Life in Japan blog (旧 サッカー評 by ぷりりん)

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貝貨?!オオツタノハの貝輪-英雄たちの選択「追跡!古代ミステリー 海の縄文人」

2023年02月12日 08時06分15秒 | 経済・社会

オオツタノハの貝輪は貝貨?

大河ドラマを最近観るようになったのですが、通説と科学的に精査された歴史学の知見の差異についての考察等を読んでも歴史小説に触れてこなかったので通説の方を知らず、なかなか話題についていけませんでした。最近歴史系の番組をちょくちょく見る様になったのですが、先日、縄文時代のオオツタノハ製の貝輪についての忍澤成視さんのとても興味深い研究について放映されていました。(貝の写真はツタノハ貝(Jan Delsing, Public domain)です)

オオツタノハ

畿内を除いて北海道から沖縄までみられるオオツタノハの貝輪ですが、オオツタノハ貝(Patella optima (Pilsbry, 1907))は伊豆諸島、屋久島以南で採取される暖かい海で生息する貝で、縄文時代の住民にとっては遥か彼方の場所の貝です。(生物多様性研究・教育を支える広域データベース https://bishogai.com/pic_book/data34/r003313.html)

縄文時代のオオツタノハ製貝輪の出土分布

東日本:北海道3遺跡4点、岩手県3遺跡4点、宮城県9遺跡26点、茨城県10遺跡42点、千葉県31遺跡73点、埼玉県2遺跡4点、東京都6遺跡43点、神奈川県6遺跡6点、静岡県3遺跡4点、富山県1遺跡1点、愛知県5遺跡29点、
畿内にはみられず
西日本:岡山県2遺跡2点、福岡県1遺跡1点、佐賀県2遺跡12点、長崎県1遺跡4点、熊本県1遺跡1点、鹿児島県23遺跡333点、沖縄県21遺跡76点
となっているようです。東日本は伊豆諸島、西日本は南西諸島が原産と考えられているようです。(田嶋,正憲. (2021). 南海産オオツタノハ製貝輪の分布圏から見た彦崎貝塚出土資料の評価. 半田山地理考古, 9, 49–80. https://doi.org/10.34552/00002557)。

縄文海進と海水温-松島義章先生の研究

貝類群集の調査による縄文海進時期の古水温について一木絵理博士の学位論文で"図3-10"として引用された松島義章先生の図(松島義章. 2004. 企画展ワークテキスト「+2℃の世界~縄文時代に見る地球温暖化~」神奈川県立生命の星・地球博物館編.)がとてもわかりやすかったのですが、だいたい7000年前~4500年前くらいの時期は三浦半島北限で熱帯種の貝類の分布がみられていたようで(1950年の北限は紀伊半島)、その時期「暖流は緯度で3~6度北上し、水温は3~5°上昇した。」とのことです(一木. (2012, March 22). 日本における縄文海進の海域環境と人間活動. Thesis. https://doi.org/10.15083/00005598)。縄文海進が起きた理由はとても複雑なようです(日本第四紀学会HP http://quaternary.jp/QA/answer/ans010.html)。

縄文海進時期は現在よりは南の海の貝は北方でもみられたようですが、それでも居住地域からはかなり遠方であったことには変わりありません。

希少性と威信性と貨幣と貝貨

貝や石が貨幣として機能する文化が知られています。ミクロネシア・ヤップ島の石貨フェイは「ヤップ島から400km以上離れたパラオ島で切り出し、カヌーで運んできたもの」で、その希少性と威信性から価値を保持し続け、貨幣自体が移動しないで交換を成立させています(お金の話あれこれ(2) お金をいろいろ比べてみたら. . . : 日本銀行 Bank of Japan. (n.d.). In 日本銀行ホームページ. https://www.boj.or.jp/about/education/arekore2.htm#p02)。

パプアニューギニア・イーストニューブリテン州のガゼル半島北東部に住むトーライの人々の伝統的通貨は「タブ」は居住地周辺では採取できない貝のムシロガイ製で、入手困難性がインフレ抑止機能を持つと書かれています(深田,淳太郎. “パプアニューギニア、トーライ社会における貝貨タブをめぐる現在の状況.” くにたち人類学研究 1 (May 1, 2006): 1–22. https://hdl.handle.net/10086/15636.)。

オオツタノハ製貝輪も、その希少性から金貨や金製品の装飾品の様な通貨としての機能-交換機能や財の保管の機能-を持っていたと考える事はできないでしょうか。



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