超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

人生モグラたたき 47  池田暁子

2010-06-13 03:50:39 | 週刊誌から
先週に引き続き上海万博の話
5月2日~4日の3日間で50余りのパビリオンを見て思ったこと
①建物のデザインが凝ってるものは中も凝ってて面白い
サウジアラビア館 中にお椀形の巨大なスクリーンが!
カナダ館 インタラクティブに遊べる展示
デンマーク館 あの有名な人魚姫の像を台座から外して持ち込み! などなど
②行列が長いものはそれなりに面白い
現地の人は情報通らしい ※日傘をさしてる人が多い
私が見て回った中で唯一の例外が日本館
凝った形をしてますが並んでまで見る価値はありません! 断言!
万博を楽しみたい人は近寄らないで!!!
私は3時間拘束されましたが心底げんなりしました 行列で2時間館内で1時間
見た目もカッコ悪いし… 生で見るとペカペカしてビニールっぽい 昔の特撮の怪獣みたい…
日本館のコンセプトは
つながろう!調和のとれた未来のために
とのことで…
環境問題 快適な生活 地球 安心 子どもたち 未来
なんかこういうのを表すらしい。
で、実際の館内の様子はこんな感じ
ゴミ処理などの映像
イライラ
通路の途中でなぜか大渋滞
環境に優しくお客様に厳しいパビリオン
さんざん待たされてやっと見られるのは…
一つ目のステージ
舞台上に中国の?役者さんが登場して渾身の演技で日本の技術を説明
わあ! おお!
なんか通販番組みたい
表示の目玉、バイオリンを弾くロボットは
出て来て1曲弾いてすぐ引っ込んだ後にこんなナレーション
本当に生演奏です
間抜けだ…
日本人は映像の中に登場するのですがこんなシーンも
日本人3人が座って乗れるセグウェイみたいなので山の上の舗装道路を疾走
トヨタのi-REAL(イチオシらしい) 歩けや自分の足で
ある意味オモシロ映像
二つ目のステージ
中国人の役者さんがステージ上を車でグルグル
能面 i-REAL まだ押すか!
中国の昆劇と日本の能とのコラボレーションとのことでしたが内容は意味不明
上海万博って急成長中の中国のお客さんにアピールするべく各国がシノギを削る場ですよ? 約13億人!
あの手この手で驚かせたり喜ばせたり
中国の人たちにとってはずーっと思い出に残るような嬉しい楽しいお祭り
それなのに…
何ですかこのグダグダを絵に描いたようなパビリオンは!
他も一方的に見せる展示ばかりで退屈
水を濾過する仕組み 燃料電池 お勉強チックで文化祭みたい
人をスムーズに流す工夫や行列のストレスを軽減する工夫も感じられない
おもてなしする気はあるの?
…で結局日本って何?
イロイロあったにしてもこの出来はナイ
あんなに並んでくださってるのに…
トボトボ
申し訳ないし恥ずかしい…
とても心細くなりました
日本館を見た後、日本産業館へ行きました
ちゃんと富士山が…
民間企業22社と2地方自治体が自主的に出展
コンセプトは…
Better Life from JAPAN 日本の創るよい暮らし きれイ、かわいイ、きもちいイ 日本が伝えるJ・感覚
シンプルに堂々と日本をアピール!
入口で手渡される福袋に ちょっとしたお土産入り
当たり券が入っていたら世界一のトイレが体験できるという遊び心 当たる確率は1/10とのこと
大人気だから行列は長いけど中に入れば気持ちよく見られるし
展示も面白い
サプライズ的に雪のようなものを降らせたり! 上海の人たちは雪が大好き
テーマ劇場「宴 UTAGE」で上映している映像が素晴らしくて
出だし、赤い画面から… 引いていくとそれは梅干し! お弁当で日の丸を表現☆ 洒落っ気が素敵!
新旧さまざまなものを巧みに組み合わせ
ねぶた 女子高生 お台場ガンダム 十二単 などなど 日本の文化がぎゅぎゅっと!
上映前に場内でかかっていたのはバンド「相対性理論」の『LOVEずっきゅん』
オタクやギャルなど最新の文化も長い伝統を背景に築かれていると納得できるような内容で
日本にもいいもの沢山あるじゃん! まだやれる! 頑張れる!!
万博会場に日本産業館があって良かった…
本当に救われた思いでした。多謝!!!

いけだきょうこ/著書に『片づけられない女のための今度こそ!片づける技術』等。万博会場内の日本食の店には「メイドさん」の姿も! 

週刊文春2010年6月3日号
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「裏切りの事業仕分け」最終章 宝くじはノーなのに小沢幹事長「社団法人」をなぜ見逃すのか!?

2010-06-12 07:03:50 | 週刊誌から
ジャーナリスト 若林亜紀

事業仕分けの総仕上げが行われた。目玉は宝くじのからくり。年間売上一兆円のうち当選金に回るのは半分以下、残りは総務省主管の天下り法人に配られている。その実態を暴いた仕分けに世間は喝采したが、実は民主党は小沢幹事長の法人には手をつけていないのだ。

