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告発レポート 帝京大で9人死亡「恐怖の院内感染」多罪耐性菌 東京都は知っていた!

2010-09-29 00:47:49 | 週刊誌から
医療ジャーナリスト 伊藤隼也と本誌取材班

死者まで出ていながら数力月も事実が伏せられていたのはなぜなのか。「病棟を閉鎖せよ」という内部からの警告を無視した病院の保身、立ち入り謂査で得られた「報告」を見落とした東京都、アメリカの抗菌薬を承認しない厚労省……これはまぎれもなく“人災”だ。

「命を守る病院でこのようなことをして申し訳ない。感染させなくてもいい患者を感染させてしまった」
 帝京大学医学部附属病院の森田茂穂院長はそう言って頭を下げた。帝京大病院は九月三日、抗菌剤に耐性を持つ「多剤耐性菌アシネトパクター・バウマニ(以下、MRAB)」に、一日までに患者四十六人が院内感染し、二十七人が死亡したと発表した。うち九人は感染と死亡との因果関係が否定できないという。
 帝京大病院は昨年五月、総工費数百億円をかけて新築工事を行ったばかり。都内有数の大学病院がなぜ、院内感染の拡大を防ぐことができなかったのか……。
 病院側の説明によれば、今年四月から五月に、内科系病棟で十名程度の患者から菌が検出されたことが発端だった。五月の連休明けに、院長を含むスタッフで構成する「感染制御委員会」がようやく事態を把握。本格的に院内感染対策に乗り出すことになる。そこで、同委員会が過去に遡って調査したところ、次々と感染例が浮かび上がったのだ。
 二月にはすでに、院内では異なるフロアの患者から散発的にMRABが検出されていた。院内感染の対策にあたる感染制御部は各科に警告文書を出したが、菌検出の報告は上がらず、「院内感染の疑い有り」という情報が病院全体で共有されることはなかった。
 昨年十月にも、MRABとの因果関係が否定できない最初の死亡者が出ていたが、一部の抗菌剤が効いたため、主治医はやはり報告を上げなかったという。
 神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授はこう語る。
「基本的にMRABが一例見つかった時点で、非常事態です。その段階で、組織的な対応を迅速にすべきだった」
 感染制御部の人員不足を指摘する声も多い。ベッド数千百五十四床と国内最大規模を誇る同病院だが、院内感染対策に従事する専任職員は看護師一人、医師一人だけだった。

「帝京の感染制御部は他大学に比べて、組織として不十分で人数も明らかに少なかった。(感染管理の資格を持った)認定看護師もいない。都心のあの規模の病院なら、二、三人は確保しているのが常識です」(山形大学医学部・森兼啓太准教授)
 結局、最新鋭の設備に大金を投じても、院内感染に対する職員の危機意識は薄いままだったのだ。
 しかも、同病院には、院内感染の“前科”まであった。
 九九年六月、肺結核を発病した医師が前年夏から半年間もの問、感染に気付かず勤務していたことが発覚。医療関係者や看護師が集団感染する事態に陥った。
 帝京大病院の元医師は、同大学の伝統的な隠蔽体質に問題があると振り返る。
「当時から情報公開に後ろ向きだった。結局、職員の検診を厳しくした程度で、問題点改善の議論はなかった。誰もが二年前に死去した帝京大学の創設者、沖永荘一前理事長の顔色をうかがっていて、真面目にモノ
を言う人間はパージされてしまったからです」
 その後、理事長職を継いだのは、次男の沖永佳史氏だ。妻・寛子氏は医学部教授で、副学長も務めている。
「代は替わっても病院のディシジョンメイカーは院長ではなく、理事長のまま。佳史氏と教授陣との距離感もまだ微妙で、一層意思決定に時間がかかるようになってしまった」(同前)
 さらに、MRABに感染した患者を担当する医局の力量不足も囁かれでいる。
 帝京大病院の内情をよく知る医師が明かす。
「外科や泌尿器科などは次の東大教授クラスが揃っていると噂されますが、それに比べ、感染症科と血液内科の教授は能力が見劣ると言われています。実は今回、他科の複数の教授は『早く一部病棟を閉鎖せよ』と声を上げていたのですが、両科の教授は耳を傾けようとしませんでした」
 確かに同病院が位置する都の城北部には、他に日本大学医学部附属板橋病院しか「特定機能病院」が存在しないため、患者への影響を考えると簡単には病棟閉鎖には踏み切れないだろう。とはいえ、病院内での円滑なコミュニケーションが著しく欠如していたことは間違いない。「ニュースで死者がいたことを知った」という医師さえもいるのだ。
 だが、ここまでの院内感染の拡大を引き起こした原因は、帝京大学だけにあるわけではない。実は杜撰な対応という意味では、国や東京都も同罪なのである。

