ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

瀬尾まいこ『夜明けのすべて』2023・文春文庫-PMS(月経前症候群)の女の子とパニック障害の男の子の物語

2024年08月07日 | 小説を読む

 2024年8月のブログです

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 瀬尾まいこさんの『夜明けのすべて』(2023・文春文庫)を読む。   

 この小説も以前から気になっていて、旭川の本屋さんで購入して読む。

 PMS(月経前症候群)で感情が抑えられない女の子とパニック障害でパニック発作におびえる男の子の物語。

 二人の症状の描写はとてもリアルで、読んでいても苦しくなるほど。

 作者がかなり勉強をしたのだろうと思う。

 興味深かったのは、いわゆる病気の原因探しをまったくしていない点。

 一応、臨床心理士をやっているじーじなどは、すぐに家族関係や仕事関係などを探りたくなるが、そういう文章は出てこない。

 普通の家庭で、普通の親子関係であり、普通の学歴や会社である(らしい)。

 しかし、理不尽にも、女の子はPMS(月経前症候群)になり、男の子はパニック障害になる。

 思うに、原因探しは悪者探しに繋がり、かりに原因がわかっても原因が変わる可能性は低く、ますますこじれる可能性が高いからでないか、と推察をする。

 それならば、作中に出てくる精神科医のように、たんたんと効きそうな薬を探るほうがましかもしれない。

 もっとも、作中の精神科医も、減薬の時には、男の子がびっくりするくらい人間らしくなるところが面白い。

 女の子と男の子は病いに翻弄されながらも、お互いを思い、少しだけお互いを助けられるようになる。

 人はやはり人との間で人間になるようだ。

 なかなかいい小説だ。      (2024.8 記)

 

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尾崎新『対人援助の技法-「曖昧さ」から「柔軟さ・自在さ」へ』1997・誠信書房

2024年08月07日 | 心理臨床を考える

 2014年のブログです

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 尾崎新さんの『対人援助の技法-「曖昧さ」から「柔軟さ・自在さ」へ』(1997・誠信書房)を読みました。

 尾崎さんのことはボランテアでおじゃまさせていただいている精神科デイケアの本棚で偶然,尾崎さんの『臨床・精神科デイケア論』(1992・岩崎学術出版社)を見つけて読んでみたところ,これまでにいくつか読んだデイケア論の中で一番おもしろく読めてファンになりました。

 ウィニコットさんを中心に「ほどよさ」を論じているところが新鮮でした。

 続けて読んだこの『対人援助の技法』も,対人関係の「援助」について丁寧な論考がなされていて参考になります。

 精神分析の考え方も参考に深い考察がなされており,援助者が陥りがちな陥穽に警告をしていると思います。

 今後に大切な一冊になりそうだと思いました。       (2014.4 記)

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 2023年12月の追記です

 尾崎さんのこの本、久しぶりにパラパラとめくってみました。

 なかなか難しい本で、今のじーじの力でもまだまだ理解が十分とは言えない感じです。

 当時、よくチャレンジしたものだと感心します(?)。

 サブタイトルにあるように、曖昧さや多様さは奥の深さや幅の広さに繋がり、柔軟さや自在さに繋がるようです。

 そして、そのしなやかさを支えるものがゆとりや自由さのようであるとおっしゃっています。

 おそらく、そこには、ウィニコットさんのいう、遊ぶこと、の大切さがあるようにじーじには思われます。

 もっと、もっと、勉強をせねばなりません。       (2023.12 記)

 

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