRCA領域(同様に10.5%)、LCX領域には脂肪が見られなかった。→統計学的に部位による有意差あり。
 壁内進展度の比較。0-25%:13.9%, 26-50%:69.4%, 51-75%:16.7%, 76-100%:なし
・心筋内に脂肪を有する患者と、有さない患者の比較 表1
36例の脂肪沈着(+)群と、125例の正常群で比較。
 MIからCTまでの期間に有意差あり(5.6±2.1 vs 2.4±3.6年)。梗塞後の時間が経つほど、脂肪を有する率が増加していた。
 責任動脈の狭窄率は、脂肪含有患者でより軽度であった。また、罹患冠動脈数も少なかった。以前の治療については、ステント後よりCABGを行った患者で多かった。ただし、脂肪含有患者よりステント治療をされている患者の割合は多かった。
 性別、年齢、リスクファクター(高血圧、糖尿病、高脂血症)、梗塞時の年齢といった人口統計学的要因に差はなく、ST変化やQ波の有無、心筋逸脱酵素の有無も関連がなかった。
 CTから30日以内に超音波が行われた症例は脂肪(+)群17例、脂肪(-)群64例であった。脂肪(+)患者においてakinesisが有意に多かった。EFや、左室拡張末期径には有意差なし。不整脈については、有意差は明らかにされなかった。
SPECTが行われたのは、34例。脂肪(+)は8例で4例が集積欠損であった。脂肪沈着(-)は26例で、30.8%に同様の所見あり。統計学的有意差はなし。
141例のLogistic regression analysisでは、唯一、責任動脈の狭窄度のみが独立した因子であった。
○考察
心筋内の脂肪がどのように沈着(蓄積?)するのかは明らかではないが、動物実験では心筋細胞の脂肪酸代謝障害によるものであるという報告がある[10]。実際、遊離脂肪酸の代謝障害による蓄積は梗塞心筋の周囲で起こっており、過去の報告でも相対的な虚血による脂肪蓄積が指摘されている[11,12]。今回の検討では、責任動脈の狭窄度のみが独立した因子であったが、軽度の冠動脈狭窄からの血流供給は、側副路と同様に梗塞心筋への脂肪沈着に対して働いているかもしれない。
心筋の局所的な壁運動異常は、脂肪(+)患者でより多くみられた。ST上昇も同様に多かったが(78.3% vs 56.2%)、有意差はなかった(p=0.0502で、統計学的な問題?)。
Jacobiら[13]、Zaferら[14]による脂肪沈着(+)の頻度の差は、診断基準の差と、CTプロトコールの差(大部分が心電図非同期CTで、単純あるいは造影のみ施行されているものも含まれる)があるかもしれない。
・Limitation
組織学的な検討がされていない
レトロスペクティブ研究であり、カルテ記載をもとに臨床情報を収集している
治療法がさまざまな患者群である
多くがCABGを受けており、脂肪沈着と治療との関係がわかりにくい
○結論
MIの既往がある症例のうち、22.4%に脂肪沈着がみられた。これらでは心筋梗塞後の経過時間が長く、軽度の冠動脈狭窄、罹患血管数は少数であるという関連があり、重度の壁運動異常を伴っていた。
MI後の予後および、リモデリングの予測因子として、更にMI患者における心筋内の脂肪の臨床的な重要性を検討していくことが必要である。

2010.02月 抄読会 その1

2010年02月19日 22時14分07秒 | 抄読会
 久々?の抄読会です。当日に出席できるのかわからないので、先に載せておきます。
 論文はぼちぼち読んでいたのですが、趣味のネタ作りのナナメ読みのメモで「あんまりだなぁ」というようなシロモノだったので…

 今回もそれほど大したまとめではありませんが。例によって長いです。

診断未確定の右室肥大の原因としての、静脈洞欠損症および部分肺静脈還流異常に対する心臓MRIと肺動脈MRA
Cardiac MRI and Pulmonary MR Angiography of Sinus Venosus Defect and Partial Anomoluos Pulmonary Venous Connection in Cause of Right Undiagnosed Ventricular Enlargement
Kafka and Mohiaddin
AJR2009; 192:259-266

○目的
 経胸壁超音波検査にて、原因のはっきりしない右心室拡張は、心臓評価の対象患者となる。心臓MRIは、冠静脈洞欠損や部分肺静脈還流異常(PAPVC)を検出することで、これらの患者管理に役立つ。今回の研究では、診断未確定の右室拡大患者でどのくらいの頻度で冠静脈洞欠損やPAPVCが存在するかを検討する。

