ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

徹底した従順が最後の勝利

2017-03-27 19:14:28 | 社会
女というものは、自分の姿かたちを悪くいわれると、どんなひとでも怒るものよ、だから・・・、
と愛する二号夫人に入知恵された男が、本宅へ帰って、何といわれても怒らぬし嫉妬
もしない本妻へさっそく難くせをつけた。お前の顔を見ていると、胸がむかむかして気分が
悪くなる、とうとうこんな歌ができてしもうた、といって、

「やきもちはやかねど顔がくすぼりて、鼻はひしゃげて尻はぽってり」

と声高に言った。本妻はこれを聞いてうつむき

「お恥ずかしゅうございます」

といっただけでべつに怒ろうともしなかった。ここで怒らせて、この家を飛び出てくれれば、
二号夫人を後ろへ引き入れることができる、というのが男の魂胆であったが、どうやらそれは
外れそうだ。男はやっきとなって、

「これ、歌を詠まれて、ただお恥ずかしゅうでは礼に反するぞ、返歌をしなさい、返歌が
できねば出ていってもらおう」

男はついに本音をはいたが本妻は歌の心得がないから許してくれという、男はその
弱点をとらえてどうしても許さぬというので、本妻は、ではもう一度その歌を聞かせてくれ、
といい、男が再び朗詠するのを聞くや、

「ありがたや姿笑うて心をば、ゆるし給わる君がなさけは」

と本妻は詠んだ。これにはさすがの男も悪夢が一っぺんにさめ、本心に立ちかえった。

・・・・・世間ではわしのことを嫁いじめの鬼ばばといっとるそうじゃが、ひとつその
鬼ばばをあんたのそのじじょうずな歌に詠んでもらいましょうか、といういじ悪の姑に
対し、税所敦子(さいしょあつこ)は

「仏にもまさる心を知らずして鬼婆などと人のいうらん」

と詠んだ。姑は赤面し以後、敦子にやさしくなったという。

けっきょく、―剛を制するものは反対の柔である―ことを人生の経験は教えている。

─『一日一言 人生日記』古谷綱武編 光文書院より

■柔道の原理「柔よく剛を制す」というのも同じ。柔道は力の原理だが、心の問題
にも応用できる・・・