ココロの居場所

平穏な居場所を求めるべく、日々、感じた事を掲載していきます。

ビンにはいったコーヒー牛乳

2009-12-17 23:04:50 | ショートショート
めずらしく晴れた日のブランチ時だった。
週末のつかれきった体を、やっともちあげた時だった。
君は、突然、温泉にいきたいと言う。
この日の夜は、別の用事があって、ゆっくり過ごしたい日曜だったので気のりがしなかった。
「すっごく、いいお湯なんだよ。だから、一度、つれていきたかったから。」
もう、すっかり、行く事になっているようだ。
「高速は、かんべん。」と運転力が落ちたぼくは、逃げの体制である。
「最近、堤ルートが開通して速くなったから、すぐ着くよ。」と君が運転、ぼくは助手席ということで、ひっぱられることに。
ここまで言うからには、かなりの穴場なのかもしれないと思った。

しかし、久しぶりに乗る君の運転は、ぼくより少しましなぐらい、ほんとに、へただった。
道を知っていると自慢していた君だったが、それも、雲行きがあやしくなってきた。
唯一、救いだったのは、ナビがついていること。これで、あっちだ、こっちだといいながら、なんとか目的に着くことができた。

目的の温泉だが、ぼくは、ちょっと首をひねった。そう、それはまさしく銭湯という言葉にふさわしいものだったのだ。料金が300円というのも安すぎである。
しかし、ここまで来たら行くところまで行くしかない。当然のごとく男湯に入る。
雰囲気は、まったく、これはただの、銭湯である。ただし、硫黄の匂いがした。湯は実になめらかで、熱すぎることもない。
湯につかって、足を思いっきり伸ばし、頭をあげた。眼にはいってきたのは、高めの広い窓ガラスを通して、冬のゆるやかな日差しが拡散して差込み、ぼんやりと浮かぶ湯気が白んで輝き、体を洗う男たちがシルエットになった。超度近眼のぼくの眼を通しても、これは絵になると思った。こんな気分で湯に浸るのは、10年ぶりぐらいかもしれない。
湯から上がって、待合室で待っていると、ずいぶんして君は現れた。「これ、これ、こういうときは、これでしょ。」と懐かしいビンにはいったコーヒー牛乳を君は、いっきに潤した。ここは、銭湯のような温泉場なのだと思った。

(このショートショートは、30%、フィクションです。)

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