 首相官事の隣に山王パークタワーという地上約二百メートルの超高層ビルがそびえ立つ。消費者庁が入居して問題となったこのビルの二十一階に、財団法人自治総合センターがある。財団を支えるのは宝くじの収益である。なぜ宝くじの売上が財団に流れているのか。
 総務省によれば、宝くじの発行は本来、違法とされている。しかし、戦後、自治体財政が苦しいときに、収益で公益事業をするということで、総務省が自治体に暫定的な許可を与えて始まった。それゆえ、売り上げのうち当選金に回すのは五割以下と定められ、銀行に手数料として一割弱が払われるほかは、総務省所管の法人を通じて自治体に配られる仕組みとなっている。中でも自治総合センターと日本宝くじ協会が広報事業の二大元締め団体であり、いずれも総務省の元事務次官が理事長を務める。
 自治総合センターは、年に九十七億円を収益金からもらい、宝くじの広報のための文化公演や環境保全イベントを年に二千回以上行っている(外部委託含む)。
 中身を見てみよう。
「宝くじまちの音楽会」の開催要綱を見ると「自治体が主体となり、南こうせつ、岩崎宏美、岡村孝子のいずれかを使い、八百人以上の入場が見込める公立文化施設で行うこと。入場料は二千円とし、全額センターに納めること。その代わりにセンターが経費を助成する」とある。
 うーん。なぜあらかじめ出演者が決められているのか、そもそも公益性があるのか不明で、自治体にとってありがたいのか微妙だ。〇八年度は十七の自治体で実施された。
 環境保全イベントは、東京都葛飾区の「自然観察会」、福井県高浜町の「砂浜のクリーン活動」など。自治体が立案して申し込むと、二百万円以内は補助する。こういうイベントなら、工夫すればさして金はかからない。助成するまでもないだろう。
 官僚の天下りのために宝くじの収益をピンはねしているだけではないのか。
 自治総合センターの二橋正弘理事長(68)は東大法学部を卒業後、自治省に入省、事務次官に昇りつめた。その後、別の宝くじ関連法人の理事長をはさんで、小泉、福田内閣で官僚トップである官房副長官を務めた人物だ。
「事業仕分けしに先立ち、尾立源幸参院議員、菊田真紀子衆院議員ら「仕分け人」がこの法人を視察すると聞き同行取材した。
 自治総合センターの事務所に一歩足を踏み入れて驚いた。広い、五百坪はあろう。それなのに、職員は派遣を含めて十五名。二橋理事長とやはり天下りの常務理事が出迎えたが、その後ろに控える若い女性職員たちは皆、スカートとベストの制服を着ている。いまどき珍しい、昭和時代の丸の内OL風だ。
 窓の下には首相官邸の屋根が見える。その向こうに国会、霞が関の官庁街、皇居が広がる。二橋理事長はかつての職場を見下ろす最高のロケーションを手に入れていた。
 フロア内を回ると「会長室」、「顧問室」と書かれた部屋があるので開けてみた。いずれも空室で、重役用の机と椅子のほか、革張りのソファが置いてある。だが、棚は空。使われている形跡がまったくない。会長、顧問は非常勤で、非常勤理事が八名いる。ほとんど出勤がないらしい。
 二橋理事長は公表を拒否したが、公認会計士の尾立議員が財務諸表から割り出したところ、このオフィスの家賃は月一千五百万円近いという。もったいないことこの上ない。
 オフィスの隅に新聞コーナーがあった。朝日、毎日、読売、日経新聞が各三部ずつおかれ、スポーツ紙もある。眺めのいい事務所で新聞を読んで毎日を暮らす、天下り官僚の生活ぶりが目に浮かぶ。
 なお、取材をした一時間ほどの間に、事務所の電話は一本も鳴らなかった。

 二十一日、五反田のTOCで行われた事業仕分けで「宝くじのからくり」が議論された。仕分け人は、寺田学、菊田衆院議員、尾立、亀井亜紀子参院議員と民間人だ。
 二橋理事長は、両脇に佐竹敬久秋田県知事と伊藤祐一郎鹿児島県知事を従えて座らせた。その横に日本宝くじ協会の遠藤安彦理事長(69)が座る。知事らは宝くじ収益の受益者代表として公益法人側の応援に呼ばれたそうだ。地方交付税の配分をたてに知事をも従える元総務官僚の力を見せ付けている。
 伊藤知事が議論の口火を切った。
「なぜ私どもが仕分けされるのか不可解。地域主権国家としておかしい」
 自治体が発行する宝くじの金で賄う事業を、国が仕分けることに異を唱えた。
 民間仕分け人の福嶋浩彦前我孫子市長が切り返す。
「自治体事業を行う団体のトップを、国の官僚OBが占めていることこそ地方自治に反する」
 尾立議員が二橋理事長に質した。
「なぜ、こんな豪華な事務所を借りるのか」
「いろいろな人が来る。応接に必要だ」
「ふざけんな」、「まじめにやらんかい」と傍聴人からやじがとぷ。
 二橋理事長らの年俸は二千万円。
「元次官なのでそういう処遇になる」(伊藤知事)
 二橋氏といえば、福田内閣の官房副長官時代に行革を潰したことで知られる。〇七年、渡辺喜美行革相が雇用・能力開発機構、労働政策研究・研修機構の廃止や、官僚が天下りを繰り返す「わたり」の禁止を求める報告書をまとめたときのことだ。事務局が報告書を記者に配り終え、渡辺大臣が総理に報告している間にどんでん返しがおきた。
 二橋氏が町村信孝官房長官のもとに駆け込み、報告書を差し替えたのだ。新たに配られた報告書を見ると、廃止する法人名や「わたり」禁止条項が消えていた。
 だが、今回はさすがの二橋氏も打つ手がなかった。仕分け人が佐竹知事に感想を求めると、秋田訛りでとつとつと本音を漏らした。
「(報酬は)知事より高いです。知事の仕事のほうがたいへんだと思うんですけどね。都道府県にも天下り団体はありますが、報酬は相当低く抑えていますよ」
 日本宝くじ協会の非常勤理事の報酬が明かされた。事務局長が八百三十万円、事務局次長が一千七万円、審議役が六百七十万円、顧問が二百六十万円……。驚いた。宝くじとは、庶民の夢でなく、天下りの夢をかなえるためにあるらしい。
「本来、自治体に直接入るべき金を総務省の公益法人が取り上げて配っている。自治体が自由に使える金を増やしてください」(福嶋
前我孫子市長)
 そもそも、宝くじの存在を知らない人などいないので、広報事業は不要との意見も出た。
 PR施設の宝くじドリーム館も問題になった。銀座のドリーム館の運営費は年一億七千万円、大阪のシティエアターミナルのドリーム館は六千八百万円するという。寺田議員が、宝くじ協会が三年連続で助成した百以上の法人を調べたところ、五十九の法人に百八名の天下りがいた。
 熱い議論がかわされ、あっという間に二時間が過ぎて評決が下った。
「宝くじにかかる広報、公益事業については廃止が七名、見直しが五名。天下りの高額給与、豪華なオフィス、複雑な交付形態、無駄な宣伝広報事業、これらの問題が解決されるまでは、総務大臣は宝くじの販売を認めるべきではない」
 会場から拍手が沸いた。メディアもこぞって報道し、同じ日の小沢氏不起訴処分のニュースがかすんだ。枝野幸男行政刷新大臣の狙い通り「ショー」は大成功だ。
 ただし、私はこの評決に違和感を覚えた。天下りが問題なら天下りを禁じればよい。あるいは天下り団体に金を流すのを止めればよいだけだ。また、事業仕分けに法的拘束力はない。そもそも民主党には天下りを禁止する気もない。

