超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

聖カタリナ学園高野球部暴行 加害元1年部員も被害 学校と校長 損賠提訴 「上級生から日常的」

2023-11-09 04:52:40 | 新聞から
 2022年5月に聖カタリナ学園高校野球部寮で起きた集団暴行で、加害者とされた元1年生部員7人が、暴行は上級生の命令で自分たちも日常的に被害に遭っていたなどとして、学校法人と校長に損害賠償を求め提訴したことが26日、分かった。元部員側は「学校は背景を把握しながら十分調査せず、大会出場に影響が及ばないようトカゲの尻尾切りで収束を図った」と主張している。

 同校は愛媛新聞の取材に「裁判に関することでお答えできない」としている。
 原告代理人の弁護士によると、提訴したのは同校が設置した第三者委員会の調査で加害者とされた1、2年生計9人のうち7人で、1人は上級生らから暴行を受けていない。7月に大阪地裁に提訴し、学校側の申し立てで別の民事訴訟が係争中の松山地裁移送が決まった。弁護士は「原告は暴行を心から反省している」とした上で、提訴理由を「自分たちがされ、傷つけられたことに学校が向き合ってくれず理不尽という思いや怒りがある。野球部の実態や原告らが被害者でもあったことを、はっきりさせたい」と説明している。
 訴状によると、寮では日常的に暴力行為が行われており、原告6人は同年4月に入学して約2カ月間、上級生らから繰り返し暴力を受け、ほかの1年生が校則や寮則に違反すると身代わりにされることもあった。グラウンド整備ができていないとして原告を含む1年生3人が3年生から約2時間にわたりバットのグリップエンドで計60回殴られたこともあり、この暴行は学年主任の教諭も把握していた。殴る回数はスマートフォンのルーレットアプリで決められるなどしていた。
 暴力加害者として処分を受けた経緯について、同年5月18日に1年生部員の校則違反について当時の部監督から相互に注意を促すよう指示があり、スクールバス内で上級生から「ルール違反したからやっとけよ」と暴行を命令されたと主張。原告らは寮の部屋で校則違反した部員を暴行し、別の問題を理由にほかの部員にも暴行した。さらに寮則違反をした別の部員を注意している際、部屋に来た2年生に「お前がやらなければお前らをやる」などと言われ、一緒に暴行した。
 寮則違反の生徒は病院で肩打撲などと診断され、学校側は緊急保護者会を開催。同月末、学校側は原告らの保護者に来校を求め、口頭で退学を勧告した。原告らは撤回を求めたが転校を余儀なくされた。
 原告側は、原告を暴行した3年生は退学勧告を受けず、21年11月にあった別の暴行事案の加害部員は停学にとどまっているとし「原告らへの処分は公平性を欠く」としている。
 学校が第三者委調査結果を受けて同年11月にいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」として県に報告したことに関し、原告側は自分たちの被害についても同委設置を要求したが「学校側は暴行事実は確認できなかったとして応じなかった」と指摘している。
 22年5月の集団暴行では、寮則違反を理由に暴行された被害部員は、後遺症で野球を断念せざるをえなくなったなどとして学校や部関係者、暴行に関与した元部員6人を相手に、損害賠償請求訴訟を松山地裁に起こしている。

3年生の暴行 学校把握か 原告側 指摘

 聖カタリナ学園高校野球部の2022年5月の集団暴行について、同校は同年6月に「3年生はトラブルに一切関与していない」と日本高野連に報告し、3年生のみで全国高校野球選手権愛媛大会に出場した。大阪地裁に提訴した原告側は、学校はその時点で3年生による暴行の可能性を知っていたとし「把握している事案はすべて報告すべきだったのに、大会出場を優先するため3年生の事案を伏せたのでは」と指摘する。
 同校は愛媛新聞の取材に「野球部での暴行については全て高野連に報告している」と隠蔽(いんぺい)を否定した。
 訴状によると、同校は原告らの事情聴取で3年生らの暴行を把握しており、原告の1人は同年6月1日に退学勧告を受けた際、学年主任教諭に上半身あざだらけの原告の写真を示し「3年生から殴られた」と訴えた。学校が設置した第三者委員会の調査に協力した保護者は、同年8月に行われたリモート面談で、上級生らからの被害を訴えようとしたが「調査対象ではない」として説明を遮られたなどとしている。


