超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

茨城空港・上海往復4000円ポッキリ 初登場!中国「スーパー激安航空」に乗ってみた

2010-08-05 00:34:49 | 週刊誌から
7時間遅れでもカップ麺ひとつ、機内で車、不動産販売…

 唯一の国内定期路線(スカイマーク神戸便)がわずか四カ月で撤退する茨城空港に、七月二十八日に新たなエアライン「春秋航空」が就航する。
 超格安が売り物という春秋航空だが、実は、中国国内でも苦情頻出の曰くつきの会社だというのだ。

 このたび、就航する上海―茨城便は、同社にとって初めての国際便。予定では上海との間を月・水・土の週三便運航。当面は二カ月間のチャーター便で、上海からの団体ツアー客を運ぶが、一~二割は日本向けにチケットが売られる予定。
 王正華社長は、最も安いチケットで往復四千円程度(座席・時期などによる)から販売するという構想を語っている。
 これまでも春秋航空は、たとえば上海―青島問で、他社の二百七十元から六百六十元(約三千五百円~八千六百円)に対し、九十九元(約千二百九十円)の激安チケットを発売してきたが、問題なのは、その運航状況。「すぐ遅れる」「サービスがひどい」とのトラブルが続出しているのだ。
 そこで、茨城進出を前に、中国で実際に搭乗してみた。乗り込んだのは上海―昆明便。エアチケットはスーパーのレシート並みの紙質、出発ロビーも上海虹橋空港に新築された新ターミナルではなく、古めかしい「旧ターミナル」と、早くも格安感満点である。
 そもそも、この春秋航空の場合、飛び立つまで気が抜けない。過去には夜九時台の便が七時間も遅れ、乗客は翌朝四時まで空港に取り残されるも、チケットの返金もなく、与えられたのはカップ麺ひとつだけ、という「事件」も起きている。
 早朝便に乗るべく無料送迎パスをネット予約したものの、指定された乗り場にとうとうパスすら来なかった、という前例も。
 また別のケースでは、払い戻し拒否に怒った乗客八十人が抗議のため空港に居座るも、無視して飛行機は出発、警察トラブルに発展した。それでも春秋航空スタッフは「安いのにはわけがある」と反省の色はまるでない。
 遅延の主な要因は、同社が運航スケジュールに対して充分な機体数を保有していないこと。少ない機体をフルに使いまわすので、上海と目的地をその日のうちに往復するために、着陸後一時間以内に、お客を乗せて再び離陸というタッチ・アンド・ゴーのような強行スケジュールも組まれている。機材メンテは大丈夫なのだろうか。
 今回はわずか四十分の遅延に留まり、胸をなで下ろすが、乗け込んだエアパスA320の機内を見まわすと、新たな不安が。