 二月の国会で、みんなの党の江田憲司衆院議員は、首相にこう迫った。
「天下りというのは、せいぜい七十歳だと思っていましたよ。でも調べたところ、七十八歳、九十歳の人がいるんですよ。六十五歳以上の人たちは、いま辞めても共済年金がもらえ生活が保障されています。辞めたら路頭に迷う人は別にして、こういう人は一掃していただけませんか。天下り根絶と公約したんですから」
 仙谷由人行政刷新大臣(当時)が割り込んだ。
「この方たちの就任は自民党政権時代のこと。政権がかわったら一挙にクビを切れ、こういう強引な話なんでしょうか」
 鳩山政権は天下りの味方に成り下がったのか。
 しかし、民主党は自民党には厳しい。赤松広隆農水大臣は一月、国会議員や地方議員が土地改良区等の役員を兼任するのを止めるよう通達を出した。兼任は自民党議員に多く、利権はがしが目的である。
 その一方で小沢一郎幹事長の“兼任”は見逃しているのだ。みんなの党の山内康一衆院議員は、小沢氏が社団法人競走馬育成協会という農水省系の天下り団体の会長を兼任していることを指摘した。質問主意書を出し、小沢氏の辞任を求めたところ、政府はこう答弁した。
「競走用馬の育成技術の向上に関する普及、啓蒙及び指導等の事業を行っている団体であることにかんがみれば、議員が役員を兼職しているからといって、当該団体の業務活動に支障を生ずるおそれはない」
 しかし、農水省はそう考えていなかった。〇七年、遠藤武彦農水相が農業共済組合の補助金不正受給で辞任したことをうけて、農水省は国会議員が役員を兼任する農水関係団体をリストアップした。兼任議員が大臣に就任した際、役員を辞めるよう進言するためだ。そこには土地改良区と並んで、小沢氏が会長を務める競走馬育成協会も挙げられていたのである。
 仕分けられるべきは、天下り役人にひけをとらない厚顔の民主党ではないか。

週刊文春2010年6月3日号
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いまだ検察側「控訴ゼロ」施行1年「裁判員裁判」の難題

2010-06-11 00:45:00 | 週刊誌から
 鳴り物入りで始まった裁判員制度も5月21日でスタートから丸1年を迎えた。最高裁の自己採点は“概ね順調”だが、水面下で難題が噴出しているのも事実。
「目下、最大の問題は公判前整理手続きの長期化です。対象事件で起訴されたのは20日までに1664人ですが、判決が言い渡されたのは約3分の1の530人に留まっています」(司法記者)
 素人が審理に加わる以上、それ相応の準備は必要だろう。しかし、
「スタート後の公判前整理手続き期間は平均4・2カ月と、08年の対象事件の平均3・4カ月を大幅に上回る。慎重になるのは分かりますが、裁判の開始が遅れれば被告人の拘置期間も長引き、証人の記憶が薄れるなど弊害は多い」(同)
 逆に、裁判員の負担を考慮してか、審理自体は3、4日で終わってしまう。
「そのため、被告人質問も通り一遍な内容に陥りがち。検察が傍聴席に背を向け、裁判員に向かって説得するパフォーマンス的な立証も増えましたね」(同)
 これで被告人の真意に迫れるのか、疑問は残る。
「検察側も弁護側も限られた時間の中で争点に即した立証を行おうとするので、審理が“儀式化”している印象を受けます。また、検察側の控訴がこれまでゼロというのは驚きです」
 元東京高事の牧野忠弁護士は手厳しい。
「昨年12月、佐賀地裁は殺人罪に問われた被告人に懲役5年の判決を下しましたが、検察の求刑は懲役13年。これまでなら検察が量刑不当で控訴してもおかしくない事例です」
 この背景には最高裁の“一審尊重”の方針がある。つまり、裁判員の判断を重んじろ、というワケだ。
 高裁で控訴棄却となれば一審判決以上に重い先例となるため、検察は慎重にならざるを得ない。
「さらに、性犯罪への対応は急務。強制わいせつ事件の犯人が別の強姦致傷罪で起訴された場合、併合審理の可能性がある。そうなれば、対象外の強制わいせつ事件の被害者も裁判員裁判の法廷に引っ張り出されてしまう。被害者の心情を考えて例外規定を設けるなど、裁判員制度にも“仕分け”が必要だと思います」(同)
 初の死刑判決も時間の問題。険しさは増すばかりだ。

週刊新潮2010年6月3日号
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原則「非課税」ラブホ経営もできる巨大集金装置「宗教法人」に課税せよ!  ジャーナリスト 山田直樹

2010-06-10 01:06:46 | 週刊誌から
運慶を落札した真如苑に、11億円超の供託金を没収されてもヘッチャラな幸福の科学……そんな「宗教法人」の金満ぶりを支えるのが、本業「非課税」、副業も「軽減税率」という優遇税制だ。ジャーナリスト・山田直樹氏が、そんな「既得権」の見直しを説く。

