ココロの居場所

平穏な居場所を求めるべく、日々、感じた事を掲載していきます。

人生の機微「今のままでいいのか?」

2008-10-20 23:09:49 | ショートショート
ある所に、負け犬とはこういう人物だという模範のような中高年の男がいました。うだつの上がらない仕事を、何十年も続けてました。この日も、被害妄想的に「自分をごまかし続けて、その日をのりきる事がやるせない。」と思っていました。そして、彼は、その日、感情を抑えられなくなって、現実から逃げるように会社を早退してしまいました。それでも、彼は、自分を責め続けます。「無性にふがいない自分に腹がたつ。」と思って自宅に帰ると、家の中は散らかり放題。彼の家族の者は、皆、外にばかり目がむいていて、家の中が散らかっている事に実に無頓着なのでした。でも、彼は人間的な生活をしたいので、ぶつぶつ、独り言をいいながら、掃除をし始めました。家族の者が、夜になると一人、二人と戻ってきました。すかさず、姑のように彼は、小言を言いはじめました。結果は、まるで、鏡に向かって話しかけるようなもので、すかさず自分に跳ね返ってくる言葉の応酬でした。そして、ついに彼は大声で、「俺は頑張ってるのに、おまえたちは、なんだ。」と切れて、家の中の椅子をひっくり返したり、扉や柱を足で、けったりして、情けなくも自傷行為に走るのでした。さて、この男は、救いようのない駄目人間でしょうか。もう、長い事、この家族を見守ってきた、置物のフクロウが、男に語りかけました。「今のままでいいのだよ。ただ、お前は、今、体の状態がよくないようだ。まず、1日、絶食をして、翌日に、わずかなパンを食べなさい。そうすれば、お前が、いかに満たされているか気づくだろう。」と。男は、それを聞いて、ふとんにくるまり、肩がふるえてました。

(このショートショートは、20%、フィクションです。)

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