上級生らから暴行を受け多数のあざができたとする原告の1人の胸部(2022年5月に本人が撮影)


訴えで原告らが受けたとする暴行

 【原告A】
 2年生①から日常的に寮やスクールバスで胸などをつねられ、あざだらけだった。
 2年生②から、ほうきで何度も殴打された。
 【原告B】
 3年生①から寮の風呂で拳骨で殴打された。
 2年生③から日常的に寮内や学校で、すれ違いざまに腕や胸をつねられた。
 2年生①から寮則に違反した1年生の身代わりとして拳骨やバットのグリップエンド、スマートフォン、ゴムチューブなどで殴打された。
 【原告C】
 1年生①から2022年5月初旬、寮で胸を10発程度殴られた。
 土下座した状態で後頭部を3年生②にバットで殴打された。
 【原告D】
 原告Eと共に、1年生の叱られ役として日常的に暴力を受けていた。
 4月後半、外野グラウンドの整備ができていなかったことを理由に3年生2人から寮の部屋で2時間にわたり、原告Eとともに土下座した状態でバットのグリップエンドで頭部を殴打された。
 【原告E】
 入寮後2日目から2年生①から寮内で暴力被害を受けた。個々の暴行の時期を特定できないほど頻繁で、他の1年生のミスや気に入らないことがあれば3年生③らから暴行を受けていた。
 2年生①からつねられる、缶をくわえさせる、携帯電話の角で殴打される暴行を受けた。
 3年生③からバットのグリップエンドで殴打された。
 3年生④から胸などをあざができるほど強くつねられたり、理由もなく殴打されたりした。
 【原告F】
 2年生①から、5月初旬から校内で複数回つねられ、あざができた。室内練習場でふざけていたことを注意され、太ももを複数回蹴られてしばらく歩くのが困難になった。ほかの1年生が朝の点呼に来ないことを責められ、頭をげんこつで強く殴打されたことが2回あった。
 2年生②から5月初旬以降、校内で複数回にわたってつねられた。練習試合にスマホを持って行ったことを注意され、げんこつで頭を強く殴られた。

愛媛新聞 2023年10月27日
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

聖カタリナ高野球部暴行 「学校が被害矮小化」 元1年部員 保護者 民事訴訟を検討

2023-11-04 03:12:24 | 新聞から
 聖カタリナ学園高校(松山市)が、2022年5月に野球部寮で起きた暴行を県高野連に1年以上報告していなかった問題で、被害者の元1年生部員と保護者=近畿在住=が「学校は聞き取りなどを十分せず、内容や経緯を矮小(わいしょう)化した」と訴えていることが2日までに分かった。保護者は愛媛新聞の取材に、特にひどい暴行や嫌がらせを受けたのは別の集団暴行で部活動が停止していた時期だったと明らかにし、学校の管理監督や対応が不十分だったなどとして民事訴訟を検討している。