 どうやらこの機体、相当な「ベテラン」らしく、一部の座席ポケットが破れ、シートは客の落書きだらけ。イヤフォンジャックとボタン類は動かず、テレビも消えたまま。トイレの便器は塗装が剥がれていた。全席エコノミーで座席間隔は狭く、メタボな客なら腹にテーブルが食い込む。
 離陸し安定飛行に入ると、今度は機内販売の嵐だ。CAが大音量のハンドマイク(しかも音が割れている)で「ジャパネットたかた」風にまくし立てるため、眠れない、休めない。いわば“空飛ぶ監禁商法”状態で、乗客が「休ませろ」と抗議文を連名で突きつけたこともあるという。
 最前列には機内販売時に一時的に商品を置くため、乗客が席に座ろうとすると、「座るな」とCAに注意されていた。乗客よりも商品が大事? 「販売時間終了まで残り三十分!」「残り二十分!」と畳みかける売り声は、まるで「競り市」だ。気流が乱れてシートベルトサインが点灯しても、CAは販売を続行する。
 しかも売られている商品がまた問題。中国メーカー「POVOS」のシェーバー(百九十九元)は「日本直輸入」と紹介され、ディズニーの水筒(三十元)については、「偽物かどうか心配な方、ご安心ください。中のステンレスは韓国製です」とCA。いや、そういう問題では……。後日、メーカーサイトで確認してみたが、この製品は見つからなかった。マッサージ枕の宣伝文句は「(飛行機が)五時間、十時間遅れたときに大活躍!」って、もはや開き直りか。おまけに「二百元が百元に!」と強調するが、ネットでは二十八元で売っていた。
「皆さんの向かう昆明は暑いので水筒が活躍します」(この時期、昆明は涼しい)
 等々、微妙な嘘も交えて売りまくる一方で、食事や飲み物のサービスはゼロ。全て有料で「午後の紅茶」六元、「味つきゆで卵」二元と市価の二倍。インスタントのお茶は四十元で、市価の四倍もする。
「飛行機を飛ばすだけでは儲からないから、販売をしている。売上高の七%を販売が占める」という同社は、今年中には、不動産や自動車の機内販売も始めるという。
 さらには仰天の計画もあった。昨年六月、低価格および乗客数増を図るため、なんと「立ち乗り便」をブチ上げたのだ。座席をなくし乗客を詰め込むことで、四〇%以上の乗客増が見込めるというが、今年七月、さすがに中国当局、航空機メーカーの反対に遭い、計画は頓挫した。
 茨城空港は、遅延トラブルなどの「悪評」について、「特段、詳細な情報を得ていないが、ローコストキャリアになれていない人にはとまどいもあるかもしれない。コストを切り込んでやっていると思うので、細かなサービスまでは行き渡らないのでしょう」とコメントするが、安全面の確認だけはくれぐれも慎重にしてほしい。

週刊文春2010年7月29日号
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ベテラン捜査員が警告 窃盗団、運び屋…ビザ緩和で10倍増!「中国人観光客」を信じるな

2010-08-04 00:43:13 | 週刊誌から
ノンフィクションライター 小野登志郎

今月一日実施された、中国人観光客へのビザ発給要件の大幅緩和。政府や観光業界は経済効果を期待しているが、一方で「とんでもない!」と憤っている人々もいるのだ。誰あろう、国際犯罪を取り締まる現場の捜査員たちである。彼らは一体何を危惧しているのか?

「私たち刑事は公務員ですから、表立って今の政権や政策の文句を言う人間はいません。でも、たとえ口には出さなくても、中国人ビザの緩和を歓迎する現場の刑事なんて、いるわけありませんよ」
 そう吐き捨てるのは警視庁ベテラン捜査員のA氏。彼は、過去に多くの中国人犯罪者を摘発してきた実績がある。数年前に部署が変わり、直接中国人犯罪に携わっているわけではないが、今も多くの都内在住の中国人協力者(S、スパイ)を抱え、独自に情報を集めている。
「中国人観光客のビザ緩和で何が増えるのか? 旅行者に化けた覚せい剤の運び屋、偽装結婚の相手探しツアー、そしてスリや窃盗団、強盗団の大量流入ですよ」
 A氏の危惧する背景には、新たなビザ発給要件の現実離れした緩さがある。新要件は、中国国内で犯罪歴がないこと、官公庁や大企業の課長級以上、大手クレジット会社が発行するゴールドカードを所有していることなどが条件だが、これによると年収が六万元、日本円でおよそ八十五万円程度の層も、個人で日本を旅行できるようになる。ビザの対象は、これまでの十倍の一千六百万世帯に拡大され、政府は、中国人観光客を二〇一六年までに今の六倍の年間六百万人に増やすことを見込んでいる。
「年収が八十五万円で『中間層』などと呼んでいますが、たったこれだけの年収で、日本に来て普通に観光する中国人がいるわけがないでしょう。過去の中国人犯罪のデータから、当たり前の想像力を働かせれば誰でも分かることですが、五年後の日本の治安は大変なことになりますよ」(前出・.警視庁捜査員A氏)
 そもそも今までのビザ発給要件にも多くの抜け穴が存在していた。日本の警察は、捕まえた中国人の旅券やビザは、必ず中国の実家にその真偽の確認を求める。中国には顔写真を貼った「居民身分証」と、日本の戸籍に当たる「戸口簿」があるが、それを元に件の人物の認定を図るのだ。しかし、これがまたかなり杜撰な代物であるという。
「ある中国人窃盗犯を逮捕し、中国側に確認を求めたところ『その名前は本物だ』と回答してきた。ところが、そのすぐ後に同一人物が入国し、また窃盗を犯したので逮捕したところ、今度は違う名前になっていた。そして今度も中国側は『本物だ』と言う。どちらが本物の名前なのか、こちらとしては確認する術がありません」(県警捜査員B氏)
 過去に日本で逮捕された中国人が、五年の入国禁止措置の聞に、平然と日本に入国している例は少なくない。受け入れ側の暴力団関係者も、「どうやっているのか、分からない。不思議だ」と首を捻るほどだ。
「戸籍の真偽すら定かでない国民の犯罪歴なんて、いくらでも抹消できますし、旅券さえ正規なら、身分証が偽造であろうとなかろうと、こちらは手も足も出ません。結局、密入国なんてリスクが高く金のかかることなんかしなくても、脱法的に日本に入国させ易くした、というのがこの中国人ビザ緩和の偽らざる側面なのです」(前出の警視庁捜査員A氏)
 ピザ緩和実施日である今月一日、「東武百貨店池袋店」で腕時計など七十一点(一千六百五十万円相当)が盗まれる事件が発生している。外壁を壊して侵入するという荒っぽい手口から、中国人窃盗グループ「爆窃団」による窃盗事件の可能性が高いと見られる。この種のプロの犯罪グループは、異常なほど警戒心が強く、その摘発は極めて困難である。複数の捜査員から聞いた彼らの特徴を列記すれば以下のようになる。

