① 小不入川
ガイドの雷鳴君が教えてくれた。「若い者は四川に行かない(ほうがよい)」と言うような意味。
四川は昔の蜀の国。古くから天府の地(地味が肥えて産出物の豊かな土地)と言われた。「蜀犬日に吠ゆ」と言う成句があり、四川は晴れの日が少ないからたまに陽が差すと、犬が驚いて太陽に向かってほえると言うことだが、晴れの日は少なくても1年を通じて気候はしのぎやすく、また地震や台風などの自然災害も少ない。現在でも食べ物は豊富で安いそうだ。このような土地だから、若いうちに四川に来て慣れてしまうと、苦労を知らない、なまくらな人間になると言うことから「小不入川」と言う成句ができたようだ。
実際、今回の旅でも食べ物は安いことは実感した。雷鳴君が食事はちゃんとしたレストランがいいか、庶民的な店がいいかと尋ねたから、庶民的な店のほうがいいと答えると、喜んで、四川滞在中は1度を除いていつも普通の店に連れて行ってくれた。どこでもとても安く、平楽古鎮に行く途中で立ち寄った道路脇の店は、6品くらいついて1人当たりで160円ほどだった。閬中の昼食は麺が中心でたっぷりあって約150円、夜は家鴨と茸の鍋にしたが、なかなか美味しく1鍋で約900円という安さだった。
閬中から戻ったときに昼食を食べた店は雷鳴君やドライバーの邱さん馴染みの店で、えんどう豆のスープが非常に美味く、お代わりしたり他の料理も食べて160円くらいだった。
もちろん高級なレストランに行けば雰囲気も味も良く、それなりの支払いは必要だろうが、今回のような庶民的な店で十分満足できる。
② 雷 鳴君
今回の四川の旅では、成都の山水国際旅行社の雷鳴(Lei Ming)君に非常に世話になった。成都空港で出迎えてくれた彼の第一印象はとても良く、これは良い旅になるなという予感がしたが、実際そのとおりになった。26歳、大学で日本語を学び、旅行社に入って4年ほどになる非常な親日家だった。明るい性格で笑顔を絶やさない。当然といえば当然かもしれないが、行き先々の土地のことは成都はもちろん、平楽、閬中、臥龍についてはとても詳しくて、いろいろと尋ねてもいつも明快に答えるので信頼できた。特に臥龍のパンダの保護研究センターには何度も案内した経験があり、まるで職員のようにいろいろ説明してくれた。上に書いた食事のことでも、私が庶民的なところが良いと言ったので、穴場のような店に案内してくれた。
成都での夜の小吃(軽食)店。人気があるとかで大変な混雑だった。
旅の途中の心配りも細やで、快適な旅ができるようにとの心遣いがよく分った。彼も私に親しみを持ってくれて、私が西安の友人達から「爺爺yeye(おじいちゃん)」と呼ばれていることを知ると、ずっと「爺爺」と呼んでくれたので、なおさら心楽しかった。
彼の大学時代の日本人の先生が彼を気に入って日本に招待してくれて、夏の3ヶ月を東京で過ごしたが、先生の家族や縁者に非常に親切にしてもらい、すっかり日本や日本人が好きになったそうだ。そのこともあって大学卒業後には日本語ガイドになったのだが、「ガイドをしてみると、日本人にもいろいろな人がいることが判りました」と笑っていた。実際日本人観光客の中にはかなり非常識な者もいて、チベットに案内したツアー団の中のある高年の男性などはちょっとしたことで、ガイドとしての彼の行動に対して悪感情を持ち、同行の他の日本人達の前で彼を「お前は馬鹿野郎だ」と面罵したこともあったそうで、聞いていて日本人として情けなく、恥ずかしく思ったことだった。
成都を発つ前日、夕食はやはり庶民料理にしましょうと言って連れて行ってくれたのは何と彼の家で、新婚間もない彼の可愛い奥さんのおいしい手料理をご馳走してくれたのには感激した。こんなことはめったに体験できることではない。
雷鳴君と奥さん
旅行会社の旅の案内の謳い文句のような「豪華なホテルに泊まって、各地の名物料理を食べる」だけが旅行の楽しみではない。ただ観光地を駆け抜けるだけでなく、ごく普通の庶民の暮らしに触れることがあってこそ満足できる旅になる。そういう意味では、雷鳴君のお蔭で今回の四川の旅はまことに心に残るものになった。
