街は徐々にクリスマスのイルミネーションでキラキラしはじめている。
もう少ししたら、どこへ行ってもクリスマスソングが聞こえてくることだろう。
そうなると加藤はもう、イヤホンで耳をふさいで、
マリリン・マンソンの『アンチクライスト スーパースター』を大音量で聴き続けることになる。
マリリン・マンソンは好きですが、そんな、やっぱりね、おっきな音を聞き続けるのは
ほら、耳によくないからさ。だから今からクリスマスソングを聴いて免疫をつけておくのです。
クリスマスの時期にしか流れないのがよくない。その特別感が俺の耳を悪くするのだ。
今からクリスマスソングを何度も何度も聴き続けて、「聴きなれた歌」にすることで、
自分の中で「ジングルベル」も「スピッツ」も「バンプオブチキン」も、
全部おんなじ「J-POP]という位置づけにするのです。
だから街でクリスマスソングを聴いても、喫茶店でよく知らんジャズが流れてる
くらいの、なんら日常と変わりがないものになる。
しかし「クリスマスソング」というものは、何となくメロディーは知っているけど
歌詞はうろ覚え、という人が多いのではないだろうか。自分もそうだった。
今回こうしてじっくりと聴いてみて、こういう歌詞だったのかと知っていく中で、
1曲、気になる歌があった。「ママがサンタにキッスした」という歌をご存知だろうか。
たぶん歌を聴いたら「あぁ!」となると思う。その歌詞がこんな感じなのです。
○●○●○●○●○●○●○●
『ママがサンタにキッスした』
それは昨日の夜 サンタのおじさんが
重い袋 肩にかついで そっとお部屋に入ってきたら
ママは寄り添いながら やさしくキッスして
とてもうれしそうに お話してる
でも そのサンタはパパ
○●○●○●○●○●○●○●
という短い歌。子供の視点で歌われる歌で、
実はサンタはパパだった、というかわいらしい歌である。
だけど、俺はこの歌をちゃんと歌詞も聴いたときに、はじめゾッとした。
だって、最後の「そのサンタはパパ」というオチを知るまでは、
「え、ママ、知らないおじさんにやさしくよりそってキスしてるの!!!!」
と、情事的な印象がドーンと入ってきて、サンタって、サンタって!!!!
と言う感じで、夢がとんでもないかたちでぶち壊されて、もはやトラウマに・・・
というところで、最後の「でも そのサンタはパパ」である。
一気に胸が軽くなり、「よかった。。あぁ、よかった。。」と涙が出そうになる。
もう「かわいらしさ」どころの話ではない。
ある家庭の闇を見てしまい、でもそれは勘違いでした、みたいな歌だ。俺にとっては。
最初に受けた不安になる印象が強すぎて、トラウマまではいかないけど、
この歌を聴くたびに変にドキドキする。
「どうしよう。歌詞が変わってたらどうしよう。」
あるはずもないのに、こんな不安が一瞬脳裏をよぎる。
「どうしよう。最後『でも そのサンタはおともだちのパパ』とかだったらどうしよう!!」
と、落ち着かなくなる。恐ろしい歌だぜ。。
クリスマスはいろいろと油断ならないのだ。
今からクリスマスソングを聴いて、心をしっかりと強くしておかなければならない。
ま、強くなるわけねえんだけどさ。。