・日本の各所にアジトがあり、メンバーの出入りは別々にする。
・常にアジト周辺の点検を怠らず、要所に見張りを置き、アジトに入る場合はいったん入り口を通りすぎて、Uターンして入室する。
・車両を使う場合、捜査員の尾行を巻くため、高速道路を何度も周回し、超低速走行をしたり急カーブを切ったりする。
・アジトの近くではなく相当離れたところに駐車し、駐車場以外では見通しのよい所に駐車する。

「中国人犯罪グループの摘発で最も難しいのが、国外に逃げられたらお終いというところ。一人だけ捕まえても、他の連中は逃げてしまう。そうなるとICPO(国際刑事警察機構)経由で中国公安当局に国際共助を依頼するが、実際のところ殺人や巨額の強盗などでない限り、あちらは本気で動いてくれない」(県警捜査員C氏)
 たとえある国際指名手配犯の居場所が分かったとしても、日本の警察は手の出しようがなく、結局、無為に逮捕状を再提出し続けるくらいしか、やることはない。
 さらには、よしんば国内で逮捕できたとしても、全面自供いわゆる「完落ち」にいたる中国人犯罪者は皆無に近いという。

「余罪を喋らせることが刑事冥利に尽きると個人的に考えているが、ただでさえ煙草やお茶などの供与の禁止などで、犯罪者の心を打ち解けさせることが難しくなっている。さらには、取り調べの可視化だ。これではホシの心を受け止めることができない。ましてや独自の論理、規範で動く中国人ならなおさらで日本人の情緒に訴えても何の効果もない」(元警視庁組織犯罪対策第二課D氏)
 とはいえ発生件数だけを見れば、近年の日本国内での申国人犯罪の数は減っている。ぞれをもって、今回の中国大ビザの緩和措置による犯罪の増加を、「単なる杞憂に過ぎない」と見る向きもある。
「八〇年代後半から二〇〇〇年代初頭まで活動していたいわゆる『五大グループ』、香港、台湾、上海、福建、東北の黒社会の主だったメンバーは、ほとんど全て日本から追い出した。今残っているのは、帰化した中国人や中国残留孤児の不良子弟たちのグループであり、彼らは殺人や強盗などはあまりやらず、日本各地の街に根付いている」(同前)
 日本語がうまく喋れず、満足な教育を受けられなかった残留孤児の子弟の一部が不良化し、西葛西や府中、赤羽などで結成した暴走族を「怒羅権」というが、今は暴走族の域を超えマフィア化している。日本各地の街の中国人風俗店やクラブ、飲食庖からみかじめ料を取るなど、「土地によっては、日本の暴力団よりも勢力が強い」(同前)ものとなっている。
 都内に拠点を持つ、ある残留孤児の不良子弟グループの幹部(三十歳代後半)は言う。
「子供の頃に中国から日本に来てこの街で育ったから、ここは俺たちの街という意識が強い。よそ者がデカイ顔をしたら、日本人だろうが中国人だろうが徹底的に痛めつけて追い出す」
 これら日本に根付いた不良中国系グループは、指定暴力団とは認定されていない。言語、境遇、習慣を共にした彼らの結束は極めて固く、そして銃や刀などを多数所持しており、D氏の言う通り極めて凶暴である。また)残留孤児の不良子弟や帰化して日本に根付いた中国人の中には、日本の暴力団と兄弟盃を交わしたものや、正式な組員となっている人間も少なくない。
「シャブ(覚せい剤)の運び屋や、喧嘩の時の先頭には、故郷が同じ東北部の中国人を使う。俺たちも苦労したけど、中国の地方はいまだに信じられないくらい貧しい。家族の為だったら、彼らは何だってするし、俺たちも助け合う」(前出・.不良子弟グループ幹部)
