超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

中村うさぎ この国の復興のために「宗教法人、税金払ってよ」

2011-07-14 02:11:04 | 週刊誌から
国におカネがない。震災復興のために、所得税や法人税の増税も検討されている。もし、「人の心を救う」のが宗教法人の本当の役目ならば、今こそ力を貸してほしい。国も、真剣に考えてみてはどうか。

 宗教法人の活動について、忘れ難い思い出があります。十数年前のこと。荻窪の駅前で地味ぃーな女の人に「変化の相が出ています」と呼び止められました。面白そうだったのでついて行くと、たどり着いたのは統一教会系の施設。そこで、あなたの先祖は人殺しだのなんだのと散々なことを言われ、案の定、数珠を売りつけられそうになったんです。
 値段は40万円。なんでも私のご先祖が決めた値だというのですが、当時の私はまさに買い物依存症のピーク。「おかしいなあ、ご先祖ならおカネがないのはわかっているはず」とクビを傾げると、25万円に下がり、もう一度傾げるとまた下がった。これを繰り返していたら、「4万円。ご先祖様がこれ以上ビタ一文負けるなとおっしゃっています」とため息をついたので、腹がよじれそうでしたよ(笑)。
 結局、数珠は購入したもののクーリングオフしてしまいましたが、消費者センターの人が「4万円は安い。そこまで値切ったのなら、なぜ買ってしまったんですか」と驚いていました。ほとんどの人が60万~200万円も払っているそうなんです。いったいどれだけ儲けているんだ。
 後に、宗教法人の活動は非営利なので税金を払わないと知ったのですが、どこが非営利なのかと腹が立った。数珠を購入したのは信者ではなく、明らかにキャッチセールスで引っかかった人たちでしょう。キャッチセールスの良し悪しはともかく、営利活動ですよ。
 これが、宗教法人が非課税であることがいかにおかしいか、私が身を以て体験したことでした。

 現在日本に存在する宗教法人は18万超。これらが行う祈禱や神棚の販売といった宗教活動は非営利とされ、収入を得ても課税されない。この優遇措置について、最近、自らが司会をするテレビ番組で疑問を呈したところまったく無視されてしまったという作家・中村うさぎ氏に話を聞いた。

 コトの発端は先月、私が司会をしているCS放送の番組『ニュースにだまされるな!』(朝日ニュースター)でのできごとです。現役閣僚や大学教授といった錚々たるたるゲストを迎えて、この日は東日本大震災の復興ビジョンについて、あれこれご意見を伺っていました。
 番組では復興財源について、侃々諤々の議論に。そこで私は、素朴な疑問を投げかけてみたんです。
「この際、宗教法人非課税というのを見直してみたらどうなんでしょうか」
 これは日頃から思っていたこと。この国は震災前から不況にあえいでいるので.あって、民主党政権になれば、自民党だか官僚だかによって隠され続けてきた「埋蔵金」が白目の下に晒されるという触れ込みでした。然るに、この国難にあっても出てこないところを見ると、埋蔵金なんてなかったんだと思います。本当にこの国にはカネがないわけ。だとすれば、宗教法人にも税金を払ってもらおうよ。そもそも宗教は人を救うために存在しているんでしょ。

 宗教活動にまつわる収入が非課税であることに加えて、宗教法人にはさまざまな税制上の優遇措置が取られている。
「宗教法人が飲食業や運送業などの収益事業を行った場合、宗教活動以外のそれら収益事業で収入を得た場合でも、その税率は22%と、一般法人より8%も優遇されています。さらに固定資産税、不動産取得税、都市計画税、法人事業税なども非課税なのです」(ジャーナリスト・山田直樹氏)
 すべての宗教法人に収支報告書を出す義務があるわけではないので、その財務状況を把握するのは極めて困難である。だが、すべての宗教法人に対して、税制優遇措置を廃止し課税すると、「推計で約4兆円もの税収が見込まれる」(山田氏)というのだ。