「報告の遅れは大変遺憾だ。八月四日に国と合同で立ち入り検査を行ったが、病院側からは院内感染の発生に関する話はなかった。九月二日午前十一時頃、病院側から受けた連絡で初めて院内感染の発生を知った」
 東京都医療安全課の田中敦子課長は記者会見でそう述べ、病院の不手際に不満を露わにした。
 八月四日の検査とは、都と国が特定機能病院に対して年に一度行う定例の検査のこと。都医療安全課係長以下、六人の医療監視員は、院内の視察を進めた。各科から多くの書類が提出される中、感染制御委員会の議事録も例年の検査と同じく、医療監視員に提出された。
 病院は五月の連休明けから感染制御委員会を招集し、対策を協議していた。議事録には、多剤耐性菌の院内感染への言及があった。
 当然、医療の専門家が議事録を精査すれば、この時点で院内感染の可能性を疑うことができたはずだ。ところが、東京都は一カ月もの間、この議事録を放置し続けた。その間にも、帝京大病院では、五十三歳の男性患者が死亡。着々と院内感染は広がっていたのだ。
 東京都に一方的に病院を非難する資格はあるのか。以下、前出・医療安全課の田中課長との一問一答だ。
――病院に「感染症対策の専任スタッフが少ない」と指摘しているが、これまでの立ち入り検査では改善を求めなかったのか?
「去年以前は明確に指摘はしていないんじゃないかと」
――放置していたのか?
「専任が一人いればいいと決まっているので、違反ではないわけです」
――議事録に院内感染への言及があったのでは?
「あったかもしれませんが、膨大な資料の一部ですので、それをその日に全部見るというのはちょっと……。少なくとも重大なことだという認識があれば、当然、病院から報告されるだろうと」
――議事録を都に持ち帰って、精査しないのか?
「本当に膨大なので、隅から隅まで精査するのは現実的には厳しいところです」
――帝京を過信したのか?
「帝京に限らず、ですね」
――病院の申告次第だと?
「それでウソつかれたらどうしようもないですけど」
――では結局、院内感染を知ったのはいつなのか?
「うちが認識したのは九月ニ日。国も同じです」
 語るに落ちるとはこのことである。東京都は行政機関として、十分な医療監視任務を遂行していなかったのだ。今後は院内感染の有無を確認項目に加えることを検討しているというが、形骸化している立ち入り検査の抜本的な改善を口にすることは最後までなかった。
 不都合な情報を隠蔽する医療機関は後を絶たない。それを明らかにしていくことも医療監視の役割だろう。不作為を続ける東京都に人材とカネを垂れ流すくらいなら、その分を病院に投入した方がまだ有意義だ。
 しかし、残念ながら東京都だけではなく、今回のような院内感染問題において、公衆衛生行政は何の手立ても打てていないのが現実だ。
 専ら「アリバイ作り」に躍起なのが、厚生労働省である。〇九年一月、福岡大学病院で患者二十三人がMRABに感染。この直後、厚労省はA4二枚の「通知」を、地方自治体を通じて各医療機関に送っている。新聞各紙はこの通知をもとに帝京大病院の「報告遅れ」を批判するが、MRABには感染症法上の報告義務はなく、この通知はあくまで「お願いベース」でしかなかった。
 実際、現場の医師はこう口を揃える。
「大学の教科書のようなおざなりな対策方法と、『院内感染を疑う場合は速やかに報告せよ』という内容を書いているだけ。一方的に送られてきたそんな通知は読んだこともなかった」

 仮に、保健所に報告したところで、「院内感染について的確な見識を持ち合わせていない。しかも行政は監督責任を関われたくないから、新型インフルエンザのときのように、患者への影響を無視して、必要以上に『病棟閉鎖』を乱発する危険もあります」(前出・岩田教授)
 その一方で、唯一の治療薬と言われるMRABの抗菌薬「コリスチン(注射剤形)」の導入は遅々として進んでいなかった。今年四月、「医療上必要性の高い未承認薬」の検討会議に取り上げられ、ようやく承認に向けて動き出したばかりだ。ここでも、厚労省の腰の重さに批判が上がっている。
「五年くらい前から『日本でも認めてくれ』と言っているのに、役所は全然動いてくれなかった。神戸大学ではアメリカから輸入しています。治療薬が供給されないのに、『何とかしろ』と言うのは、矛盾した話です」(同前)
 医療現場の声に対し、同省医薬食品局審査管理課は、
「製薬会社から承認の申請が上がっていないから未承認でした。申請がないと審査管理課は動けない」
 とお馴染みのお役所仕事の回答だ。まさに「患者不在」'行政の典型例である。
 ここまで挙げたような、多くの「人災」が重なって、帝京大病院院内感染は拡大してしまったと言えよう。
 現在、警視庁は業務上過失致死の疑いもあるとみて、医師からの任意での事情聴取を始めた。感染ルートなどについて捜査を進めるというが、自治医科大学附属病院感染制御部長の森澤雄司氏は、こう見る。
「専門性の高い第三者機関ではない警察が適切な判断をするかは疑問だ。国民の懲罰感情に阿るような捜査をすると、真実が明らかにならないだけではなく、医療現場を防護的にしてしまう可能性も孕んでいる」
 誤解してはならないのは、院内感染そのものは、細菌の巣窟である医療現場の宿痾だという事実だ。実際、九月四日には、愛知県の藤田保健衛生大学病院で患者二十四人からMRABが検出されたことが発覚。栃木県の独協医科大学病院では六日、インド帰りの入院患者からほとんどの抗菌剤が効かないスーパー耐性菌が国内で初めて検出されていたことが分かった。
 問題は、その中でどれだけ感染拡大を最小限に抑えることができるかである。
 医療機関は院内感染が発覚次第、内外での周知徹底を図り、情報をオープンにすべきだ。行政には現場の声に真撃に耳を傾け、積極的にバックアップしていく姿勢が求められる。
 帝京大病院は今後、残された遺族に対し、改めて死因と院内感染との関係を説明し、謝罪をするという。
「森田院長は『ここまで事態が大きくなると思っていなかった』と漏らしていました」(医療関係者)
 感染を拡大させた原因の徹底究明が行われ、その反省に立ち再発防止への道筋が示されなければ、帝京大病院が失われた信頼を取り戻すことはできない。

週刊文春2010年9月16日号
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1 コメント

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Unknown (ねやま)
2019-04-30 17:15:45
帝京大って怖いねー

帝京大認定看護師尾崎麻依子(藤丸麻依子?)って奴、うえから目線で超キライ。イライラしてるし。
幸せですオーラ出しててキモい。


こいつのせいで、死んだ人(こいつが略奪婚したから?)
要るんだってー。こわー。人殺してまで結婚してたんだー
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