ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

佐々木譲『警官の酒場』2024・角川春樹事務所-仲間たちの信念と矜持、絆を描く

2024年07月29日 | 北海道を読む

 2024年7月のブログです

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 佐々木譲さんの『警官の酒場』(2024・角川春樹事務所)を読む。

 北海道警察・大通警察署シリーズの最新刊。第1シーズン完!とある(しくしく)。

 まだ文庫本になっていないので、楽しみにしていた東川の図書館で読む(?)。

 図書館で読んだ本の感想文を書くのはこれがたぶん2冊目(ごめんなさい、佐々木さん。文庫本になったら買いますね)。

 主人公は何年か前に仲間とともに北海道警察の組織悪を暴いて、捜査の第一線から外されている刑事。

 力のある者が、組織の都合で閑職に追いやられる世界。

 しかし、その実績を買われて最近は警部昇進試験の話がやかましい。

 もっとも、主人公は父親の介護を抱えて、身動きができない状態。

 以前、付き合っていた仲間の女性刑事との仲も未解決(?)だ。

 そんなところに、闇バイトによる強盗殺人事件が発生。

 詳しいあらすじは書かないが、主人公たちが、携帯の窃盗事件などを地道に捜査していると、偶然にも闇バイトの凶悪事件に近づいていく。

 さらに、ここに、以前の巻で、覚せい剤の前科があるというだけで、愛する女性と別れることになった若い刑事も絡む。

 さまざまな愛情と葛藤を抱えながらも、昔、一緒に組織悪を暴いてしまった仲間たちのなにげない応援や協力の姿が楽しい。

 信念と矜持によって自立した個人というのは、組織のゆがみを乗り越えられるかもしれないという夢を与えてくれるかのようだ。

 この仲間たちが気楽に集えるブラックバードという酒場が最後の舞台。

 覚せい剤の前科にとらわれて愛する女性を失った若い刑事が、おれはもう、警官でなくてもいい、と言って人質になり、命がけで女性を救うラストは美しい。

 若い刑事の行動を見て、主人公も先に進む決意をするところで、物語はいったん終了する。

 いい小説だなあ、とつくづく思う。     (2024.7 記)

  

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ニナ・コルタート(舘直彦監訳)『精神療法家として生き残ること-精神分析的精神療法の実践』2007・岩崎学術出版社

2024年07月29日 | 精神療法に学ぶ

 たぶん2015年ころのブログです

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 イギリスの精神療法家ニナ・コルタートさんの『精神療法家として生き残ること-精神分析的精神療法の実践』(2007・岩崎学術出版社)を再読しました。

 2010年ころに初めて読んで、今回が2回目。

 いい本なのに、しばらく間が空いてしまいました。

 精神療法家が生き残ること、は最近のじーじの勉強のテーマの一つですが、コルタートさんのこの本がきっかけとなっています。

 生き残ることの大切さは、小児科医で精神分析家だったウィニコットさんが、赤ちゃんに乱暴をされても報復をしないで世話をするお母さんの姿を述べたものですが、その際、ほどよい母親、が重要と説かれています。

 お母さんといえども、完璧な人間はいないわけで、ほどよいお母さん、で十分であり、むしろ、そのことが、赤ちゃんの万能感を壊して、母子関係、二者関係に導くというものです。

 ここで、決して完ぺきではないお母さんは、赤ちゃんから攻撃をされますが、その際に、報復をせずに、生き残ることが大切で、生き残ることで、赤ちゃんがのちに罪悪感を育てることができることになります。

 こういった一連の母子関係が、治療関係でも起こることをウィニコットさんやそれ以降の精神分析家が指摘し、コルタートさんもこの線に沿って、ご自身のケースを丁寧に検討しながら論述をしています。

 また、今回、気づいたのは、フロイトさんと宗教の関係についての指摘で、フロイトさんの宗教、なかんづく、キリスト教への理解の不十分さを指摘し、精神分析がきちんとした宗教とは対立をしないのではないかと述べていて、なかなか刺激的です。

 今後もさらに深く読み込んで、思索と実践を深めていきたいと思いました。          (2015?記)

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 2020年12月の追記です

 攻撃をされても、報復をしないで耐えて生き残ることは親子関係だけでなく、心理療法においても重要なことですが、しかし、なかなか難しいことでもあります。

 じーじなどは未熟なので、すぐ顔に出てしまって、反省をすることが多いです。

 心理療法の大家のみなさんは、そんな時でも、その時のクライエントさんの心情を想像されたり、心的現実を理解をされたりして、生き残るようです。

 じーじはまだまだ修行不足、もっともっと勉強を続けなければなりません。        (2020. 12 記)

 

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