 現在、彼らは頻繁に日中を行き来し、闇のビジネスにいそしんでいる。この日中の闇の最前線は、今後さらに大陸の奥深くを挟り続ける。
 このような現状に対して、国際犯罪捜査の現場の捜査員は警鐘を鳴らす。
「今後最も恐れるのが、このような日本に根付いた不良中国人グループと、中国の黒社会のグループが日本においてさらに結び付きを深くしていくことだ。中国内の犯罪組織は、経済成長に応じて、どんどん膨張している。また、日本と中国のグループの連携と同時に、二者間の抗争の発生も懸念される。観光客に混じって入国してくる中国黒社会の動向は、日本の警察は、まったくと言っていいほど摑めていない」(前出・捜査員C氏)
 中国人観光ビザの大幅緩和に先立つ今年二月、警察庁は多国籍化した犯罪集団に対応するため、「犯罪のグローバル化対策室」の設置や犯罪人引き渡し条約の整備など、戦略プランをまとめ、全国の警察本部に通達した。
「言葉は勇ましいけれど、専門家を育てる組織になっていない以上、中身は無い。警察庁のキャリアは、たった一、二年現場にいたくらいで何も知らないまま出世していき、国際犯罪に詳しい官僚は、今は主流になれない」(全国紙社会部記者)
 中国人窃盗、強盗グループは、例えば関西にアジトを置いて、関東で犯罪を行う。各都道府県警単位では対処できず、だからこそ国際捜査には合同捜査が多い。

 「日本の広域捜査の場合、各都道府県警の刑事の個人間の信頼関係がモノをいいます。顔を合わせたこともないのに、いきなりメールを寄こしたりできませんからね。築いてきた横の繋がりで国際犯罪組織に対処します。もう既に広域化、グローバル化している犯罪組織に対して、国際的な情報を持っている各都道府県警の捜査員が連携する会議、機関を作って欲しい」(前出捜査員B氏)
 相次ぐ不祥事や情報漏洩を極端に恐れる警察の人事により、腐敗防止のために長い期間同じ部署での勤務をさせない「刑事に専門家はいらない」という秩序が形成され、国際犯罪捜査の最前線に立ち続けるベテラン捜査員もまた、少なくなっているという。
「日本の各所に根付いた不良中国人に対して、私たち刑事は個人単位でSを育成します。中国人と中国人社会に精通し、長い時間を掛けて信頼関係を醸成するのです。問題となるのは、Sの引き継ぎが不可能ということです。中国人のことを何も知らない新任の刑事のことなんか、日本在住の中国人が信頼するわけがない。部署、担当者が代われば、ゼロからやり直しです」(前出・捜査員B氏)
 ある国際犯罪のベテラン捜査官と、日本に根付いた不良中国人グループのメンバーが、いみじくもまったく共通の言葉を述べた。
「これからは、弾数、頭数が増えるということです」
 この言葉が意味するところは明白だ。目的は違えど、日本のベテラン刑事と不良中国人が現状認識だけは共有しているのだ。
「もう既に、日本で逮捕歴のある中国人が、数十人の団体を引き連れて観光客として入国したことを確認しています。結局、事件が発生しないと動かないのが、警察組織。中国人犯罪対策のための警察組織の改編などは、今は時期尚早ということなのでしょうね」(前出警視庁捜査員A氏)
 したたかさを増す中国人犯罪と対峙する捜査員の声は虚しく響きつつも、彼らは日々現場に立ち続けている。