ガイドの雷鳴君が教えてくれた。「若い者は四川に行かない(ほうがよい)」と言うような意味。
四川は昔の蜀の国。古くから天府の地(地味が肥えて産出物の豊かな土地)と言われた。「蜀犬日に吠ゆ」と言う成句があり、四川は晴れの日が少ないからたまに陽が差すと、犬が驚いて太陽に向かってほえると言うことだが、晴れの日は少なくても1年を通じて気候はしのぎやすく、また地震や台風などの自然災害も少ない。現在でも食べ物は豊富で安いそうだ。このような土地だから、若いうちに四川に来て慣れてしまうと、苦労を知らない、なまくらな人間になると言うことから「小不入川」と言う成句ができたようだ。
実際、今回の旅でも食べ物は安いことは実感した。雷鳴君が食事はちゃんとしたレストランがいいか、庶民的な店がいいかと尋ねたから、庶民的な店のほうがいいと答えると、喜んで、四川滞在中は1度を除いていつも普通の店に連れて行ってくれた。どこでもとても安く、平楽古鎮に行く途中で立ち寄った道路脇の店は、6品くらいついて1人当たりで160円ほどだった。閬中の昼食は麺が中心でたっぷりあって約150円、夜は家鴨と茸の鍋にしたが、なかなか美味しく1鍋で約900円という安さだった。
閬中から戻ったときに昼食を食べた店は雷鳴君やドライバーの邱さん馴染みの店で、えんどう豆のスープが非常に美味く、お代わりしたり他の料理も食べて160円くらいだった。
もちろん高級なレストランに行けば雰囲気も味も良く、それなりの支払いは必要だろうが、今回のような庶民的な店で十分満足できる。
② 雷 鳴君
今回の四川の旅では、成都の山水国際旅行社の雷鳴(Lei Ming)君に非常に世話になった。成都空港で出迎えてくれた彼の第一印象はとても良く、これは良い旅になるなという予感がしたが、実際そのとおりになった。26歳、大学で日本語を学び、旅行社に入って4年ほどになる非常な親日家だった。明るい性格で笑顔を絶やさない。当然といえば当然かもしれないが、行き先々の土地のことは成都はもちろん、平楽、閬中、臥龍についてはとても詳しくて、いろいろと尋ねてもいつも明快に答えるので信頼できた。特に臥龍のパンダの保護研究センターには何度も案内した経験があり、まるで職員のようにいろいろ説明してくれた。上に書いた食事のことでも、私が庶民的なところが良いと言ったので、穴場のような店に案内してくれた。
成都での夜の小吃(軽食)店。人気があるとかで大変な混雑だった。
旅の途中の心配りも細やで、快適な旅ができるようにとの心遣いがよく分った。彼も私に親しみを持ってくれて、私が西安の友人達から「爺爺yeye(おじいちゃん)」と呼ばれていることを知ると、ずっと「爺爺」と呼んでくれたので、なおさら心楽しかった。
彼の大学時代の日本人の先生が彼を気に入って日本に招待してくれて、夏の3ヶ月を東京で過ごしたが、先生の家族や縁者に非常に親切にしてもらい、すっかり日本や日本人が好きになったそうだ。そのこともあって大学卒業後には日本語ガイドになったのだが、「ガイドをしてみると、日本人にもいろいろな人がいることが判りました」と笑っていた。実際日本人観光客の中にはかなり非常識な者もいて、チベットに案内したツアー団の中のある高年の男性などはちょっとしたことで、ガイドとしての彼の行動に対して悪感情を持ち、同行の他の日本人達の前で彼を「お前は馬鹿野郎だ」と面罵したこともあったそうで、聞いていて日本人として情けなく、恥ずかしく思ったことだった。
成都を発つ前日、夕食はやはり庶民料理にしましょうと言って連れて行ってくれたのは何と彼の家で、新婚間もない彼の可愛い奥さんのおいしい手料理をご馳走してくれたのには感激した。こんなことはめったに体験できることではない。
雷鳴君と奥さん
旅行会社の旅の案内の謳い文句のような「豪華なホテルに泊まって、各地の名物料理を食べる」だけが旅行の楽しみではない。ただ観光地を駆け抜けるだけでなく、ごく普通の庶民の暮らしに触れることがあってこそ満足できる旅になる。そういう意味では、雷鳴君のお蔭で今回の四川の旅はまことに心に残るものになった。