ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

岩宮恵子『好きなのにはワケがある』筑摩書房・2013-「トトロ」と「夢のちから」を考える

2024年07月09日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2014年のブログです

     *

 最近,3歳になる孫娘が遊びに来ると,『トトロ』のCDを聴きながら『トトロ』の絵本を読んでいます。

 あらためて読んでみると,興味深い場面が数多くあって,楽しいですし,何か心が豊かになる感じがしていて,孫娘に感謝です。

 本書はじーじの大好きな(?)岩宮さんの宮崎アニメ論です。

 さすがに岩宮さんだけあって,いろいろと感心させられる視点でいっぱいです。

 特に,じーじは『トトロ論』が興味深かったです。

 しかし,他にもいろいろと,宮崎アニメについての新鮮な視点の提供があります。

 今後,さらに孫娘と一緒に宮崎アニメを楽しみながら,ゆっくりと味わいつつ,観ていきたいなと思いました。    (2014.10 記)

     *

 2023年12月の追記です

 今から9年前の文章です。

 上の孫娘が3歳の時で、下の孫娘はまだ生まれていませんでした。

 その後、下の孫娘が生まれて、『トトロ』のさつきとメイのような姉妹になり、じーじはあやしいトトロ(?)をめざしてきたような気がします。

 じーじはトトロのようなかわいい顔はしていませんが、大きなおなかはそっくりです(?)。

 ぬいぐるみのような大きなおなかは何か安心感をもたらすかもしれません。

 『トトロ』は、お母さんが病気になった時の不安感とそれを乗り越える物語かもしれません。

 親の不在と不安。

 子どもたちには大きな試練です。

 そんな不安な子どもたちに安心感をもたらすものをアニメがうまく表現してくれているようです。

 子どもたちにとって、いつまでも大切な存在として残るのではないでしょうか。     (2023.12 記)

 

 

コメント

椎名誠『おれたちを齧(かじ)るな-わしらは怪しい雑魚釣り隊』2022・小学館文庫

2024年07月09日 | 随筆を読む

 2022年7月のブログです

     *

 シーナさんの『おれたちを齧(かじ)るな-わしらは怪しい雑魚釣り隊』(2022・小学館文庫)を読む。

 この本も夏休みにゆっくり読もうと楽しみにしていた本。

 旭川の本屋さんで購入。

 大人気シリーズ第7弾、とあって、文庫本はだいたい読んでいるつもりだったが、もうそんなに出ているんだ、と改めてびっくりする。

 本の帯に、ブリだってボラだって出世するのに、どうしておれたちはいつまでも賢くならないのだろうか…、とあるが、シーナさんとその仲間たちの釣りとキャンプとお酒の旅はいつ読んでもおかしい。

 みんな社会人としてはなかなかの仕事をしている人たちばかりだが、シーナさんと遊ぶ時には子どものように無邪気になるところが面白い。

 たとえば、海仁さん。

 シーナさんが昔、初めて小笠原に旅行をした時に、編集者として同行した若者。

 酒を呑まず、笑わせるのに苦労するという真面目で博学な編集者だが、その後、怪しい雑魚釣り隊に加入、エースとして活躍する。

 ところが、大物を釣りあげると興奮をして怪我を頻発するという癖があることが判明、そういう次第を綴るシーナさんの筆が優しい。

 そして、ドレイのみなさん。

 今の世にドレイ(?)が存在するというところに、この集団の特異さと面白さがある。

 下手をするとユーモアを解さない人たちに非難されかねない前近代的制度だが、このドレイのみなさんたちへのシーナさんのさり気ない優しさがまたいい。

 毎回、同じようなできごとが続くが、しかし、変化も確かにあり、ここら辺がこのシリーズの魅力なのかもしれない。

 どこを読んでも決して飽きない面白さがあるというのは、やはりシーナさんの才能なのだろうと思う。

 電車の中で読むには少し危険な本だが、ずっと続いていってほしいと思う。      (2022.7 記)

 

コメント

神田橋條治『発達障害をめぐって-発想の航跡・別巻』2018・岩崎学術出版社

2024年07月09日 | 精神科臨床に学ぶ

 2018年のブログです

     *

 神田橋さんの『発達障害をめぐって-発想の航跡・別巻』(2018・岩崎学術出版社)を読みました。

 神田橋さんの名著『発想の航跡』の中から発達障害に関係する文章を選んだということですので、さっそく読んでみました。

 ちなみに、『発想の航跡』はとてもいい本なのですが、かなり高価で、貧乏なじーじはなかなか買えずに、たまたま家庭裁判所の図書室にあったのを借りて読んだり、コピーを取ったりしました(神田橋さん、ごめんなさい)。

 でも、本書は堂々と(?)購入しましたので、許してくださいね。

 神田橋さん流の発達障害観はどんなかな?と思って読みましたが、やはり神田橋さん(!)、発達障害は程度の差はあれ、みんなが発達障害、と言い切ります。

 そう言われてしまえば、差別も何もなく、あるのは区別だけで、教育や訓練の対象になります。

 治療者を含めて、丁寧な訓練や教育が必要になるということで、人ごとではなく、自分のこととして取り組みざるをえません。

 本書によれば、発達障害で最近、問題になっているのが、発達障害が基盤にあって、さまざまな理由から、うつ症状やパーソナリティ障害が出てきているケースだそうで、治療が難しいといいます。

 うつやパーソナリティと思って治療をしてもあまり良くならず、治療関係が悪化してしまい、よく検討をしてみると、発達の問題が絡んでいるという具合で、現場では苦労されているようです。

 そういった場合、ただ単にうつ症状だ、パーソナリティ障害だ、と言うだけでなく、もっと丁寧な診断で、今、この人に何をしたらいいのか、という診断をしていく必要があるし、それが大切だ、とおっしゃいます。

 神田橋さんの真骨頂です。

 さらに、本書の圧巻は、ケーススーパーヴィジョン。

 人と話すことができない、という主訴の女性で、神田橋さんの見立てでは、発達障害と愛着障害の人だそうです。

 丁寧なカウンセリングで少しずつ話せるようになりますが、その過程を神田橋さんが適切な質問で明確化をしていき、本当に感心させられます。

 本当にすごいなと思いますし、じーじも少しでもこんなふうになりたいなと思います。

 印象に残ったのは、カウンセリングで双方が退行をするためにはきちんとした枠を契約することが大切、というご指摘があって、本当にそうだなと思いました。

 他にも、クライエントさんにも考えてもらうこと、アイデアを出してもらうことの大切さやセルフモリタニング能力を高める工夫、クライエントさんのためになる心理検査の工夫、などなど、学ぶことが多くありました。

 さらに読み深めていきたい、いい本だな思います。     (2018. 12 記)

 

コメント