週刊文春2010年7月29日号
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[特別読物]潔癖原理主義「岡田克也」外相の選挙は灰色「イオン丸抱え」 ジャーナリスト 鎌倉三次

2010-08-03 01:43:24 | 週刊誌から
 菅内閣が退陣すれば、民主党では次の総理に岡田克也外相(57)を担ぐという声は多い。良きにつけ悪しきにつけ潔癖で原理主義を貫く人柄は、この人の特徴である。ところが、意外にも彼の地元では旧態依然とした「イオン」グループ丸抱えの企業選挙が行われているのだ。

 民主党が金科玉条の如く喧伝するマニフェスト。中でも、先の衆議院選と今回の参議院選では「企業団体の献金及びパーティ券購入の禁止」という項目を目玉として掲げている。
 確かに菅直人総理への法人献金は、わずか4社で総額約90万円(平成20年)という微々たる金額だ。しかし、政権与党・民主党のなかで自民党の道路族もかくやと思われるほど多額の企業献金を集めている閣僚がいる。岡田克也外相その人である。
 岡田が代表を務める民主党三重県第3区総支部の平成17年から19年の3年間の政治資金収支報告書を見ると、なぜかどの年も判で押したように収入総額は6200万円台で揃っている。そのうちの個人の寄付額も毎年、560万円台とほぼ同じ。いずれにしろ個人寄付、政党交付金も含めて6000万円以上もの収入は、民主党では群を抜いている。
 さらに政治資金収支報告書を精査した者は、面白いことに気づくかもしれない。地元の新聞記者によれば、
「岡田さんに献金している企業の多くは、実兄の岡田元也さんが社長を務めるイオングループの出入り業者です。本人は否定するでしょうが、要はイオンという一企業におんぶにだっこで、民主党のマニフェストに最もそぐわない政治家の1人と言えます」
 そこで、岡田の地元有権者に知恵を借り、政治資金収支報告書に寄付者として記されている企業をひとつずつチェックしてみた。その結果、平成19年度分の合計135社のうち、確認できただけでも、70社はイオングループの店舗に商品を並べたり、テナントとして入っている、あるいは店舗建設に関わっている企業であることが判明した。紙数の許す範囲で幾つか紹介しよう。
「例えば、ハウス食品や日糧製パン、丸大食品、春日井製菓などはいうまでもないやろ。イオンやらグループのジャスコ、マックスバリュに商品を卸しているメーカーや」(飲食業者)
「N建設はいわばイオングループ専門の建設会社だな」(土建業者)
 地元の商工会幹部も言う。
「カネハツ食品はジャスコにようけ入ってる地元の豆腐屋で、福井は同じく仏壇屋、スエヒロは饅頭屋でフンドーキンは醤油屋、貝新は佃煮屋だわ。おっ、宮崎本店もきっちり献金しとるやないか。ここはバリバリの岡田後援会の酒屋やな。イオンに世話になっている企業やら店舗が見事なほど勢揃いしとるわ」
 驚くのは、年によっては同じイオングループのマックスバリュ中部や九州、イオン北海道やポスフールといった三重県外のイオングループからも献金を受けていることだ。
 岡田のイオングループとの密着ぷりはこれだけではない。岡田後援会青年部の元幹部が証言する。
「岡田さんの秘書が、イオンやらジャスコに出店している店から後援会員を集めさせるんですわ」
 テナントの大きさに応じ、10人から20人の会員を集めるよう指示されたという。
「そもそも親分の岡田さんの性格を反映したのか秘書たちのチェックが細かいんですわ(笑)。後援会の入会申し込み書が同じような筆跡だと『お前が代筆したんやろ』とやり直しさせられるんです。また集会をやる時も時間通りに人数が集まらないと叱られる。遅れて来る人がいたりしたら岡田さんはいったん話をやめてしまう。遅れて来た人はいたたまれないですよ。親父の代から岡田さんを応援してきたんですが、こういうことが重なって、後援会をやめさせてもらいました」(同)