「オレが題目をあげるから、これだけのカネが集まってくるんだッ!」
 池田大作・創価学会名誉会長は、そう言い放ったという。昭和50年代半ばのある日、池田側近だった元学会幹部は、勤務先の「聖教新聞社」入り口近くで池田に呼び止められた。玄関右手の一室に招き入れられると、そこにはパンパンに膨れ上がった“麻袋”の山があった。池田はそのひとつの口紐を解くと、持ち上げて逆さにした。ドドッと落ちてきたのは、万札の束、束、束……。冒頭の池田発言は、そのときのものだ。
 数々の“池田金満伝説”の中で、この証言ほど「創価学会とカネ」の実態を端的に物語るものはないと私は思っている。その池田自身の所得額は、いわゆる「長者番付」によれば昭和50年代当時、1億3333万円~5742万円の間で推移している。昭和58年度分からは、納税額のみが公表され1403万円~8721万円(平成16年度分)となっている。が、納税額の公開も、「個人情報の保護」の名のもとに2006年に廃止されてしまう。
 詳細は近著、『新宗教マネー 課税されない「巨大賽銭箱」の秘密』(宝島社新書)を参照いただきたいのだが、そもそもこの制度が始まったのは1950年。公示によって第三者のチェックを受ける狙いがあった。所得税だけでなく、法人税、相続税も含み、それぞれ1000万円超、4000万円超、課税価格2億円超のものが対象となる。
 池田がこの番付に登場したのは、『人間革命』などのいわゆる“池田本”印税による所得税高額納税者だったからだろう。ちなみに公表最終年度の長者番付によれば、「幸福の科学」総裁・大川隆法の納税額が1億4160万円、妻のきょう子が1668万円、「立正佼成会」会長・庭野日鑛は1124万円だった。
 06年に公表が廃止されたのは所得税だけではなかった。後に詳述するが、本業の宗教活動には原則「非課税」の宗教法人といえども、「営利事業」を行う場合には当然、「法人税」の納税義務が発生する。国民にとっては、宗教法人が納めるこの法人税、つまりどれほどの“儲け”があるかということが、唯一、その宗教法人の経済活動を見極めるバロメーターだった。ところが、所得税と共に法人税まで公表されなくなって、国民はそうした監視の手段を失ったのである。
 一方、高額を納税する一般の営利法人はほとんど株式を上場しているから、利益がいかほどか、業績の伸長具合とともに投資家にディスクローズする。否、そうしなければ市場の不信を呼ぶし、もし虚偽情報を開示したなら金融商品取引法などによって、たちまち手が後ろに回る。それに対して、教祖サマの個人収入であれ、教団の所得であれ、開示したがらないのが宗教法人。「営利を求める法人でなく、公益法人だから」というのが、その言い分だ。
 公益法人には、旧民法悦条(08年以降は、一般社団・財団法人法)の規定によって設立された社団法人・財団法人のほか、学校法人、医療法人のように「特別法」で成り立つ法人もある。これらを「広義の公益法人」と言うが、宗教法人も宗教法人法を根拠とする広義の公益法人である。
 政府による「事業仕分け第2弾」後半戦のターゲットは公益法人だったが、民主党が血道を上げたのは、政府からの補助(資金補給)や天下りの受け皿となっている公益法人だけで、このような「広義の公益法人」は端から対象外だ。また現在、公益法人制度改革も進んでいるが、ここでも宗教法人を含む「特別法組」は、除外されている。その中でも、たとえば学校法人なら文部科学省、医療法人なら厚生労働省がそれなりの監督機能を果たしているのに対して、宗教法人の場合は、所轄庁(都道府県や文科省)に実質的な監督権限はない、と言っても良いくらいだ。
 もちろん、その点では宗教法人側にも言い分はある。学校法人は「私学助成金」など国庫から援助を受けているが、宗教法人への国家援助は憲法違反であり、大小を間わず国から、原則、一銭も貰っていない。仏像や建物が「国宝」に指定されても、改修・修理は所有者の自己負担だ。京都や奈良の伝統仏教寺院は、その多大な費用を負担している。こうした教団は主張するだろう、「日本の伝統文化を自前で守っているのだ」と。

「坊主丸儲け」という言葉がある。多くの世論調査で6割程度の日本人が「無宗教」、「無信仰」だと回答し、初詣は仏閣、お宮参りや七五三は神社、でも、結婚式は教会で、というスタイルに日本人は何の疑問もいだかない。ところが、一日一葬儀となるとお布施やら戒名代やらお墓の購入やらゴッソリ持っていかれる、そのことへの違和感が“丸儲け”という言葉を生んだのだろう。もちろん、明治神宮(約300万人)をトップに毎年公表される初詣客数に賽銭額を掛けてみれば、著名な社寺がどれほどの高収益を得ているかは推測できる。宗教法人が「巨大集金装置」と呼ばれる所以である。
 “丸儲け”の根拠は、もうひとつある。宗教法人が原則「非課税」である点だ。法人格を持った宗教団体は、先述したように「公益法人」である。教義が何であれ、崇める対象が誰であれ、法人格を持った宗教団体は、法人税のみならず事業税、都道府県民税、市町村民税、所得税に地価税、固定資産税等々、多くの非課税特権がある。しかもこの特権は条件付きの「免税措置」ではないので、一旦、法人格を取得すれば、年度毎の書類を提出するだけで半永久的に継承される。
 さて、“坊主丸儲け”伝説では、宗教法人はどんな商売をやっても非課税と思い込みがちだが、それは違う。宗教法人の活動には、非課税の「公益事業」(本来の宗教活動)と、課税の対象となる「収益事業」(一般の法人の営利活動にあたる)がある。ただし、課税対象といっても、収益事業には「軽減税率」が適用される。「本来の宗教活動だけでは、教団・組織の維持が難しいだろう」という性善説に基づいて、一般営利法人の税率が30%なのに宗教法人の場合は22%と優遇されるのだ。しかもこの収益事業から生じた所得を公益事業に差し出せば、2割の損金処理となり「みなし寄付金」となる仕組みさえある。
 本業「非課税」、副業「低率課税」――ここに宗教法人のウマ味がある。学校法人など他の公益法人と異なり、宗教法人は所轄庁の「認可」でなく「認証」だけで成立するが、95年のオウム真理教事件を契機とした宗教法人法改正以降、宗教法人の認証ハードルは高くなった。すると、宗教法人の設立数は減ったものの、代わりに、休眠中の宗教法人が売買される、という新たな事態が生まれている。宗教法人がそれだけ“おいしい”という証だろう。
 政府が推進している公益法人制度改革の対象に、なぜ宗教法人が入らないのか。たしかに政府は宗教法人に一銭の援助もしていない。御布施や喜捨は“善意”でなされるものであって、強制で集めたものではない。そもそも営利を目的としていないし、政府(国)が予算を割けない文化活動に多大の貢献をしている。理屈はいろいろあるだろう。が、以下の事実をどう考えるか。
 創価学会は全国に1200以上の「会館」施設、13の墓苑、そして研修施設を持つ。墓苑の規模は東京ドーム300個分以上だ。また、学会以外の宗教法人でも都心の一等地に本部や拠点を構えるところは少なくない。一昨年には真如苑が、国宝級の運慶を巨額で落札。幸福の科学は昨年の衆院選で、全国で337人の公認候補を擁立したが、いずれの候補も法定得票数に及ばず落選。没収された供託金は約11億円に上る。それでも彼らが困窮した事実はまったく無く、今夏の参院選にチャレンジする。

