Life in Japan blog (旧 サッカー評 by ぷりりん)

日本に暮らす昭和生まれの猫ぷりりんの、そこはかとない時事放談と日記です。政治経済から科学、サッカー、手芸まで

放射線リスクを安全よりに選択しようとするとなぜか怒られる件

2011年12月17日 01時16分43秒 | 原発・放射能

健康に関するリスクを客観的にとらえて賢く選択する態度が奨励されていますが、私達が発電所事故でもたらされたリスクを客観的に過剰だ、過小だとする適切な指標がまだ存在しないのになぜそう簡単に言えるのか、いまいちよく理解できていません。

不確実な未来の選択において、結果が、死と病含む悪いことも選択の彼方にある場合、かなり安全よりの選択をしたいのはごく普通だと思うのですが、事故の被災者であるのにその気持ちさえ認めてもらえない状態は少し不気味です。

諸説ある中でWHOがチェルノブイリ事故について途中経過を出した結果を標準と考えると、科学者から科学的な指標で判断できるクレバーな人間と認定されるみたいです。
反対に彼等の価値観に逆らうと、非科学的で頭が悪いヒステリーのワーワー教放射脳患者とネット上で揶揄される状態です。

もし40年後まだ生きていたら、彼等の墓石に何を添えている私がいるのか、それは今のところまだわかりません。墓前で彼等の子孫にあったら、私は彼等になんて挨拶するようになるのでしょうか?


放射性物質の汚染はどこまで許容できるのか-放射線の規制値

2011年12月10日 03時02分02秒 | 原発・放射能

 

数々の食品汚染の数値が日々報道されます。粉ミルクの汚染が騒がれましたが、希釈されるために赤ちゃんに害は少ないと考えられています。(記事下部にて前々回のように、粉ミルクを乾燥させる際に外気から混入したとされているセシウム混入を考えてみました。)

北関東で製造する際粉を乾燥させる外気から汚染されたということは、他の製造物に関してもなんらかの可能性があるのではないか、という市民の疑念を容易に想起させています。

経口からの放射線量-ICRPモデル

現在日本の暫定基準値は500ベクレル/kgです。
では仮にその半分以下200ベクレル/kgの食事を毎日1kg(平均は1.7Kg)続けるとどれくらいの摂取になるのでしょうか。

  1. ○モデル:ICRPのコンパートメント・モデル 
  2. ○汚染値:約200ベクレル(1kgあたりセシウム134は100Bq、セシウム137は100Bq)
  3. ○摂取:成人
  4. ◆合計5.41.168mSv/yの内部被曝
    2011/1/4:リンク先のセシウム137大人経口摂取時実効線量係数の元資料にミスプリントがあり訂正

放射性セシウムの動態-チェルノブイリの例

ではモデルに対し、実測体内動態モデルではどのような結果になっているでしょうか。
単純な積算値は均質的なセシウム動態を前提としていますが、体内動態モデルでは生体内では有機的な動きと蓄積をみせます。

ICRP Publication 111のチェルノブイリの例
事故後20年後の汚染地区での日常摂取量は10から20Bqで年間実効線量は0.1mSv程度、なかには情報の乏しい住人もいて100mSv以上を摂取し年間実効線量は1mSvから数mSvに至ると記載されています。(筆者要約)

「図2.2.に、1000Bqのセシウム137を一時的に摂取した場合と、毎日1Bq及び10Bqのセシウム137をそれぞれ1000日間にわたって摂取した場合の全身放射能の変化を記す。同じ総摂取量に対して、期間末期における全身放射能は大きく異なっている。これは、汚染食品を日常的に摂取する場合と断続的に摂取する場合との負荷が本質的に異なることを示している。実際には、汚染地域に居住する人々の場合、全身放射能は食品の出所と食習慣に依存する日常的な摂取と一時的な摂取の組み合わせによってもたらされることになる。(ICRP Publ. 111 日本語版・JRIA暫定翻訳版による)」
(17) Exposure from ingestion of contaminated foodstuffs may result from both chronic and episodic intakes according to the relative importance of locally produced foodstuffs in the diet. As an example, Fig. 2.2 presents the evolution of the wholebody activity associated with an episodic intake of 1000 Bq of 137Cs and with a daily intake of respectively 1 and 10 Bq of 137Cs over 1000 days. For the same total intake, the resulting whole-body activity at the end of the period is significantly different. This illustrates the intrinsically different burden between daily ingestion of contaminated foodstuffs and periodic ingestion. In practice, for people living in contaminated areas, the whole-body activity is resulting from a combination of daily and episodic intakes depending on the origin of foodstuffs and dietary habits.

ICRP Publication 111 Fig.2.2.
Evolution over a pluri-annual period (1000days) of whole-body activity (Bq) associate with an episodic intake of 1000 Bq and daily intake of 1 and 10 Bq of 137Cs.

