今から11年前、2000年9月のこと。
アメリカから、ディヴィド・ルコント(David LeCount)さんが日本に来ました。
ウィスコンシン州デーン郡の成人精神保健福祉部長のソーシャルワーカーです。
彼は2週間の滞在中に、精力的に日本の各地を見てまわりました。
帯広、大阪、神戸、東京、名古屋、川崎、大宮。
それぞれの場所で、現地の精神保健福祉関係者たちとセミナーで交流しました。
東京セミナーでは、僕が前座を務めさせて頂きました。
日本の精神医療システムの現状をレポートし、彼はじっと聞いてくれました。
その内容は、後に「ルコント・レポート」としてまとめられています。
『日本の精神保健福祉システム改革に向けて~課題と勧告』
David LeCount著、木村真理子・古屋龍太監訳、永瀬修訳
日本精神保健福祉士協会『精神保健福祉』通巻50号;159~168頁、2002年
(日本障害者リハビリテーション協会『リハビリテーション研究』111号;26~33頁、112号;34~40頁にも収載)
ルコントさんが書いてる内容は、本当にそうだよな~と思ったことが、いくつもあります。
当時病院で勤めていた自分にとっては、次の一言が、とても印象に残りました。
「心理社会的リハビリテーション」について語っているところです。
「…しかし私の経験からみるに、人工的な施設内の環境で教えられる技術というものは、
実際の社会で生きていくには一般化されにくいという問題がある。
特に最も重度の精神障害をもっている人については、そうである。
地域で生きる技術を身につけるのに、最適の場所はまさに地域であり、
自然なルーティンの一部として、毎日の実践を通して行うのが最良の方法である」
また「地域での治療」では、こんな風にも言ってます。
「私が日本で目にしたのは、私たちが20年前にいた地点であり、
入院者の数は1950年代の米国の状況に似ている。
日本の名誉のために言えば、
退院する前に何らかの支援があるようにという意識的な努力はみられている。
多くの優れた、創造的な作業所、就労の場がある。
しかし、本来推進されるべき、統合された労働環境を強調しているところはほとんどない」
さらに、日本のコンシューマーの印象を語り、
「多くのコンシューマーはユーモアのセンスがあり、一緒にいてとても楽しかった。
どうして彼らが、切り離された環境で保護された人生を送っているのか、
外部の人間には理解しにくい。
まるで病気だということで、罰を受けているかのようである。
入院者の3分の1が「社会的入院」であるという事実は、コンシューマーにとって恐るべき現実である」
先日、コンボの宇田川さんからメールを頂戴しました。
IPS全国研修会のお知らせでした。
障害が重くても軽くても関係ない。
働きたいと希望する人がいればすぐに就労へ結びつける。
仕事につくなんて長い間考えたことがなかったという当事者が仕事につく。
「仕事につくということは最もスピードの早いリハビリテーションであると、私はロサンゼルス精神保健協会で学びました」
その一文を読んで、僕は先のルコントさんの言葉を思い出した訳です。
リアリティがないと、リハビリテーションは進みません。
誰の人生にとっても「仕事をする」って大事なことです。
まだまだ日本ではIPSは、始まったばかりです。
でも、他国で取り組まれてきた実践が、日本でも根付き始めています。
ご関心のある方は、どうぞご参加下さい。
事前申し込みは、既に締め切られていますが、当日参加もOKだそうです。
今週末、8月6日(土)日本社会事業大学においで下さい。
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第1回IPS全国研修会「それでも未来をあきらめない。」
~IPSから始まる希望の可能性を信じて~
IPS:Individual Placement and Support(個別就労支援プログラム)は、
精神の病いを抱えながら生活している方を応援するために開発された個別の就労支援プログラムです
【日時】 2011年8月6日(土) 10:00~16:45(開場9:30)
【会場】 日本社会事業大学清瀬キャンパスB401教室(東京都清瀬市竹丘3-1-30)
【参加費】
当日参加 5,000円 / 当事者・家族・学生は3,000円
(COMHBOの賛助会員の方は上記から1000円引きとなります)
懇親会費 3,500円
【内容】
●事例検討
●ワークショップ「はじめましてIPS」
●シンポジウム:スタートアップIPS~私たちのIPSの始め方~ など
(講師:伊藤順一郎、中谷真樹、大島巌、IPS実践者、IPS利用者他)
【定員】 200名
【主催】 NPO法人地域精神保健福祉機構COMHBO・全国IPSネットワーク
【共催】 NPO法人NECST
【協力】 特定非営利法人ゆるら・ボランティアサークルときたま
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・8月6日当日直接会場にお越しください。
・分科会は当日希望をお伺いします。
・参加費・懇親会費は当日、会場にてお支払いください。お釣りのないようにご用意い
ただけると助かります。
・昼食に関しましては、各自でご準備いただくようお願い申し上げます。
☆本研修会は3月に開催予定でしたが、震災の影響で今回の開催日に延期となりまし
た☆
詳細はCOMHBOのHPをご覧ください。 http://comhbo.net/
★・・・・・・・・・・・・・プログラム詳細・・・・・・・・・・・・・・★
プログラム詳細
9:30~
【B401教室】 受付開始
10:00~1100
【B401教室】 プレナリーセッション:リカバリーを応援する個別就労支援IPS
司会:伊藤順一郎(国立精神・神経医療研究センター)
挨拶:大島巌(日本社会事業大学)
講師:中谷真樹(住吉病院)
11:10~12:30
【B401教室】シンポジウム:スタートアップIPS~私たちのIPSの始め方~
司会:大島巌・香田真希子(地域精神保健福祉機構・コンボ)
シンポジスト: 中原さとみ(桜ヶ丘記念病院)、中島吾木香(地域活動・相談支援センターかさい)
本多俊紀(コンポステラ)、大島みどり(障害者就職サポートセンタービルド)
12:30~13:30 昼食
13:30~15:00
【C601教室】
事例検討A-1(チャレンジ)
働き始めてからの症状再燃~チャレンジは間違ってた?正しかった?~
事例提供者: 澤田恭一・丸山次郎(草津病院)
ファシリテーター:伊藤順一郎
【C602教室】
事例検討B-1(リカバリー)
リカバリーカフェ ~事例検討からIPSを学ぶ~
事例提供者: IPS利用者
ファシリテーター: 中原さとみ(桜ヶ丘記念病院)
サポーター: リカバリーキャラバン隊
【A401教室】
ワークショップC-1
はじめましてIPS【理論編】
講師:津田祥子(日本職業リハビリテーション学会事務局)
池田真砂子(根岸病院)
柴田泰臣(障害者就職サポートセンタービルド)
15:00~15:15 ブレイク
15:15~16:45
【C601教室】
事例検討A-2
(生活支援担当の視点)
夢を追いかけて一歩を踏み出したメンバーさんの事例
~チーム連携の実際を生活支援担当の立場から~
事例提供者:斉藤容子(地域活動支援センターマーキー)・小松廣美(IPS利用者)
ファシリテーター:伊藤順一郎
【C602教室】
事例検討B-2
(新人就労支援者の視点)
IPSのサポート ~新人就労支援者の目にうつったもの~
事例提供者:高柳玲奈(コンポステラの新人就労支援者)
ファシリテーター:本多俊紀(コンポステラ)
【A401教室】
ワークショップC-2
はじめましてIPS【実践編】
講師:津田祥子(日本職業リハビリテーション学会事務局)
柴田泰臣(障害者就職サポートセンタービルド)
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