超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

必要のない強制入院、そのカラクリとは

2008-09-16 18:48:54 | 週刊誌から
健康な人、または入院するほどでもない人が手当たり次第病院に送られていく現実。運が悪いのか、もしくはそのシステムに問題があるのか!?

「強制入院が必要な人とは、幻覚や幻聴が聞こえ、それに操られて『自分は死ななければならない』と思っている人。覚醒剤・アルコール依存症・薬物中毒による幻視・幻聴によって犯罪(ママ)、錯乱している人です」と話すのは、精神科医の笠陽一郎氏。笠氏は上記に当てはまらない人に強制入院が適用されてしまう要因に、精神科診断システムが関係していると推測する。それ以前は、患者と思われる人の育ってきた背景、家族構成、家系にまで遡って精神障害か否かを調べていったが、アメリカの精神医学会が考案した「DSM分類」を全面的に導入して以来、誤診が増えたと言うのだ。これを例えて言うなら、10項目の質問に○×で答えていく簡易テストのようなもの。ある診断基準を満たすと精神疾患だとみなしてよいとされる。症状のみの論理的推察と統計学的要素を取り入れ分類したこのテストによって、診断基準が明確になったと言われるが……
「数々の症状が本当に精神障害から来ているかどうかを、10の質問や数分の問診で知ることは非常に難しい。診断の間違いは私にも他の医師にも起こり得るので、本来は利害関係のない複数の医師に診断してもらうのが最良です」
 実際、診断基準の内容や疾患分類の妥当性については疑問視する声も少なくなく、政治的な圧力に左右されたとも言われており、純医学的概念ではないとの指摘もされている。現場の医師たちも頭を悩ませているようだ。
「自宅にいって生活態度や部屋の様子などを総合的に観察していけば、どちらがおかしいのか初めてわかる」(笠医師)
 さきの事例にもあるように、相談に来た家族の方が精神を病んでいる例も少なくない。
「例えば、○○大学に何としても入学しろと長年子供に強要し、子供が耐え切れなくなってバットを振り回した例がありました。子供側にしてみれば必死の抵抗であり、精神科の範疇には入らない。これを強制入院させるのはおかしな話です」

誤診と高い保険点数、そして……

 また、強制入院の背景の一つには「厚労省が定めた医療点数配分の問題があることは否めない」と言う。本人意思による任意入院の基本額は約30万円。しかしその精神病院が精神科救急医療システムに参加している場合、「精神科急性期治療病棟入院料」扱いで入院すると約60万円、「精神科救急入院料」(スーパー救急=警察関連での強制救急)になると約90万円(すべておよそ1か月の場合)。
 また、たとえ任意入院だとしても、「君は症状が重いから」と言えばスーパー救急扱いとなる。それゆえの「誤診」も多いのではないかと笠医師は懸念する。
 30年以上のソーシャルワーカー歴を持ち、世界各国の精神医療現場を回った滝沢武久氏は、問題の根底には精神医療と治安維持を結び付けてきた歴史が絡むと話す。
「日本精神病院協会が、精神障害者を『平和と文化を妨害する者』として公安上、旧厚労省に隔離を求めた経緯があります」
 その後、国策として病床が増床され続け、医療法特例により精神科医師一人当たりの患者数を他科の3倍とし、民間病院に県立病院機能の代行を求めた。'71年には精神病棟は25万床に達し、そのうち措置入院患者は7万6000人。最新データによると32万4335床中、措置入院は2276人とかなり改善されてきているが、医療保護入院を含めると全体の約4割で12万345人。任意入院でも閉鎖病棟で長期入院している人が多い。(平成17年度精神医療保健福祉資料調査)
「'71年に爆発的に病床が増えた理由の一つは国の財政事情が良く公費が優先されたこと。その大義は事故・事件の予防措置としての予算確保が政治家から要求されたからと聞いたことがあります。『危険な』精神障害者は公費で隔離しろということ。そうして、精神障害者を隔離する風潮が定着した。世界ではベッドを減らす方向に動いているのに。そこに、入院させた方が儲かるという民間病院の企業論理が絡む」
 手続き上の欠点もある。警察通報・判断による保護の場合、鑑定期限は保護後24時間以内。だが鑑定医を探すうちに多くがタイムリミットを迎え、結果的に病院送りとなるのだ。
 病人でなくとも、強制入院。荒唐無稽な話に見えるが、その器が存在することだけは確かだ。


強制入院のしくみ

精神科医⇒診断
⇓診断結果が居住都道府県の首長へ
首長 入院決定!⇒入院
司法↔医療 境界線はあいまい

対象者
精神障害のため、自分自身を傷つけ、他人に害を及ぼすおそれのある者
(医療保護入院の場合)
精神障害のため、医療および保護のため入院を要すると精神保健指定医に診断された者。この場合行政は介入せず゛、医師の判断と保護者もしくは扶養者の同意があれば入院させることが可能


精神科入院に伴う病院収入

本人が進んで病院に来た場合。精神科入院は本人に説明をして、同意を得ることを基本としている。原則として開放病棟に入るが、本人が同意をした場合には、閉鎖病棟への入院も差し支えないとされている(任意入院) → 30万円

精神科病院が精神科救急システムに参加している場合、「精神科急性期治療病棟入院料」扱いで入院させることができる。本来、精神症状が悪化した「急性期」の集中治療が必要な人に適用される → 60万円

病状が極度に悪化し速やかな治療が必要とみなされた人が対象。家族の申告、または警察官通報によって「精神科救急入院料(ママ)」に運ばれた場合に適用される(スーパー救急) → 90万円


代議士秘書 滝沢武久氏
代議士政策秘書、精神医療福祉モニター。30年以上のソーシャルワーカー、家族に患者を持った体験から精神医療への提言を行う

医師 笠 陽一郎氏
的確な診断および処方を行うためのセカンドオピニオン受け入れや、精神科往診を行う。精神病者サポート活動も

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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1 コメント

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悪がはびこる世の中なんですね>< (美樹)
2012-07-21 10:15:05
去年の秋から冬にかけて1か月、弟の盗みを指摘したことでひどい暴力を受け、殺されかけたため、警察を呼んだが、あざだらけなのに怪我の手当ても受けさせてもらえないまま、私は精神科に強制入院させられました!!!「人殺し!警察呼んで!」という声が近所迷惑だから、病院に入ったんだということです。警察が怖くて、母は強制入院に同意してしまったそうです。
弟は無罪放免です。私が退院後も、前と変わらず、私のものを盗んでは破棄してます。「警察はオレの味方だから、キチガイを殺しても、逮捕されないんだ。キチガイを殺せば、ババーの財産は全部、オレのものだし、キチガイから借りてる借金も帳消しだ!」とあざけ笑ってます。

精神科での1か月は苦痛そのものでした。興奮もしていないのに、精神安定剤と協力な睡眠薬を1か月飲まされ続けました。退院後も病気でもないのに、「病気が治らないから、仕事はしないで、月1回、通院しなきゃだめだ.急に薬を飲まなくなると、身体に悪影響を及ぼす」と薄気味悪く言われ続け、1回は母に免じていきましたが、それ以降は行きませんでした。が、いたって、健康です。
お金が絡んでいるとは思っていましたが、
この記事を読んで、強制入院のカラクリがよくわかりました。
恐ろしい世の中ですね。正義の味方の警察がお金儲けの精神科救急入院料と組んでいるんじゃ・・・
たとえ、殺されそうになっても、警察だけは呼ばないことにしました。病気扱いされて、辛い入院生活させられるくらいなら、死んだ方がましです。

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