 選挙期間中になると、イオンの関連企業は後援会員集めだけでなく、“事務所詰め”も強いられる。
「泗水会」はイオンに出入りする運送・運輸会社80社以上で構成されるグループだ。実はこの組織は選挙の度に、集票活動の「手伝い」をしているのだ。
 前々回の総選挙時(05年)に泗水会の会員に送られたペーパー(ローテーション表)には、<会員各位のご都合をお聞きせず作成致しましたので、ご容赦お願い致します>とある。
 主な幹事社は、池畑運送、阿倉川運送、伸栄冷蔵、末広運輸などで、それぞれ社長名で民主党三重県第3区総支部へ毎年、献金している。午前(9時~13時)と午後(13時から17時)の部に分かれるシフト制で、どちらの部にも幹事社が1社か2社、他の会員会社は4~9社、詰めることになっている。
 地元記者が呆れた口調で解説する。
「所詮、岡田には自民党のDNAが残ってるってことなんですよ。自民党の道路族が道路工事や橋工事と引き換えに票を集めてるのと構図は同じなんです。イオンで仕事をさせてやるから、票をくれ、選挙の時は事務所を手伝えってことなんです。そもそも故・竹下登元首相が岡田さんに声を掛けたのもイオンの後ろ盾があってのこと。じゃないと、贈り物の伊勢えびを送り返して腐らしたり、ミカン業者の集まりで、お礼のミカンを突き返したりするような変人を推したりしないでしょうが……」
 岡田の選挙を手伝っているのは、テナント企業や運送会社だけではない。信じ難いことだが、イオングループのパートのおばさんまで駆り出されているのだ。
 証言してくれたのは前回の衆議院選挙期間中にジャスコの衣料品売り場でパートをしていた30代の女性と40代の女性である。
「まさか、岡田さんの選挙の手伝いをさせられるなんて予想だにしませんでした」
と証言するのは、30代の女性。
「選挙期間になると、主任に呼び出されて、ローテーション表と後援会員の名前と住所と電話番号が書かれた名簿を渡されました。そして“あんたは、午後2時から3時までね。名簿のここからここまで電話して”と命じられました」
 売り場のバックヤードに机と電話が用意され、壁にはローテーション表も張ってあったという。
 主任はパート従業員に対し「あくまでも、岡田事務所の人間だと強調してください。ジャスコから電話しているとは言わないこと」「余計なことは言わないでいい」などと指示。電話マニュアルには、『岡田事務所の○○です。次の衆議院選挙ではぜひとも岡田をよろしくお願いします』『お世話になります』などという文言が並んでいたそうだ。
 イオングループでは主任以上は正社員だが、
「正社員に逆らうなんてことは絶対にできません。いまどき、パートなんていくらでも補充できますから。でも私は服の販売をしたくてパートに出たわけで、岡田さんの選挙応援に来たわけではないんですけどね。電話してたのも就業時間中だったので、あれは選挙違反じゃなかったのかって、今でも納得のいかない思いがしてます」(同)
 一方、40代の女性は、
「主任から指示があると、“ああ、また選挙の時期なのか”って思うだけでとくに抵抗もなくなってました。内部では『電話作戦タイム』って呼んでましたけど、私たちは接客業なんで、人当たりも柔らかいでしょ。使い勝手がよかったんじゃないでしょうか」
 と割り切っている様子。選挙期間中、地元イオングループのバックヤードは、岡田事務所の出張所の様相を呈するとか。これでは、道路族の議員が自分の事務所ヘゼネコンから社員を出向させるのと全く同じ構図である。