 このような資産形成が可能なのは、資産べースの課税がないからだ。一般営利企業からすれば、夢のような話である。もちろん御布施や寄附にも課税されない。昨年6月に長野県のラブホテルを「運営」している宗教法人に対して、「御布施」として処理された宿泊料や休憩料の一部が課税対象だと国税局のメスが入った事件があった。「宗教法人がラブホテルを経営できるの?」と、世間の耳目を集めた一件だ。しかしこの事件には、見落とせない事実がある。先述の宗教法人の収益事業の中には「旅館業」も含まれる。1泊1000円以下なら非課税で、それ以上は課税(といっても軽減税率での)対象だ。つまり、旅館業と言い張れば、宗教法人がラブホテルを経営しても法律違反ではないのだ。昭和30年代に当時の文部省が通達した一片の文書に「風俗禁止」のような含みはあるが、法律的には禁止されていない。要するに、この一件で国税当局は、ラブホテル経営が「宗教法人の収益事業」と認定した上で課税したのである。
 もちろん、宗教法人の多くは現在、このような露骨な商法を行っていない。というより、そんな隙は見せていない。だが、思い返していただきたい。創価学会が新宗教の代表として起こして来た事件は一体どのようなものだったのか。
 89年6月30日、神奈川県横浜市の廃棄物処理業者から警察に「古金庫の中に札束が入っている」との通報があった。その額1億7500万円余。それが報じられると中西治雄なる創価学会幹部が自分が“持ち主”だと名乗りを上げた。彼は、金は私物で金庫に入れていたのを忘れていたなどと弁明したが、矛盾も多く、「学会マネー」に対する世の不信は否応なく膨らんだ。
 その後、学会はルノワール作品の不可解な取引に関わり、2度にわたる国税の税務調査で追徴金を支払わされてもいる。これらの事件は、95年の宗教法人法改正の際に蒸し返されたものの、自公という連立政権がスタートしてからは記憶の闇の奥へと捨て去られた。
 そして、いわば創価学会が切り拓いた“ビジネスモデル”を、後発組の多くの宗教法人が踏襲してきた。公明党が政権入りした際、かつての仇敵だった新宗教団体の一部からは、「これで宗教法人は安泰だ」というような声が聞こえ始めた。さらに昨年の衆議院選挙では、民主党候補者の多くが創価学会以外の宗教団体の支持を受けて当選している。公明党のあり方を黙認してきたこの国の政治家に、「幸福の科学=幸福実現党」という“政教一致”を批判することはできないだろう。このような状況下で、宗教法人に課税せよという“真の改革”がますます後退するのは必定だ。
 民主党政権は、以下のような“拳”を挙げてはみせた。昨年10月22日の税制調査会、全体会合でのやり取りを引用する。語るは増子輝彦・経済産業副大臣。
<1つの問題提起をさせていただきたいのですが(略)宗教法人の税制について少しご検討いただけませんか。これはやはり国民的視点から言えば、問題ありという声が非常に多いんです。
 私の友人に坊さんも神主もいます。みんないろいろなことを言っています。だけれども、やはり国民的な視点、観点からすれば、宗教法人に対する税の在り方というものを、私は民主党だからこそ見直すべきではないかという気がいたしております。問題提起としてさせていただきますので、御検討いただきたい>
 これに峰崎直樹・財務副大臣は、こう返す。
<しっかりと提起を受け止めて、どうするかということをまた皆さんにご相談もしたいと思います>
 複数の宗教法人関係者が、増子副大臣の発言に“すわ一大事、困ったことになった”と思ったという。ところが議論は、これっきりぱたりと止まってしまう。
 税調が宗教法人を話題にしたのは、このときだけではない。02年の自公政権下でも、<こういったもの(宗教法人)も課税のあり方を検討する場合にはくわえていかなければいけないのでは>という意見が出たことを、座長の水野清氏が明かしている。
 つまり、この問題は、語られはするが、ずっと“宿題”のまま店晒しにされてきたのである。
 世界中で日本ほどの宗教法人天国はない、という声をよく聞く。どんな宗教でもOKという精神風土がそうさせているのか、憲法があまりの自由を保障してしまったためか、理由は定かでない。国の税金の使われ方を精査するのは、それはそれで緊要な課題だ。が、それと同時に「非課税特権」という、いわば隠れた巨額の“補助金”がこの国にはある。そして真面目な納税者は、非課税特権の分まで、税金を支払っていることを忘れてはならない。くどいようだが、宗教法人はその気なら、営利法人同様の事業を堂々と行え、収益を上げたとしても軽減税率が適用される。こんな仕組みを放置したままでよいのだろうか。財源不足が極まる中、非課税特権は莫大な“埋蔵金”ともなりうる。
 改めて言う。「宗教法人」に課税せよ!(文中敬称略)

