ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

河合隼雄・吉本ばなな『なるほどの対話』2005・新潮文庫-こころと魂を語る

2024年07月14日 | ユング心理学に学ぶ

 たぶん2016年ころのブログです

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 先日、吉本ばななさんの『キッチン』を再読してとても面白く読めましたので、こんどは河合隼雄さんと吉本ばななさんの対談『なるほどの対話』(2005・新潮文庫)を再読しました。

 この本もかなり久しぶりで、中身はかなり忘れてしまっていたのですが、予想どおりにとても面白く読めました。

 河合さんがカウンセリングの時に「はあ、なるほど」というあいづちを打つことからこの本の題名がついていますが、まさにその雰囲気で対談は続きます。

 内容は多岐にわたりますが、いずれもなかなか深く、読み応えがあります。

 生き方や人生については現代日本のあり方に警鐘を鳴らす内容が多いですが、堅苦しくはなく、肩の力を抜いて読むことができます。

 そして、むしろ、そういう本の読み方や生き方がいいのかもしれないなと思わされます。

 面白かったのは吉本さんの小説の書き方で、小説は生き物だから制御できない、何かが生まれてくるのを待つ、などと述べており、これは村上春樹さんの発言と重なって、とても興味深く感じました。

 深い内容の小説は、やはりこころや魂の深い部分に耳をすまさなければならないようですし、これはたいへんな作業だなと思われました。

 河合さんはこれらを受けて、カウンセリングも頭で考えて受けても駄目で、もっと深いところからの動きに従わなければならない、といった趣旨のことを話されます。

 じーじなどにはまだまだよくわかっていないとても深い世界なのだろうなと感じさせられました。

 しかし、そうはいっても、生きていかなければなりません。

 時代に流されずに、なにが大切かを吟味しつつ、ひとりひとりのつながりに生かされつつ、生かしつつ、誠実に、しかし、楽しみながら生きていきたいなと思いました。      (2016?記)

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 2020年11月の追記です

 小説やカウンセリングで、頭だけではなく、もっと深いところからの動きを大切にしなければならない、という指摘には、今もさらに深く頷けます。

 そういうことを大切にできる人間になりたいなと思います。     (2020. 11 記)

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 2023年12月の追記です

 深いところからの動きを大切にしなければならない、ということは本当に大切なことだと思います。

 精神分析のフロイトさんやビオンさんは、そのための貴重な工夫をたくさん述べているのだなあ、と改めて思います。      (2023.12 記)

 

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加藤周一『夕陽妄語1 1984-1991』2016・ちくま文庫-ベルリンの壁と湾岸戦争を視る

2024年07月14日 | 随筆を読む

 2019年のブログです

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 加藤周一『夕陽妄語1 1984-1991』(2016・ちくま文庫)を再読。

 「夕日妄語」は加藤さんが朝日新聞に月1回、連載をしていた社会時評で、当時、じーじはライヴで毎月、楽しみに読んでいた。

 加藤さんは『羊の歌』以来、冷静な社会分析が魅力的だが、「夕陽妄語」でも、その冷静さはすごい。

 いろんな事件が起こり、加藤さんの分析に学ぶところが多かったが、その加藤さんが、予想できなかった、少なくともこんなに早くは、と語らせたのが、ベルリンの壁の崩壊。

 そういうことを隠さずに正直に書く加藤さんもすごいと思う。

 湾岸戦争前夜の加藤さんの筆も冴える。

 戦争前、イラクとアメリカの軍事行動がエスカレートする中、それでも戦争までは、戦争だけは避けるのでは?という祈りに似た語りをよそに戦争に突入、加藤さんはアメリカを止められなかった国連のあり方を検証する。

 その流れに流されずに、とことん冷静に分析をする姿はやはりすごい。

 そして、アメリカ追従の日本を分析し、行く末を懸念し、さまざまなことがらに話が及ぶ姿は、考えることの大切さを伝えてくれる。

 読んでいて、勇気をくれる本である。      (2019.3 記)

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 2022年春の追記です

 ベトナムとイラク、アフガニスタンでの失敗が、今回のウクライナでのアメリカの慎重さにつながっているのかもしれない。 

 戦争に慎重なことはとてもいいことだと思う。

 民主的な国々と連帯をして頑張ってほしいとせつに願うところだ。       (2022.4 記)

 

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