2019年のブログです
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堀江敏幸さんの『なずな』(2014・集英社文庫)を読みました。
堀江さんの小説は、今年の夏、北海道にいる時にたくさん読みましたが、この小説はなぜか読みそびれていました(堀江さん、ごめんなさい)。
なずなちゃん。生後2か月。
お母さんとお父さんのよんどころのないご事情から、なんと、お父さんのお兄さんである四十路独身のおじさん男子の主人公が一時的に預かることになります。
預かるったって、生後2か月の赤ちゃん、そのお世話はたいへんです。
じーじも共働きだったので、子育てのたいへんさは少しだけわかりますが、まず寝不足、そして、悪魔のような赤ちゃんの要求に振り回されます。
そう、それはまさしく悪魔のよう。
かわいい顔をして、悪魔のような要求、最初のうちはおとなにも、そして、おそらくは赤ちゃん自身もよくわかっていない要求をします。
おとなたちはフラフラ、じーじたち夫婦も二人いてもフラフラでした。
それを、四十路独身男子の主人公が、周囲の応援も得て、頑張ります。
うーん、頑張るというよりは、だんだんと手の抜き方を覚え、一緒にお昼寝ができるようになります。
なずなちゃんは健康な赤ちゃん、いっぱいミルクをのみ、いっぱいげっぷをして、いっぱいブリブリブリとうんちをします。
主人公はそのお世話をしながら、だんだんとなずなちゃんのこまやかな成長に気づき、喜びを感じ、楽しい時間を共有します。
その過程がていねいに、こまやかに、情感たっぷりに描かれる素敵な小説です。
読んでいると、なんとなく幸せになれるいい小説です。
おすすめです。 (2019. 11 記)