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ゆれる

2006-07-21 23:55:12 | 映画 ヤ行
映画館で、出演:オダギリジョー/香川照之/伊武雅刀/新井浩文/真木よう子/木村祐一/ピエール瀧/田口トモロヲ/蟹江敬三/原案・脚本・監督:西川美和/作品『ゆれる』を観ました。

●感想
 ・本作は先週から公開されているのですが、会員になっている映画館が金曜日は1000円になるので、今日まで待って観て参りました。

 ・ストーリーは、東京でカメラマンとして活躍している早川 猛(オダギリジョー)が母の一周忌の為に帰省した際、兄の稔(香川照之)と幼馴染みの川端智恵子(真木よう子)の3人で蓮美渓谷へ遊びに出かけ、猛を追って稔と一緒に吊り橋を渡っていた智恵子が転落し死亡する出来事に遭遇します。
離れた場所で二人の行動の全てを見ていた猛は、橋の上で呆然となっている稔に駆け寄り、警察に連絡を入れ、兄を守る為に智恵子の転落はあくまで事故によるものだと証言するのですが、警察で事情聴取を受けていた稔は「智恵子は自分が突き落とした」と自白してしまう……というものです。

 ・お目当ては、主演のオダギリジョーくんではなく『ベロニカは死ぬことにした』で一目惚れしてしまった真木よう子ちゃんでしたが、この作品は出演している役者さん全てが上手いです。特に『ホテルビーナス』での落ちぶれた医者の演技を観て「この人、上手いなぁ~!」って感心させられた香川照之さんは本作でも、オダギリジョーくん演じるカメラマンの早川 猛の温厚な兄の早川 稔を熱演なさっており、リアルな演技力は途中から「香川照之さんって、本当は稔みたいな人じゃないの?」って錯覚させられる程でした。

 ・オダギリジョーくんも女に対して、だらしない男前なカメラマン役がピッタリはまっており、これまでに私が観たジョーくん出演作品の中では、この役が一番好きですね。
ストーリー上、兄弟二人だけで会話をするシーンが多いのですが、特に拘置所の面会室でお互いに本音をぶちまけるシーンが実にリアルで凄まじく、二人の心の変化が実に上手く描かれているので、このシーンを観るだけでも充分に価値のある映画じゃないでしょうか。

 ・脇を固める伊武雅刀さんや蟹江敬三さんらベテラン陣の喜怒哀楽をリアルに表現する演技も見応ありますし、強弱を織り交ぜて、ネチネチと稔に尋問する丸坊主で強面で嫌味な検事を演じた木村祐一さんの演技は劇中でも目立っており「もはや、キム兄もすっかり役者さんやなぁ~」と感心させられました。

 ・もちろん、智恵子を演じた真木よう子ちゃんも28歳の寂しい女性を上手く演じているのですが、演出上、登場してから直ぐに死んでしまう為に出番が少なく、彼女をジックリと観れなかったのが残念でした……。でも、僅かに見せた彼女の笑顔の可愛らしさに、私はまたもやハートを打ち抜かれてしまいました!

 ・それにしても、監督の西川美和さんの才能は凄いですね~!撮影は基本的にカメラをステイさせてワンシーンの長まわしを多様し、役者の熱演をしっかり生かしながらも、合間に山や川などの自然の風景とか鯛のお頭などストーリーには直接関係ないワンカットをセリフ代わりに入れる事で、観ている側に自然と登場人物の心情を連想させる高等テクニックを使い、作品中にしっかりと独自色を出しているところには、すっかり脱帽といったところでした。
下手にカメラを動かしたり、意味の無い頻繁なカットの切り替えや無駄なセリフが全く無いので、これから映画監督を目指そうと思っている方には良いお手本として絶対に観て欲しい作品ですね!

 ・さっきも述べました様に、ほとんどの会話のシーンでカメラはステイ状態なんですが、拘置所で初めて猛と稔がこれまで心に秘めていた本音をお互いにぶつけ合うシーンでは二人の感情の爆発をリアルに表現する為に、カメラは容赦なく『ゆれる』んですね~。まるで、このシーンの為にそれまでカメラを動かさずにいたかの様に。ここ一番のクライマックスシーンでの西川監督のメリハリの効いた演出が冴えた名場面だったと思います。

 ・本作では何と言っても脚本が素晴らしいですね!この複雑な脚本を西川監督自身が書いており、パンフレットによりますと、ある日、監督自身が見た夢を参考に書いたという事で、夢を基本にここまでしっかりとした脚本を作り上げてしまうなんて、驚きとしか言い様がなく、脚本家としても非凡な才能を持った方だと思います。

 ・西川監督が撮った前作の『蛇イチゴ』はまだ観ていないのですが、この作品を観て「レンタルしなくては!」と思いました。『蛇イチゴ』も夢で見た事を映画にしたとの事なので、どんな風に仕上がっているのかが、とても楽しみです。

 ・何にしても、観客にとって観易く、しっかりとした映像作りが出来る才能豊かな若い監督の登場に喜びながらも、今後の西川美和監督作品にも大いなる期待をかけて見守っていきたいと思っております。

●採点
 ・私的評価……85点(俳優陣の熱演とそれをじっくり観せる為のカメラワークや演出、しっかりとした脚本、どれをとっても素晴らしかったです。特に普通ならセリフで説明したくなるところを敢えて映像で表現しいるところに西川美和監督のセンスの良さと非凡な才能を感じました。中でも稔のズボンに垂れるお酒、川に流れて行く智恵子の靴などのシーンはとても印象に残りましたし、川の流れや車の騒音などの物語の重要な場面に係わってくる音の使い方も上手いと思いました。)

 ・ここまでベタ褒めして「何で85点やねん!」って思っている方もおいででしょうが、肝心のオチの部分が少し弱かった様に感じました。パンフレットを読むと結末は、監督自身が意識してあやふやな状態で終わらせたかったみたいなんですが、ラストシーンを観ると、どうしても「何故、猛はあそこまで稔を追い込む必要があったのだろうか?」と疑問を持ってしまいます。ここだけがちょっと釈然としないので、この点数に致しました。

 ・先程から何度かパンフレットのことに触れましたので、少し紹介しておきますとサイズは文庫本より一回り大きいくらいで、よくあるパンフレットのサイズの1/4くらいしかない、とても小さいものです。定価は800円で、一緒に出演者や映画の舞台となった渓谷のポストカードが12枚付いている(オダギリジョーくんが一人で写っているカードは2枚あるのに、真木よう子ちゃんを含めて、その他の出演者は1枚だけでした。しかも、真木よう子ちゃんは悲しそうな横顔をしているので、なんだかビミューな感じです……。)ので、出演者の中に好きな俳優さんがいる方は購入されてもよいのではないでしょうか。

 ・と言う訳でこの作品は、人間の奥底にある悪意や嫉妬を上手く表現した映画が好きな方と吊り橋の真ん中で腰が抜けて動けなくなった経験のある方にオススメ致します。

 ・最後にどうでもいいことなんですが、裁判長役をしている田口トモロヲさんが喋る度に『プロジェクトX』を思い出してしまったのは、私だけでしょうか?

それでは、また何か観たら書き込みます。



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