週刊新潮2010年6月3日号
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宮崎哲弥のDVD教養主義 連載19 現代においてファシズムは可能か? 『ウェイヴ』

2010-06-09 00:37:45 | 週刊誌から
『ウェイヴ』 2008年劇場公開 2010年4月発売 アット エンタテインメント 3990円(税込)

 あるクラブでの会話。
 一人の若者が問う。「なあ、教えてくれよ。現代に反抗すべき対象があるか? 何もありゃしない。皆ただ楽しけりゃいいんだ。もう僕たちには団結して一緒に目指すゴールなんかないのさ」
 もう一人の若者が応じていう。「いまはそういうご時世なのさ。ネットの検索ワードの一位何だか知ってる? “パリス・ヒルトン”だぜ!」
 思わず「『大きな物語』が潰えてしまった日本の若い世代の嘆きだ」などと短絡したくなるところだが、これはドイツ映画の一場面のやり取りなのだ。
 本作は「現代においてファシズムは可能か」という危ない主題を少し変わった趣向で追究した社会派ドラマだ。
 高校での一週間限定の演習授業。主人公の教師、ヴェンガーは「独裁制」をテーマとした教室を担当する。独裁政治やファシズムを、単なる聴講に留まることなく、自由な討議や実地調査、ロールプレイングなどを通して理解していくというのが趣旨だった。
 初日の月曜、ヴェンガーは「いまのドイツで独裁なんてあり得ない」と嘯く生徒たちに、教室内でファッショ的状況を作ってみることを提案する。彼自身を独裁的指導者に見立て、「ヘル・ヴェンガー」(ヴェンガー様)と敬称を付けて呼ぶ、発言はヴェンガーの許可を要する……などのルールが「皆で、民主的に」制定された。
 初めはあくまでロールプレイング学習のつもりだった。しかし事態は思わぬ方向に転がっていく。
 火曜日には、教室の全員が一丸となって体を動かす運動に快楽を覚え、個人性は団結を妨げる要素だと知る。さらに連帯感を高めるために「制服」が決められる。
 水曜日には「我々」の名前を決議する。それが「ザ・ウェイヴ」。ドイツ語で「ディー・ヴェレ」。本作の原題だ。さらに「波頭」を図案化したロゴも作られた。
 木曜。「ディー・ヴェレ」はすでに教室外にも波及しはじめる。授業ではナチスを思わせる敬礼法が採択される。役割演技と現実の境目がますます薄くなっていった。そして運命の週末を迎える……。
 冒頭に引いた問答は、この授業に参加した生徒二人によるものだ。このような大目的の喪失と漠たる焦燥感を下地とし、そこに社会規範の緩み、家庭の崩壊、格差の拡がり、個人的ルサンチマンなどが塗り重ねられる。そうして完成した絵図は……。
 ドイツで二四〇万の観客を動員したそうだ。人々は個の不安や不満を忘れるため、全体性に熱狂する。対岸の火事か、それとも他山の石か?

文/みやざきてつや 1962年福岡県生まれ。主著に『映画365本――DVDで世界を読む』など。

週刊文春2010年5月27日号
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[特別読物]裁判員制度導入1年!司法制度大改悪で「裁判官の卵」が闇金融に搾られる

2010-06-08 01:09:22 | 週刊誌から
ジャーナリスト 青沼陽一郎

「裁判員制度」誕生から、ちょうど1年。ようやく裁判に「市民感覚」が反映された……かと言えば、さに非ず。むしろ、司法制度「大改悪」で裁判官になれるのは一般市民とは乖離した金持ちや野心家ばかりに。そんな実状をジャーナリスト・青沼陽一郎氏が指弾する。