○背景
 心臓MRIは心内あるいは心外シャントをよく検出できるとされるが(6-11)、冠静脈洞欠損の検出能などに関する系統的な検討はされていない。

○方法
・評価対象
2002-2006年に心臓MRIが施行された症例のうち、心臓MRI前に診断が未確定であった37症例。診断は、以下のテキストによるクライテリアおよび手術所見に基づく。
・心臓MRI
 装置 Sonata 1.5T, Avanto 1.5T Siemens
 シーケンス:表2
心臓の形態(各3断面)はマルチスライスHASTEを使用
血液プールと組織のコントラストを明瞭にするためにSSFPを追加
静脈洞欠損の辺縁を明確に描出するために、Turbo Spin-echoを併用
心室容積、重量、収縮能は心電図同期シネMRI短軸像から計算
●シネPC(phase-contrast)velocity flow mapsを作成(文献12)
 肺-体血流比Qp/Qsを計算 (図1,表1)
造影MRAを施行する症例もあり;吸気状態で息どめ。マグネビスト使用。上行大動脈に造影剤が到達したタイミングでスキャン開始。 造影剤の投与量、速度などは不明…
●冠静脈洞欠損を描出するための技術
 冠静脈洞欠損の詳細(文献1,2)から断面を決定
 SVCと左心房の境界に対して垂直な横断像と矢状断像を撮像(図2)
 シネPC velocity flow mapsは、冠静脈洞欠損の部位とサイズを強調する(図3 オンラインではAVIシネ画像あり)。
●PAPVCを描出するための技術
 横断像が最も適している(図4)肺静脈から右心房に流入する血流はシネPC velocity flow mapsで描出される。
○結果
・冠静脈洞欠損について
 19例がMRIで冠静脈洞欠損と診断
 Qp/Qsは1.5~4
 18例(95%)でPAPVCを合併。30の肺静脈還流異常が同定された(1患者平均1.6本)全症例右側に発生。今回は左側PAPVCやscimitar veinはなかった。11例が手術でも欠損が確認された。全ての症例で、MRI前のTTEで欠損を同定できなかった。4例はTEEで欠損あり、あるいは疑いだったが確定のためおよび、PAPVC検索のためにMRIを施行された。
 TTE,TEEで6例にASDが疑われたが、MRIで1例のみにASDが見られた。
・PAPVCについて
 36例、60本の肺静脈還流異常あり。
 右側27例(75%)、左側7例(19.4%)、両側2例(5.6%)
 本数、部位の検討
 36例中、20例で造影MRAを施行。描出は良好であるが、非造影MRAと診断能は変わらない。
○考察
・冠静脈洞欠損症について
 TTEでは12%程度の診断能。文献15では、小児においてTTE,TEE、カテーテルを用いて1/16確定、7/16疑い、8/16無さそう、であったのがシネMRIで全例描出された。冠静脈洞欠損は長期的には血行動態に影響を及ぼすが、早期に発見し手術をすることで良好な予後が得られる。心臓CTで冠静脈洞欠損を検出することもできるが(17)、機能と血流の評価はできない。
・部分肺静脈還流異常について
TEE:43例の検討でPAPVCの診断に有用(5)
CT:29例の検討で、左側型が79%という結果→右の異常な上肺静脈が細く、CTで過小評価した?MDCTの報告では、良好な成績。
MRI:心外のシャントを良好に検出。冠静脈洞欠損の合併検出が可能。カテーテル検査を行わずにQp/Qsが分かる。FOVが広いために、TEEに比較して、検出率が高い。
 造影MRAは病変を検出し、検査時間を短縮するのに有用であるが(9-11)、今回の検討では2Dのみで同等の診断が可能であった。
・Limitation
 選択バイアスの問題
結論:心臓MRIを用いることで、右室拡張の原因疾患として冠静脈洞欠損とPAPVCの形態診断、質的診断を行うことができた。特発性肺高血圧症や、右室心筋症の診断を下す前に心臓MRI検査を行うことは有用である。

 読んでいただいた方、お疲れ様でした。内容に誤解があればコメントいただけると幸いです。Phase Contrast法にも手を出してみようかなぁ…と思えた論文でした。