臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

土岐友浩作『Chloranthus serratus』を読む

2010年05月12日 | あなたの一首
 毎週火曜日(?)の朝日新聞の夕刊に「あるきだす言葉たち」という、詩歌の新作(と思われる?)を紹介する欄が設けられている。
 去る5月11日の同欄には、『Chloranthus serratus』と題する、かねてよりお名前だけは知っていた歌人・土岐友浩さんの八首連作及び作者の略歴が掲載されていた。
 そこで、取り敢えずは、その記事をそのまま転載させていただきたい。
 私が、マイブログ「臆病なビーズ刺繍」の中に、朝日新聞に掲載された記事を転載させいただくのは、私にとっては、土岐友宏という若手歌人が注目に値する存在だからである。
 しかしながら、その作品は、私が一読した程度で、類い希な傑作として称揚したり、駄作と談じたりすることの出来ない作品であると思われる。
 したがって、本日はそれをここに転載して置くに止め、それについて、私が云々するのは、後日の事とさせていただきたい。


 『Chloranthus serratus』

   葉は、墓のようだ。
ゆるやかに降り出す雨の寄り道の神社
に咲いているつぼすみれ

僕の手を離れて水になっている母を亡
くした春の記憶は

靴ひもを洗ってほどけにくくする小さ
な庭の小さな日暮れ

勘違いしていなければこの上を平沢唯
が歩いた通り

好きな人の文字は大きく見えてくる菜
の花色のフリーペーパー

することがなくてスクリーン・セーヴ
ァーの真似に興じている待ち合わせ

半日を過ごしたころの白色の二人静
(ふたりしずか)の花を見ている

飛び石の道なかほどに沈みゆく 母よ
あなたの死に合わず


 〔とき・ともひろ 1983年、愛知県生まれ。京都大学医学部卒。学生短歌会の友人6人で同人誌「町」を創刊。所属結社なし。〕


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