日本の基準500ベクレル/kgは事故時の飢餓を防ぐための基準ではありますが、だんだん日常に戻るにつれ、慢性摂取へ戻る段階ではこの値はまったく許容できないと思います。
では10ベクレル/Kgならば良いかといえば、核種によりますが上記ICRP111のFig.2.2. の様な慢性状態ではこれも許容できません。
しかしながらこれくらいの低レベルの汚染の計測は極めて困難です。
(セシウム134の半減期は3年ほどなのでかなり状況が違ってくるともいえますが。)

除染をするにも範囲は非常に広大です。しかし厄介なことではありますが食物を収穫しない、居住しないにしても拡散するセシウムはできるだけ早い内に環境から隔離しなければ濃縮や拡散を発生させます。

この費用対効果をどうみるのか。財政難の日本は八方ふさがり状態です。

粉ミルクの汚染のレベル

1日の飲乳量=700ml、1回当たりの粉ミルク28g(スプーン4杯)
28g×3.5杯=98g /1日
98g×365日=35,770g、35Kg/年摂取します。

(汚染があったロットは数日分のロットなので、買いだめ状態でないと一家庭で継続して摂取することはあり得ませんが)高い値のロットでセシウム134は14.3Bq/Kg、セシウム137は16.5Bq/Kgでした(国産メーカー2012.10.22賞味期限分)。

■セシウム134
14.3(Bq)×0.000026(mSv(セシウム134の乳児経口摂取時実効線量
))×35(kg)=0.013013mSv/y

■セシウム137
16.5(Bq)×0.000021(セシウム137の乳児経口摂取時実効線量
))×35(kg)=0.0121275mSv/y
→合計25μSv/y(0.025mSv/y)の内部被曝
(こちらの記事にも計算例があります。 )

 ※2011年12月15日一部訂正 実測→体内動態モデル


放射線リスクはどこまで判明しているのか

2011年12月06日 23時06分48秒 | 原発・放射能

放射線のリスクは疫学という方法で統計的にその影響の度合いの有意さ、を調査しているようです。
原発事故の影響を調べるには、事故発生前のデータと、事故が発生した後のデータを比べて、どれくらい変化したかを調べます。

以前からこの方法の限界が気になっていました。この方法では、

  • 1.数値としてデータ化できるものしか比較できない、つまり不定愁訴や神経系への障害(知能低下など)はほぼ拾えない。
  • 2.医療機関が採取できるデータしか比較できない 健康データのありとあらゆるものを採取することは不可能です。ガンなど統計を取りやすいもの、放射性物質内部被曝においてもその当時の科学で医療機関の対応できる範囲で計測できるものしかデータは採取できない。
  •  3.移住などによりデータ採取地の病院に来院しなくなった人のデータも採取できない。
  •  4.国会質問で有名になった児玉医師の説明にもあるとおり、ガンは数十年潜伏期があるため、事故発生からガン発生までは20~40年以上の時間が必要な上、発症からさらに数年後でないと統計に現れてこない。(チェルノブイリのケースは事故後25年経過)

疫学と時間軸

疫学調査による放射線健康リスク

メディアやプロガーの話題に上る100mSv外部被曝を受けるとガン死亡率が通常の癌死亡率プラス0.5%上昇する、というリスクは全体でどうも大きなウエイトを占めているようですが、一部のリスクである可能性もあるようです。< /br> また、ガンに罹患する率はこれよりは大きく、また、この数字の中には余命やQOLの数値は入ってはいません。

まだ未知な部分があるけれど、他の化学物質と比較して激烈な作用をするというわけでもない。しかし未知な部分がある。念を入れて少ない数値でもきちんと管理しなければいけないもののようです。激烈ではないものでも広く薄く身のすぐまわりに拡散すればやはり良くないですし、かつ管理されていないので局所的な濃縮が起こり看過できないリスクになります(ホットスポット)。

不確実な環境の下に置かれるストレスは事故によってもたらされました。体によくないものがおうちにばらまかれたのならば、本来は事故前の状態に戻してもらわなくてはなりませんしその義務があります。< /br> しかし範囲があまりに広範囲であるため、物理的にとても難しい。発電会社一社では払いきれない金額になるようです。< /br> しかし発電会社は存続するし、ボーナスもでます。国の原子力損害賠償紛争審査会は年末まで1人8万円、子供・妊婦は40万円を賠償するそうです。(合計約2160億円) ・・・・。

事故のリスクは、住民にばかり背負わされるのが現実のようです。 一度事故が起きると、非常に広範囲で色々な産業にコストをかける燃料を使わなくても、形有る物は壊れるのですからもっと人間にとって扱いやすいものを使えばいいと思うのですが。やりきれないです。