 司法制度改革の目玉、裁判員制度が施行されて、5月21白で丸1年になる。
 裁判員裁判の導入には、ようやく司法に「市民感覚」「民意」が反映される、と大きな期待が寄せられた。たとえば10年前、日本弁護士連合会(日弁連)が非公式に行った『市民感覚から見ておかしいと思われる裁判事例』というアンケート調査では、こんな裁判官が槍玉に挙げられている。
 夫の暴力による離婚訴訟の和解の場で、原告である妻に向かい男性裁判官がこう言った。「自分も女房を殴ることがある」/サラ金の厳しい取立で暴力まで受けた事件の判決で、裁判官が「権利の行使だから、1回くらい殴っても構わない」/不当な単身赴任を命じた会社を訴えた裁判で、会社を尋問中の弁護士に、裁判官が割って入った。「原告代理人、我々宮仕えの身では配転の期間の目処を知ろうというのは無理ですよ」……。
 確かに、酷い。しかし、翻って裁判員制度の導入によって、裁判に市民感覚や民意が反映されたなどというのは、全くの幻想に過ぎない。いまや裁判官になるのは、ある偏った階層の人間だけ。むしろ、“非常識”が増長されつつある。
「そんなことは、10年前に司法制度改革審議会(司法審)が、弁護士を増員しようと言い出した時から、わかっていたことです!」
 一連の司法制度改革に反対してきたある弁護士が憤慨するように、それは弁護士の増員を目論んで司法試験制度を変更したことに端を発している。
 いわゆる小泉構造改革と連動した司法制度改革は、年間3000人の「法曹人口の増加=司法試験合格者を出すこと」を目指した。昭和から平成2年まで長らく続いた“司法試験合格者500人時代”の6倍の人数である。その後、先行的に合格者は増え始め、司法制度改革が本格的に議論されはじめた平成11年には1000人を突破。平成16年にはほぼ1500人に到達。平成10年の秋には、なんと2500人が司法修習を終えるまでになった。
 だが、そこに浮上したのが財源の問題である。
“500人時代”には、学歴や資格に関係なく、誰でも自由に司法試験を受験することができ、合格すると2年の司法修習を経て裁判官・検察官・弁護士としての資格が与えられた。この2年間は司法教育に専念するため副業、アルバイトは禁止。その代わり、修習生には国家公務員キャリア組の2年目とほぼ同等の給与が支給される。こうして一人前の法曹人になるための環境を国家が保障してきたのだ。
 ところが、合格者が6倍に増えるとなると、司法修習の費用も6倍に増える。
「増員計画が持ち上がった時の試算では、せいぜい1500人の面倒をみるのが精一杯。そこで、国は、司法修習ばかりか司法試験の制度までを変えてしまったんです」(前出弁護士)
 まず、それまで2年だった司法修習期間を半分の1年に短縮化。替わって司法試験を受けようとする者は、各自が事前に専門教育を受けなければならなくしたのだ。「法科大学院(ロースクール)」の誕生だった。この卒業者にしか受験資格を与えない新司法試験制度を導入したのだ。もちろん、学費は個人負担。その金額だって決して安くはない。
 平成16年から、全国に74校(国立23、公立2、私立49)設立された法科大学院のうち、国立の授業料は一律年間80万4000円。これに初年度は入学金28万2000円が必要となる。ロースクールには、法学既修者(大学法学部卒業者)で2年、そうでない者は3年通わなければならないから、後者の場合には、国立でも卒業までには269万4000円を納めなければならない。
 これが、私立となればさらに物入りだ。例えば、早稲田大学の場合、入学金26万円(同大出身者は免除)、学費が年120万円、雑費11万円と、初年度だけで合計157万円に。弁護士が数多輩出してきた中央大学では入学金30万円、授業料140万円、雑費30万円と合計200万円にも上る。
 当然、これに通学年分の生活費も必要となる。
 新司法試験制度は、旧制度と併用で平成18年度から実施されてきたが、
「昨年9月、日弁連がロースクール出身の司法修習生52人を対象にサンプリング調査をしたところ、55・8%の修習生に何らかの借金があることがわかりました。その平均は407万円。最高では1262万円もの借金を抱えている人がいて驚きました」(日弁連幹部)
 こうした実状を踏まえ、今年4月1日に日弁連会長に就任した“市民派”宇都宮健児弁護士が、会長選当選直後の記者会見で、
「弁護士になった時には多重債務者になっている」
 と発言し、制度の見直しにまで踏み込んでいた。

 彼が“市民派”と呼ばれる所以は闇金融との戦いや多重債務者救済といった活動歴にある。だが、宇都宮弁護士の長年の活動が、皮肉にも仇となる出来事がここへ来て起きている。
 来月18日から、改正貸金業法が施行されるのだ。これに伴い、グレーゾーン金利の撤廃と同時に、債務で苦しむ人を減らすことを目的に、「総量規制」が実施される。金融業者が貸し出す際の限度額を、債務者の年間総収入の3分の1に規制するわけだが、「法科大学院に通う学生にはほとんど収入なんでありませんから、勉学のために借金することもできなくなるんです」(前出弁護士)
 その上、さらに、である。
 これまで併用されてきた、旧試験制度が本年度で最後となるのと同時に、今年11月から、司法修習生に給与が支払われなくなるのだ。それでも、副業は禁止のまま。つまり、司法修習期間1年間の生活費も自前で捻出しなければならなくなる。
 前出の日弁連幹部が顔を曇らせる。
「先ほど紹介したサンプリング調査は、まだ国から給与が支払われていた時代のものです。それでも平均400万円の借金に追われていたというのに……。まともな金融機関から借金をしようにもできない以上、弁護士や裁判官になるために闇金融に手を出す者が続出する可能性だって否定できません」
 そこで国は、修習生に限って、11月から「貸与制」を導入する。給与廃止の代わりに、ほぼ同額を国が修習生に“貸してあげる”のだ。返済は5年間据置の、10年間の年賦均等返還。結局は国を相手に借金を増やすことになる。しかも、
「司法修習を終えても、最終の試験に合格できなければ、資格は与えられません。そうなると国への借金が残るだけです」(同)
 同様のことは、ロースクールにも言える。闇金に走ってまでロースクールを卒業しでも、司法試験に合格できなければ水の泡。しかも、新たな司法試験は「三振制」を導入していて、5年以内に3回受験しても合格できなければ、受験資格そのものを失ってしまう。「そうまでして弁護士になったからには、金儲けをしようと思うのが人情でしょう。そうでなくても、負債を抱えて、返済できずに破産してしまえば、その時点で弁護士資格を失う。基盤も何もなくなるから、必死で稼ぐ。社会正義の実現も人権擁護もそっちのけ。司法制度改革が掲げた“市民の為の司法”なんてほど遠いものになる」(同)