 だけど、この質問は一笑に付されてしまった。番組終了後、ゲストの一人に「その問題には触れないほうがいい。脅迫状とか来て、怖い目に遭いますからね」と諭すように言われ、あ然としました。私の質問がスルーされたのは、答えるに値しないものだったからではなく、怖いから……!?
「宗教法人の支持を失うと困る政治家は、なにも公明党や幸福実現党だけじゃない」と教えてくれる人もいました。政治家にとっては票田であり資金源であるから、こと宗教法人に関してはアンタッチャブルなのだというんです。
 仕返しが怖いから'とか、政治家の保身とか、そんな理由で宗教法人は優遇され続けているのか。なんてこった。そこで、「そんなの許せない!」と週刊文春のコラムに怒りをぶつけたわけです。
 早速、反響がありました。幸福の科学の広報局と読者の方からの記名の封書、ほかに無記名のものが何通か。
 手紙の封を切るときは、ビクビクでしたよ。「怖い目に遭いますからね」のひと言が蘇ってきたりして……。
 ところが、手紙の内容は私が怒りをもってぶつけた疑問に対し、あくまでも「私どもの見解」としたうえで、丁寧に答えてくれている。うれしかった。同時に反省もしました。私が差出人の名にビクビクしたのは即ち、宗教に対する偏見があったということなのですよね。
 宗教法人非課税について幸福の科学の見解は、まず、①憲法によって保障される「信教の自由」を根拠に挙げています。第20条ですね。宗教活動に課税するとなれば、その活動は税務調査、査察の対象となり、当局の監視下に置かれることになる。それは国家権力の介入、宗教弾圧になり、すなわち信教の自由を侵害することになる。そうならないように非課税にしているというものでした。
 次に、②「公益性」。宗教活動は教育や医療と同様に公益活動であるから、国家が保護する必要がある。「例えば、マザー・テレサが集めた寄付に対し『高額だから』という理由で課税することが善であるかどうか考えると、公益活動の保護の必要性がご理解いただけるかと思います」ということなのですが……。
 また③宗教活動にはそもそも課税の対象となる“所得”が存在しない。利益が上がってもそれは儲けではなく、事業遂行のための資金になるのだそうです。
 ①~③について、なんとなく知っていたこともあったのですが、改めてこれを読んで納得したかというと、やっぱりまだ腑に落ちないんですよね。
 まず、①「信教の自由」が侵害されるという論理については、日本でも戦前、治安維持法を盾に宗教弾圧があったことは承知してます。決して繰り返されてはならないことだけど、「税務調査、査察が国家権力の介入、宗教弾圧になる」というのは、それはどうなんでしょう。その理屈からすると、税金を納めている人はみな、弾圧されていることになってしまわない?

 はばかりながら、私も納税者ですよ。転居するたびに、それぞれの区役所やら税務署やらと税の徴収をめぐるバトルを繰り広げてきたけれど、弾圧なんかされていないし、いかなる自由も侵害されていない。法人税を納めている企業にしても、査察が入ることはあっても、弾圧されているわけではないですよね。
 税金って嫌なもの、できれば払いたくないものだけれど、払う意義はあると思う。まあ、税金を払え、払わない、で私とバトルを繰り広げてきた税務署にしてみれば、「お前が言うな」と返されそうですが。
 だって、税金を納めた人は、税金によって守られているところもあるし、また、その使い道について意見を言う権利がある。私、都庁がライトアップされたときなんて、ツイッターで「都民税をそんなことに使うんじゃない」と激怒しましたよ。
 次に、②公益活動を国家が保護する必要性について、「マザー・テレサが集めた寄付に課税することが善であるかどうか」を考えればわかるだろうというのは、……わからない。
 宗教法人が得る収入はすべて人々からの寄付であるという物言いにこそ、問題の核心があるように思うんです。これは③宗教活動にはそもそも課税の対象となる“所得”が存在しない」という見解とも絡んできますけど、私のにわか勉強によれば、公益法人は収益事業にのみ課税される。つまり、収益事業でなければ課税されないんですよね。
 となると、宗教法人の場合、なにが非収益事業でなにが収益事業なのか、問題はその線引きですよ。
 結論から言うと、ほとんど線引きは要らない、ということになるらしいじゃないですか。お守り、絵馬、おみくじ、拝観料、そしてお布施、戒名料、墓地使用料に結婚式(神前・仏前)……、すべて非収益事業だというのですから。
 幸福の科学が言う「宗教活動には課税の対象となる“所得”が存在しない」なんて、ものは言いようだと思う。そうではなく、なにをしても「課税の対象となる“所得”にならない」ということじゃないの?
 信者であろうとなかろうと、お守りを買ったり拝観料を払ったりしますけど、それは販売ではなく喜捨行為、つまり進んで寄付したとみなされる。じゃあ、それならなぜ、値段がついているのか?

