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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

ルドルフ RUDOLF The Last Kiss/物語のはじめに

2008-02-11 | RUDOLF The Last Kiss
 昔むかしあるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました・・・と始まって、桃が流れてきたり、竹が光ってたりするわけですが、物語の始めに出てくる登場人物って、物語の終わりも見つめているような気がします。桃太郎が鬼退治に成功して帰るのを迎えるのも、かぐや姫が月に帰ってしまうのを見送るのも最初に出てきたおじいさんとおばあさん。
 『ルドルフ RUDOLF The Last Kiss』原作"A Nervous Splendor"で最初に出てくるのは誰かというと、ルドルフの御者ブラットフィッシュです。前の記事で書いた、王宮から市街へと出てきた馬車は、ブラットフィッシュが手綱を握っているのです。「・・・そして彼はひづめのダンスとゴムを引いた車輪の軋む音にあわせて、口笛を吹いていた。」ちなみに英ロイヤルバレエの"Mayerling"のDVDでも冒頭と終末には、ひっそりと葬られるマリー・ヴェッツェラを見守るブラットフィッシュの姿があります。
 物語中では、ブラットフィッシュは今はリンク通りとして生まれ変わった、かつてウィーンという街を抱いていた中世の城壁にちなんだ歌を口笛で吹いたと続きます。ルドルフの誕生と前後して竣工されたこの道路が、ウィーンを古めかしく重々しい城壁のない、最新型の開放的な都市に再生したことがうかがえますね。一方で1885年には既にドイツのベンツ社がガソリンで走る自動車を製造していますが、フランツ・ヨーゼフは自動車嫌いで、生涯一度も乗らなかったといわれています。そう思うと当時のウィーンは、馬車の行き交う、いかにも歴史あるヨーロッパ的なたたずまいと、新しい世界とが交錯する街だったのかもしれません。あの美しい街と誰が、物語の終末を見届けるのでしょうか。


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