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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

残像のむこう

2006-07-20 | 表現者 青山航士
 「ダンスファン倍増計画」にいただいたあゆあゆさんのコメントを読んで、また懺悔ネタです。じつは前のイラストの"She Loves to Hear the Music"のポーズは私が頭の中で勝手に作ったものです~。
 参考にしたのは『劇団演技者。』のOZ特集の、向かって左からのショットで、勿論いつもの1/16スロー映像。青山航士さんの動きは、実際には一度もこういう普通にいう「きめポーズ」にはならず、腕がこの状態の時には右足はもうフロアについています。「でもあんなふうに見えたけど?」という方もおられるかもしれませんが、それはおそらくは残像であって、実際には身体はコンマ何秒かぶん、記憶のなかの姿よりも早く大きく動いているのです。・・・そこで思ったのはいわゆるダンスの、あるいはフォッシーの「ノリ」とか「キレ」とか言われているものは「これ」かもしれない、ということです。
 以前イチロー選手を引っ張り出して動体視力の話をした事がありますが、スローで見ると実際の時間の中では拾い切れなかった情報が確かに「ある」。私も含めて、普通の動体視力でとらえた場合は、青山さんの身体の動き全てが把握できているのではなく、残像をふくめたすわりのいいポーズごとの「コマ送り」状態で情報を処理しているのかな、と思います。
 「キレ」という言葉につられているのかもしれませんが、スローを見ていると「・・・こんなに脚上がってた?」というような、見覚えのない動きが、私には必ずあります。動きの連続がどこかで切れてところどころ抜け落ちているのでしょう。名バッターは調子がいいと「ボールが停まって見える」といいますし、イチロー選手ならすべての動きが見えるかもしれませんね。ただ、コマからコマへと移るときに飛ばされる情報=動きが多いとダイナミックに見えるのもよく経験することで、「見逃したもの」は、スピード感は残していくようなのです。青山さんの動きはスローで見ると膝から下がとんでもない角度まであがっていたり、肩が大きく動いていたりしますが、その視覚で完全につかみきれない「事実」が私たちには「キレ」や「ノリ」として感じられるのかもしれません。
 フォッシー自身はO脚で、完全な外股=アンドゥオールを理想とするバレエでは大変なコンプレックスを抱いていたといわれています。その欠点を強調する形で編み出された彼独自のスタイルは、バレエを見慣れた眼には「うねり」「ひずみ」というか、極端に言えば「異形の」美として映ります。青山さんが「フォッシー調」の振付で見せるコンマ何秒かぶんのいわゆる「ポーズ」からの逸脱は、キレやノリだけでなく、この「ひずみ」の美を最大限に表現している、そんな気がしました。あゆあゆさん、私も青山さんがフォッシー踊りまくるところみたいです~。
 そして同時に『ウエストサイドストーリー』での、正確なポーズを連綿と繰り出したクラシックの技術を思い出したりすると、青山航士というダンサーのダイナミックレンジの広さに改めてねじ伏せられます。再演のニュースも嬉しいけれど、なにか違う作品との出逢いがみたいですねえ。


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