 幼い頃、私はよく教会に献金していました。たとえば、教会が雨漏りするから修繕費用に充ててほしいなと。とはいっても10円とか100円でしたが、お小遣いの一部を献金箱に入れるんです。こういうことが喜捨行為ってものでしょう。
 お布施や祈禱料も、お経をあげてもらったり、祈禱してもらったりした対価を支払っているつもりでいる人が多いはず。喜捨だと思って払っているわけじゃないですよね。
 というわけで結局、幸福の科学による宗教法人非課税の説明には、合点がいっていないんです。
 読者の方の意見にも触れておくと、「宗教活動はサークル活動」説というもの。つまり、志を同じくする者たちが会費を出し合い、寄付を募り、お布施を集めて活動しているのだから、自由にさせてあげなくてはいけないというんです。
 この説に対し、私はこう考えます。たとえば、マンガ好きが集まっておカネを出し合い、同人誌をこしらえる。これはサークル活動であって、課税のしようもないでしょう。でも、その同人誌を同人誌即売会で売るとなれば、課税の対象になる。サークル活動も規模が大きくなれば、営利活動とみなされ、税務署が目を光らせますよ。
 宗教活動も始まりは小さな集まりだったかもしれない。でも、宗教法人格をもった宗教は明らかにサークルのレベルではないですよ。
 この読者の方はまた、いくら困難とはいえ、人の心を救う活動に、税務署も個人も手を突っ込んではいけないとも主張されています。
 でも、人の心を救う活動に税務署は手を突っ込んではいけないというのは、いかがなものでしょう。
 たとえぽ精神科医はどうなの。まさに、人の心を救う仕事でしょう。占い師に教われる人もいるし、私の本に救われたという人もいるんです。言うまでもなく、精神科医も占い師も私も、税務署に収入を申告し、税金を払ってます。
 フーゾク嬢に救われる男たちだって確実にいますよ。彼女たちも給料制で働いている以上は、店を通して納税しているんだから。
 同人誌を買うファンも、信者みたいなもの。作者を応援したくて、まさに喜捨する思いで買っているけど、税制上は当然、喜捨行為にはなりませんよね。
 何に心を救われるかは人それぞれ。救われる人にとっては、医者、占い師、本やマンガ、あるいは好きな女が、いわばその人の宗教なんですよ。何が喜捨行為か、決めるのはカネを払った人の思いでしょ。
 確かに、そういう人の思いに、ここからは課税するという線を引くのは難しい。でも、払った人は喜捨のつもりでも営利行為になり、喜捨したつもりはなくても喜捨行為になってしまうのであれば、いっそのこと、カネが支払われたらすべて営利行為であるということにして課税すればいいと思う。そのほうが、フェアってものでしょう。私はフェアであるということはとても大事だと思うんです。
 私は宗教法人がけしからんと言っているわけではないし、ましてや宗教に心を救われる人たちがいけないなんて、これっぽっちも思ってません。むしろ尊重するものです。ただ、非課税に納得できないだけなんです。
 だからもう一度言います。震災復興の財源がないのなら、この際、宗教法人非課税というのを見直してみたらどうなんでしょうか。

週刊現代2011年7月9日号

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7 コメント

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同感 (さくら)
2011-07-24 14:51:39
心のそこから大賛成です。
ずっと前から、同じく合点がいかない問題でした。
団体自らが「課税を」と申し出ないなんて、
「人々を救う」ということを大義名分にかかげているのに
矛盾していると、あの日からずっと感じています。
もっと声高に訴えてくれる人がテレビにも
出演してくれないものでしょうか。
ラジオでちょこっと言ったくらいで何ヶ月も
干されるような怖い団体相手では無理でしょうか。
悲しいですね。
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日本でベンツに乗ってる (rabbit125cc)
2011-09-23 11:44:17
主な奴ら・・・
医者と坊主とヤクザ

共通点は・・・
税金をまともに払ってない

※医者は、開業医ね^^;
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課税すべき (井上 正孝)
2012-01-30 00:08:54
宗教者への非課税は不合理。奈良時代には非課税特権を得んが為、(僧侶)僧職になろうとする人が後を絶たなかったと言います。それが千年以上も続いていることに苦笑を禁じ得ません。宗教者も市民であることに変わりありません。税金の恩恵に与かっていることは言を待ちません。      以 上
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まずは預金に課税 (課税なき団体が宗教)
2012-03-10 16:42:23
簡単に宗教法人が作れること、悪いことをしてもかんたんにとりつぶせないこと。変ですね。
銀行などの預金を源泉徴収ぐらいは、早速始めて欲しい。
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ぜひ課税を (marumaru)
2012-10-18 13:06:14
 道路・清掃事業・環境などインフラの使用量の負担ぐらいはしてもいいように思う。
 ですから、一律1%でもいいから金の動きをつかみ宗教団体としてどのように運営されているか把握すべきでしょう。

 また、固定資産税などの非課税も撤廃すべきですね。


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それでは (リリー)
2012-11-04 21:31:53
まず、固定資産税が一番税金の取れる源泉ですから、都会の一等地にある寺社仏閣から潰れていきますね。
関東なら明治神宮、靖国神社。関西なら清水寺や八坂神社などがその土地評価額に相応する膨大な税金で立ち行かなくなり観光は大打撃を受けるでしょう。
あ、鎌倉仏教に代表される各宗派の本山、つまり大きな包括宗教法人も多額の税金の支払いの為に末寺にたっぷり上納金を請求。檀家はその支払いを拒絶して「どこに葬式や法事を頼んだらいい?」と「お寺難民」になるか泣き寝入りでガッポリ取られるか、そのどちらかなので宜しくお願いします。
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Unknown (Unknown)
2013-02-11 05:16:04
葬式の度に何十万とか払ってきたが、坊主に救われたと思ったことなどない。
こんなの一円でいいなと思いつつ、周りに馬鹿にされるのが怖いから怒りを抑えて払っているのだ。
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