中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

震災の中で

2011-04-05 09:29:54 | 身辺雑記

西安の李真の外国語大学日本語科の学友の曹渓は日本の男性と結婚して神奈川県に住んでいる。美人で日本語も料理もうまいし、家庭菜園も手がけたりするなかなか良い奥さんだ。 

 

 彼女の夫君の父親のK氏は、ある食品メーカーを定年退職となったが引き止められて引き続き、立ち上げからずっと責任者として勤めてきたトマト菜園の経営に携わってきたが、福島県のいわき市にあるそのトマト菜園が、今回の震災で大きな被害を受けた。大変な立場になっているのに違いないと曹渓は言った。会社には中国から22名の研修生を預かっていたが、地震の後K氏は奔走して、16名を帰国させ、6名を千葉に転職先を見つけてやった。地震の後で断水になると22人の研修生のために8時間並んで水を取りに行ったり、深夜まで研修生と一緒に中国領事館からの迎えの車を待ったそうだ。先週の土、日にK氏夫妻は神奈川の曹渓の家を訪れたが、そのときに彼女に翻訳してもらうために、帰国した研修生からの手紙を携えてきた。それを読んで彼女は涙が止まらなかったと言い、義父は本当に立派な社長だと思ったようだ。

  

 義母も夫の立場をよく理解して、ずっと一緒にいた。曹渓はせめて義母だけでも先に神奈川に来るように勧めたが、おとうさんと一緒にいると聞かなかったそうだ。地震の直後には、彼女はなぜ両親が避難して来ないのかと理解できず、夫君に散々文句を言ったが、夫君は涙を流しながら、親父のことはよく分かっている、社員達を置いて来られるような人間ではないから自分からは何も言えない、心配だが親父を信じるしかないと言ったそうだ。

 

 このようなことを見て曹渓は、自分も主人を置いて一人で中国に帰ることはできないと言う。西安にいる彼女の両親もよく理解して、一言も帰ってほしいとは言わなかった。中国では今回の地震のニュースは大々的に、やや過大にも報じられていたようだから、おそらく両親は一人娘のことが心配で堪らなかったはずだ。これまた立派な両親だと思う。

 

 彼女が日本人と結婚したことをなかなか理解してくれない友人も少なからずいたそうだ。しかし彼女は、義父母も夫君も自分を誇りに思ってくれているし、西安の両親を尊敬してくれている、それで満足していると言った。

  

曹渓は、このような話を日本人が嫌いな中国人全員に聞かせてほしいと言ったので、私も中国が嫌いな日本人に聞かせてやりたいと言った。K氏の中国人研修生に対する誠実で献身的な対応は、日本人として誇りに思う。真に日中友好の精神を具現している人だ。

 

義父母が訪れる前日に、曹渓は妊娠していることが分かった。これまでずっと願い続けていたことが叶えられて、夜もワクワクして眠れないほど嬉しいようだ。もちろん義父母も西安の大喜びしたようだ。

 

曹渓は「何か今回の大惨事で、私も少しだけ成長した気がします。人生の中で初めて死がこんなに身近にあるものだと気づきました」と言い、

 

「不安の中、来てくれた子は本当に神様がくれたご褒美かなと思っています。新しい命がまた生まれる。自然の力は本当に大きいですね。大事に大事に育てていきます」

 

と言っている。曹渓とその家族の幸せを心から祈る。