 そもそも、弁護士の増員は構造改革が目指した「市場原理」導入と密接に結びついている。国の規制がなくなる分、自己責任も増す。そのために、弁護士の増員が叫ばれたのだ。同時に過当競争で弁護士費用も安くなると見込まれた。だが、気が付けば、仕事のない貧困弁護士が急増している。
 一方で、市場原理からすれば、多額の負債を抱えてまで過当競争の世界に飛び込むようなハイリスク・ローリターンはもっとも敬遠される。かくして、優秀な人材は他業界へ流れていく。実際、平成16年に7万2800人を数えた法科大学院の志願者は、7年目の今年、2万4000人にまで減っている。
「弁護士はともかく、そうまでして裁判官や検事になろうという奴は、庶民感覚からかけ離れたよほどのお金持ちか、負債まで抱えて権力を握ろうというよほどの野心家。そうでなければ、現実感覚に乏しいよほどのパカ」(別の弁護士)
 昨年8月、東京地裁で初めての裁判員裁判が開かれた際、マスコミはこぞって、この新たな制度を絶賛した。しかし、平成20年度の最高裁のデータによれば、裁判員裁判の対象となりうる事件は、全国の地方裁判所の刑事通常事件9万3566件中、わずか2・5%に過ぎない。民事・行政、刑事、家事、少年事件すべてを合算した事件数からみると、わずか0・05%。残りの99.95%は、すべて裁判官が裁いている。
「裁判所と市民の感覚に乖離があるとすれば、それこそ民事事件や離婚や相続トラブルなどの家事事件、それに痴漢菟罪で問題となったような軽微な刑事事件で、そうしたものはずっと裁判官が単独で裁いているんです」(司法記者)
 冒頭に紹介したような非常識裁判官の事例も、一般市民が救いを求める民事や家事裁判でのもの。そこに、新司法試験制度によって、もっと庶民感覚に乏しい裁判官が加わる。弁護士だって味方にはなってくれない。
 所詮、裁判員制度は、裁判所への不満を逸らす国民の“ガス抜き”に過ぎないのだ。その惨状は裁判所内部からも聞こえて来る。
「最近、司法修習で裁判所にやってくる修習生のレベルが落ちているような気がしてなりません」
 とは、40代現職の裁判官。
「同じ年代の青年と較べても、どこか一般常識や知識に欠ける気がします」
 27・6%というロースクール卒業者の司法試験合格率(昨年度)が、その危倶を裏付けている。

週刊新潮2010年5月27日号
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悪役モデルにされた「遠山敦子」元文科相の言論統制

2010-06-07 00:49:26 | 週刊誌から
 天下り宮僚の横暴という、事業仕分けの動機にもなったテーマの芝居が上演された。永井愛作・演出の「かたりの椅子」。実は官僚のモデルは遠山敦子元文部科学大臣(71)だが、嫌がったご当人、“言論統制”まで敷いたというので…。

「先月、劇作家の永井愛さん(58)の3年半ぷりの新作が上演されました。文科省から天下った文化振興財団の理事長が、造形作家のプランを退けて自分の案を強行し、実行委員たちが反対すると実行委員長を解任してしまう――。これ、永井さんの経験をそのまま劇にしたというんです」
 そう話すのは演劇関係者。世田谷パブリックシアターなどで上演された、竹下景子主演の「かたりの椅子」のことだが、「永井さんの経験」は説明が必要だろう。
 一昨年6月、東京の新国立劇場(新国)で演劇部門の芸術監督の“解任騒動”が起きた。前年9月に就任したばかりの鵜山仁監督が「コミュニケーションが取れない」からと、唐突に退任させられることになったのだが、その「理事長の独断」に対して理事や演劇関係者から不満が噴出。
 決定に至る過程の開示を求める声明が、亡くなった井上ひさし氏ら12人の連名で出され、朝日新聞は社説で<混乱のきっかけは、文部官僚出身で元文部科学大臣の遠山敦子理事長が、芸術監督全員を一気に代えようとしたことだ>と、異例の“個人批判”。で、嫌気がさして退任した理事の1人が、永井さんだった。
 つまり、劇中の銀粉蝶演じる雨田久里あまだくりという天下り理事長のモデルは、女性官僚の草分けで、小泉内閣の文科大臣まで務めた遠山女史だったのである。

「新国の問題では、私は劇場の評議員を務めていて遠山さんの決定に疑問を感じ、例の“声明”にも名を連ねた。だから、劇に出てくる理事長が遠山さんだと、すぐわかりました」
 そう語る演劇評論家の大笹吉雄氏によれば、
「劇中で、造形作家について理事長が言及する場面で、“コミュニケーション”という、騒動の際に使われた文言が出てくる。また、造形作家の提案が否決されるまでの議事の公開を求めた際、理事長から“守秘義務”を盾に拒まれるやりとりも、実際に永井さんが、理事会の内容を公表したことに対して、遠山理事長側から“守秘義務に反する”と抗議されたことそのままです。ちなみに永井さんは劇場に守秘義務という内規はないことを突き止め、理事長に反論したのですが」
 永井さんに聞くと、
「新国に理事として関わって私が目の当たりにした官僚主義を元に取材を重ねたものですが、理事長は遠山さんそのままではない。官僚言葉しか話さない彼女そのままだと、面白い劇にならないからです」
 ともあれ大笹氏によれば、
「自分が“解任”を決めた鵜山さんが新国で上演した芝居が賞を取ると、授賞式にノコノコと出て行き“いい演出家がいて、いいキャストがいて、いい戯曲があって、いい舞台ができるのです”と、自分の手柄のようにスピーチする」
 という遠山サンだが、ご自身がモデルになると、
「公演を取り上げないよう、マスコミに内々に要請してきた」(新聞社の幹部社員)
 それに対して、
「一切そのような事実はございません」
 と否定するが、元大臣なら笑って流せなくちゃ。

週刊新潮2010年5月27日号
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週間鳥頭ニュース vol.051 今週の御題…幼児虐待  西原理恵子(漫画家)

2010-06-06 01:06:54 | 週刊誌から
みんな大好きな友達だったけど
お父さんが泥棒だった子は泥棒になった。お母さんが売春婦だった子は売春婦になった。
貧乏は治らない病気だ。
幼児虐待
少年院に入ってる友達はみんな親にひどいめにあってた。父ちゃんに殴られ父ちゃんに犯され
それでも友達の前では笑ってる
その父ちゃんはじいちゃんにばあちゃんにひどいめにあってる。
家をのぞくと
もう大人がこんなになったら助けられないよ。何やってもムダだ。
砲弾のとんでこない戦場。つか爆撃後
でも子供の将来はかえられるかもしれない。そうであってほしい。
私の夫はアルコール依存症で世間の人間に「意志の弱い酒のやめられない人間」と言われ続けた。
ひゃっほう
でも依存は立派な病気で、病気は医者しかみてはいけない。サイエンスでしか判断してはいけない。
はいここ。人生の試験に出ます。
虐待の親は病気だ。必要なのは世間の非難ではなく専門家のみの治療だ。

週刊新潮2010年5月20日号
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