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佐々木譲『樹林の罠』2022・角川春樹事務所-北海道警察の組織悪を暴いてしまった仲間たちの絆を描く

2024年07月31日 | 北海道を読む

 2023年7月のブログです

     *

 佐々木譲さんの『樹林の罠』(2022・角川春樹事務所)を読む。

 北海道警察・大通警察署シリーズの最新刊。

 まだ文庫本になっていないので、東川の図書館で単行本を読む。

 図書館で読んだ本の感想文を書くのは初めてかもしれない。

 主人公は何年か前に仲間とともに北海道警察の組織悪を暴いてしまったせいで、閑職に追いやられている佐伯宏一刑事。

 彼とその時の仲間たちがまたまた組織と対立してしまう物語だ。

 例によってあらすじは書かないが、やはり、組織と個人の問題、組織悪、官僚化などの問題が背景に浮かぶ。

 力のある者が、組織の都合で閑職に追いやられる世界。

 ここでは、北海道警察がやり玉に挙がっているが、他の警察や他のお役所、企業でも事情は同じであろう。

 佐伯刑事は殺人事件の合同捜査本部には呼ばれず、与えられた目の前の小さな事件に部下とともに取り組むが、地道な取り組みがだんだんと殺人事件の解決に近づく。

 昔、一緒に組織悪を暴いてしまった仲間たちのなにげない応援や協力の姿が楽しい。

 年配者や若者、女性が、誰に指示されたわけでもなく、力を合わせる姿は、日本の組織では夢物語のように思える。

 自立した個人というのは、組織のゆがみを乗り越えられるかもしれないという夢を与えてくれるかのようだ。

 ここがこのシリーズの読みどころなのかもしれない。

 組織に埋没しない自立した個人。

 まだまだこのシリーズが続いていくことを祈りたい。      (2023.7 記)

 


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