 以上の疑問を岡田事務所に問い合わせた。
 献金については、
「イオングループとは関わらない個人、企業、団体からも幅広く頂いており、『その多くはイオングループに関わっています』と断定する根拠が全く無く、事実ではありません」
 という。これが「事実」であることは前述した通りだが、ならばあえて続けようか。
 献金リストにある、イシガキはイオンの製品を預かっている倉庫会社で、清水製菓はイオンに卸している饅頭屋、岩田食品はイオンに食品を卸している問屋、ヤマモリや山忠食品も同じく食品問屋ではないか。枚挙にいとまがないとはこのことだ。
 また、平成19年の個人献金を見ても総額566万円のうち、岡田卓也、岡田元也、岡田保子など身内が限度額の150万円を献金しておりこれを差っ引くと、残りはたった116万円でしかない。これのどこが「幅広く頂いて」いるなのか。
 運送、運輸会社の選挙協力については、
「たしかに運送業に関わる人たちにも選挙事務所にお立ち寄りいただくことはありましたが、あくまでも地域の運送業者の有志がつくる岡田克也の後援会企業であって、『イオンに出入りしている運輸、運送会社がある会を結成して』という指摘も事実ではありません」(同)
 女性パートの選挙協力に関しても、岡田事務所側は全面否定である。
「『パートの女性に……電話をかけさせたり』という事実もありません。選挙事務所での電話かけには男女を問わず、幅広い世代の方々にボランティアで御参加いただきました」(同)
 しかし、地元商工会の幹部(前出)が語るには、
「その女性たちの証言はウソじゃありません。この辺りのイオンやらジャスコにパートで出ている女性の一部がやらされていることなんです。これまでなかなか表に出て来なかったのは、ここが“岡田王国”だからなんです」
 もともと三重県の呉服屋を始祖とするイオングループは、三重県だけでもスーパーマーケットのマックスパリュだけで50店舗以上を数える。
「これに加えて、イオンやジャスコもいたるところにある。岡田さんの選挙区のイオン、ジャスコだけでも10店舗近くあるんじゃないんですか。つまり、家族とか友人知人をたどっていくと必ず、イオングループに関係があるわけです。そんな地域で岡田さんの選挙のやり方に疑問を持っても口にはできないでしょ。田舎ですからね、それこそ“村八分”みたいな状況になってしまいますよ。岡田のいわば恐怖政治には誰も逆らえない状況なんです」(同)
 
 イオンをバックにした岡田の政治力を表す、ちょっとしたエピソードも紹介しておく。ある地元商店主の証言だ。
「いくら岡田王国といっても、この地域でも地場のスーパーマーケットがあります。サンシグループというんですがね。ところが本来なら、イオングループに負けるもんかと敵対するはずが、完全にイオンの軍門に降ったんです。隣にジャスコやらマックスバリュを作られたら、あっという間に潰されますからね。今じゃサンシグループも岡田に献金してますよ」
 調べてみると、確かに献金の記録はあった。このサンシグループには、自民党関係者が献金のお願いに出向いたことがあったが、「勘弁してくれ。あそこは怖いから」と幹部が両手を合わせて拝むようなポーズで断ったという。
 因みに、「スクラップ&ビルド」が社是のイオングループは業界では、儲からない店舗はさっさと畳んでしまうことで知られる。ところが、岡田の選挙区のグループ企業はその対象にはほとんどなったことがない。平日など「お客より店員が多くて採算は取れているのか」と不思議がられているイオングループのマイカル桑名も未だに健在だ。この店は最寄りのバス停に「猿に注意」という看板が立てられているほど辺鄙な場所にある。
 かくして、岡田は選挙期間中にろくに選挙区に入らなくても、楽々と当選を重ねることができるというわけである。おまけに、地元秘書の優雅な姿も目撃されている。
「岡田事務所の並びに大きなジャスコ(四日市北店)があって、その斜向かいに漫画喫茶があります。その駐車場では選挙期間中だというのに、エアコンかけたままの車で、岡田さんの秘書が居眠りしてるんですわ。漫画喫茶に出入りしているとこも何回も見てます。余裕やなあって、笑って見てましたわ」(地元の自民党関係者)
 普段は、四角四面でクリーンなイメージの岡田。だが、地元で「イオン」丸抱えの企業選挙を行なっているのも紛れもない事実だ。その落差に有権者は、相当な違和感を覚えるはずである。(敬称略)

週刊新潮2010年7月29日号
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