 同校は取材に「保護者の申し出を受け、できる限りの調査をして確認した事実をお伝えした」とし、県高野連にも同様の内容を報告したと説明。事案の詳細や加害生徒への処分内容は「プライバシーに関わる」と明らかにしていない。
 野球部については、同年5月と21年11月に集団暴力があったと結論付ける学校の第三者委員会の報告書概要が22年11月に公表され「暴力行為が当たり前の空気感となり、罪の意識が希薄になっていた」と指摘された。今回問題となっているのはこの2件とは別の当時の2年生による暴力で、日本学生野球協会が今年10月中旬に野球部部長の教諭を、事実を把握しながら報告が遅れたとして3カ月の謹慎処分にして公になった。関係者によると、被害部員保護者から公にしないよう要望され、県高野連に報告していなかった。
 元部員の両親によると特にひどい暴行、嫌がらせがあったのは22年5〜6月で、元部員に知らされた母親が同6月17日、学校側に電話で相談。当時の部は暴行問題で全国高校野球選手権愛媛大会出場が危ぶまれていて、元部員が「3年生に迷惑をかけたくない」と考えていたこともあり、母親も「公にしないほうがいいと思う」と伝えた。学校から同日、3年生のみで出場すると保護者に一斉連絡があった。
 元部員は適応障害と診断され自宅で療養。同年8月に当時の副部長と担任の2教諭らが自宅に聞き取りに訪れた際、被害を伝えたが調査に関する連絡はなかった。元部員は寮に戻ったが学校にも通えなくなり、同年12月に自主退学。両親は今年8月下旬、学校に調査や関係者の処分をあらためて要望し、9月中旬に校長名の「ご連絡いただいた件について」と題した1枚の文書が郵送されてきた。
 文書では調査結果として当時の2年生2人に「元部員に頭をたたかれるなどしたので体をつねり、首も2〜3回絞めたがそんなに強く絞めたつもりはない」「元部員がちょっかいをかけてきたのでマスクにペンで線を引いた」などの事実が認められたと説明。それぞれ単独で計画性はなく、2人を厳重注意処分としたとしている。元部員に非があるともとれる内容に、両親は「先輩に手をあげられるわけがない」と反論。回数や強さが過小に認定され、ほかの上級生も関与していたと主張している。
 また在校時に副部長立ち会いの下、父親が加害部員2人や保護者と面談し「子どもが野球を辞めることになったら君たちも辞めてくれ。1人の野球人生を奪うことを受け止めて」と求め、2人も応じたが今年の大会に出場したと指摘。学校側は同文書で「当事者間のことで、本校として介入できない」と答えている。
 文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、被害生徒や保護者が公表を望まない場合でも、再発防止や新たな事実確認のため検証などをするよう義務づけている。

部活継続願い説得 自責 両親

 元部員の両親は、当初は学校側に問題公表を望まなかった理由を「何とか野球を続けられないのか、公になることで部への処分が重くなり、戻ったときに大会に出られないのではと思った」と語る。一方で母親は「息子の心は本当に壊れていた。どれほどもがき苦しんできたのか。どうすればよかったのかと毎日自問自答している」と自責の念にさいなまれている。
 両親によると2022年6月10日、初めて元部員から母親へのLINE(ライン)で2年生に暴力を受けていると明かされた。やりとりは毎日続き、17日午前2時ごろに電話中、息子が部屋で物に当たっているような気がして「ただ事ではない」と感じ、朝一番で学校に電話して当日のうちに寮を出るようにさせた。
 元部員は自宅で約2週間療養。寮に戻ろうとしたが電車内で動悸(どうき)と過呼吸でパニック状態になり、三つ手前の駅で歩いて寮まで行ったが4日後に再び自宅に戻り、適応障害と診断を受けた。
 それでも両親は学校に調査を求めず、自主退学を決めるまで約5カ月間、何度も「辞めたい」と言う元部員を思いとどまるよう説得した。母親は「やっぱり野球を続けてほしいと願っていた」と振り返り、部関係者の話で戦力として期待されていると感じ「乗り越えれば明るい未来が待っていると思った」と話す。
 学校を辞めた後、家庭では愛媛の話題はせず、学校側ときちんと話そうという気持ちも薄れていった。しかし3年生となった加害者が大会に出場していると知って今年8月、電話で学校側に問いただして調査を求めた。郵送された回答文書について両親は「加害者の一方的な言い分で、紙切れ1枚だけ。ばかにしているのかと思った」と憤る。
 元部員は今でもグローブを大事に手入れし、バットで素振りを続ける。「問題を起こした選手が表舞台に立ち、何もしていない選手が辞めさせられるなら、高校野球なんてつぶれてしまえばいい」とつぶやく父親。一方で「こういうことがどこの学校でも二度とないようにしてほしい。私たちが話すことがそのきっかけになれば」と力を込めた。


元部員が自宅療養から学校に戻った2022年7月上旬の母親とのLINEのやり取り(保護者提供)

