PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

病院PSWのお仕事~業務件数

2009年09月03日 02時37分31秒 | PSWのお仕事


今、大学は夏休みで、学生は各地の医療機関や福祉施設で、実習に入っています。
でも、なかなか数週間の実習では、PSWの業務の全体像は見えにくいようです。

今回は、病院でPSWが担っている業務を、紹介しておきます。
あくまでも、僕自身の仕事の統計ですけどね。

業務分類による件数に沿っての、ランキングです。
以下、大雑把にわかるように、細かい数値よりも、全体に占めるパーセントで示します。
頭の中で、円グラフを描いて頂くと、イメージしやすいかも。

病院には、大きく分けて、外来のセクションと入院病棟があります。
また、病院PSWの業務には、大きく分けてケースワークとグループワークがあります。
実際にPSWが1年間に関わった支援人数ごとに見ると、
外来個別ケースが27%、
入院個別ケースが24%、
外来集団(主にデイケア)が43%
入院集団が6%となります。

グループワークは、どうしても集団単位なので、人数でカウントすると大きくなります。
でも、その活動グループを相談支援件数でカウントすると、全体の業務の3%に過ぎません。



入院患者に関わる相談で最も多いのが、「出口」に関わる援助です。
退院・転院に関わる事ですね。
外来患者の「社会復帰」に関する相談も、たくさんあります。
いわゆる社会参加に関わる事です。
この「退院・社会参加」の相談支援が、全相談件数の第1位(34%)を占めます。

入院中に退院先となる住居を失う患者や、入院の長期化により家族が世代交代して帰来先を失う患者さんもいます。
退院に向けては、個々の家族と連絡調整をしながら、不動産店でアパート物件をあたり、住まいの確保を図っていく必要のある患者さんもいます。
生活能力が低く単身での生活再建が困難な患者については、施設の利用も考えねばなりません。
旧・社会復帰施設(援護寮・福祉ホーム・グループホーム等)や福祉施設(救護施設・更正施設)等を確保する必要があります。
また、高齢化や合併症の進行により、精神科療養病棟や介護療養病棟を有する病院への転院を図らざるを得ないケースもあります。
退院後のことや、これからの社会参加のことは、やはりPSWが担わざるを得ません。
施設の利用だけでなく、精神障害者保健福祉手帳の申請などの制度利用にかかわる相談支援も、ここに入ります。



二番目に多い相談が、「お金」にかかわる相談です。
入院費や生活費等の、いわゆる「経済問題調整」にかかわる支援です。
全相談件数の24%を占めます。

他の診療科に比べると、精神科の医療費は格段に安いです。
それでも入院患者さんの場合、入院費は最低でも1ヶ月30数万円にはなります。
健康保険を使って3割自己負担でも、1ヶ月12~3万円は、ふつうの家庭にとって大変な負担です。
一定程度の所得のある世帯であれば、高額療養費制度等を用いて問題を解決できます。
でも、入院当初から生活保護の申請を検討しなければならないケースも結構あります。
住所不定のホームレスの方や、着の身着のままの身元不明の方が措置入院により搬送されてくる場合もあります。
即時対応が求められるケースが多く、かなりバタバタと調整を図らねばならないこともあります。
各福祉事務所との連携が欠かせない仕事です。
障害年金の請求にかんする相談支援も、ここに入ります。
かなりの数の障害年金請求を行ってきたと思います。



3番目に多いのが「受診・受療支援」です。
全相談件数の17%を占めます。

入院患者さんの他科受診調整なども含みますが、多くは外来での相談です。
どうしても精神科の特徴として、いわゆる未治療の「病識」の無い方がたくさんいます。
家族がまず病院を訪れて「うちの息子が…」「夫が最近…」という相談からスタートします。
PSWは家庭での様子などをお聞きしながら、ご家族とどうすれば良いか、一緒に考えていくことになります。
外来での相談は、通院中の患者さんだけでなく、他院治療中の方についても行います。
精神科医療のレベルを反映して、セカンドオピニオンを求める方はたくさんいます。
僕の勤務していた病院が、専門病棟や専門外来で特殊な治療も行っていたので、他の病院からの問い合わせもたくさんありました。
病気や障害に伴う生活上の問題に止まらず、病気の原因や治療に関する最新の情報や、治験や画像診断、薬の効果と副作用についてなど多岐にわたる電話相談がありました。
退院後の訪問看護や、受診中断者への家庭訪問なども、ここに入ります。



同率で第3位が、「心理社会的支援」です。
全相談件数の17%を占めます。

患者さんの様々な不安や、生活のさまざまな側面に関する相談ですね。
社会参加、経済的問題、受診受療に分類できない相談も含みます。
例えば、入院患者さんの権利擁護にかかわる相談・調整なども入ります。
精神疾患に関する知識の乏しいご家族への、心理教育的なアプローチもあります。
僕は、アルコール薬物病棟なども担当していたので、家族間の葛藤が著しい例も、たくさんありました。
世間一般でイメージされる「カウンセリング」と称される面接です。
クライエントの課題を整理し、本人や環境の力を引き出すことに焦点が当てられます。



第5位が、地域活動支援業務です。
全体の件数の4%に過ぎませんが、とても大事な仕事です。

患者さんたちの生活と社会参加を保障する、地域づくりにかかわる仕事です。
病院外の地域の関係機関や関係者と、連携協働して行う業務です。
ともすると病院は自己完結しがちな職場ですが、精神科病院が地域の一部である以上、常に意識して取り組まなければならない仕事です。
具体的には、地域の業務連絡会や医療連携ネットワーク、行政の精神保健福祉連絡協議会、自立支援協議会、自治体の事業や審査会への関与などです。
グループホームや地域支援センター・授産施設等の運営委員会への関与もあります。
フォーマル、インフォーマル問わず、地域の人とどれだけつながっていられるかは、病院PSWの財産にもなります。



第6位が、冒頭で触れたデイケアで3%。
第7位が、その他(1%)となります。


さて、少しは病院PSWの仕事内容がイメージして頂けたでしょうか?
あくまでも、僕が勤務していた病院での統計ですけどね。

病院によって、PSWの業務は違っていて、相当な幅があります。
逆に言うと、業務統計を見ると、その病院の性格やPSWに役割期待されているものが見えてきたりします。

各所属機関により、PSWの業務は本当に千差万別なので、ご承知置き下さい。
また、業務の分類方法や基準も色々なので、ご了解下さい。




※画像は、実習巡回指導で訪問した浴風会の本館。
 さすが、歴史と風格を感じさせます。
 本文の記事内容とは、まったく関係ありません。


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