      とりあえず普通に野球して普通に学校
      行ってみ
   既読
   0:33 誰も信用しなくていいよ

 信用出来ひんから学校も行かれへんね
 んて                0:33

 練習もしたくないし 0:34

 人に会いたくないねん 0:34
      
   既読 どっちにしても一回クリアしないと前
   0:35 には進まれへんよ

 クリアするまえに死んでまうわ 0:35
     
   既読 また同じようなことしてきたらその時
   0:35 は迎えに行くから

 するしないの問題じゃないんよ 0:36

 目合うだけで心臓バクバクなるし過呼
 吸なるしでこっちはしんどいねん   0:36

 そんなやつと練習出来るわけないやん 0:36


「死のうかとまで考えた」 甲子園 断たれた夢

 「楽しく野球をしている2人を見て、ばかにされていると思った。こっちは死のうかとまで考えたのに」―。2022年12月に自主退学を余儀なくされた元1年生部員は自殺を考えるまで追い込まれたと吐露し「野球を続けたかった。甲子園のためだけにやってきたんで」と涙をこらえる。
 元部員は中学時代、甲子園を夢見て野球漬けの日々を過ごした。21年春の甲子園に初出場した聖カタリナ学園高校に意気込んで進学。実力を認められて間もなくトップチームに入り、練習などを通じて上級生と話せる関係になった。用具片付け忘れなどがあるとバットのグリップエンドで頭を叩かれる「罰」を受けることもあったが「自分が悪いことをしたので。それが野球部という感じだった」と納得していた。
 ただ4月末の「罰」は違った。グラウンド整備をしなかったことでほかの1年生2人が寮の部屋で上級生5人の前で土下座させられ、グリップエンドで約2時間たたかれ続けた。元部員も偶然居合わせ「お前も受けて助けたれよ」とたたかれた。元部員は1年生の1人はトイレに駆け込んだとし「軽い脳振とうのような感じで吐いていたのに『お前大丈夫や』と言われ、連れ戻された。2人とも(暴行で)頭が真っ赤で、やり過ぎだと思った」と表情を曇らせる。
 元部員は3年生には、校則違反をしたときにかばってくれたこともあり「かわいがってもらっていた」と今も感謝している。一方で2年生には「何の理由もなくただ笑いながら、理不尽に暴行や嫌がらせをしてきた。絶対許せない」と語気を強める。
 寮の浴場では複数の2年生から熱湯をかけられたほか、数人がかりで溺れる寸前まで浴槽に沈められ「死ぬかと思った」と回顧。髪の一部をバリカンで刈られそのまま登校するよう強要されたこともあった。ほかにも日常的に胸を強くつねられる、肩を殴られる、飛び蹴りされるなどされ、何度も背後から首を絞められ失神しそうになり、スマートフォンの暗証番号を教えるよう脅されて個人情報を見られたとも証言する。
 元部員は、22年5月に別の集団暴行の加害者として退学勧告を受けた1年生のうち6人も、同様に2年生から暴行を受ける「的」だったと指摘。6人の転校後は自身に暴力が集中し「集団暴行で大会に出られるかどうかの時も『こいつやったら言わんから大丈夫や』と笑いながら言われた」。
 療養中、複数の1年生部員からLINE(ライン)で「自分が次されるんじゃないかと怖くて言えなかった、ごめん」などと謝罪されたという。親の「続けてほしい」という気持ちに応えようと寮に戻ったが気持ちの浮き沈みが大きく、練習や学校を休みがちに。食堂で同席した部員が別のテーブルに行くなど「避けられている」と感じるようになり、退学を決めた。
 「中学時代の友人からスタメンになったとか聞くと、自分も甲子園に出たら『おめでとう』と言われたのかなと考える」と漏らす元部員。「高校野球は戻ってこない。3年間でどれだけ成績や記憶を残せるか。自分には一番の華で、プロより魅力的なんです」


聖カタリナ学園高校を自主退学した元野球部員のバットとグローブ


愛媛新聞 2023年11月3日
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする