大千秋楽おめでとうございます。観劇前に映画版、そしてオフィシャル本をもとにブロードウェイ版の記録を追ってから見た「いのうえ版」は、作品への誠実さにあふれる愛すべき作品でした。
予習しないとわかりにくいということに抵抗のある方も多かったようですが、れっきとした日本語上演なのに「イヤホンガイド」のある歌舞伎、ネイティブでも歌詞を完全に聞き取ることは難しく、リブレットとよばれる台本を携行する人も多いオペラなど、「舞台芸術」と呼ばれるものには、あらかじめ観客が何かしら準備をして出向くものが少なくありません。
BW版"Tommy"は史実を周到に織り込みリアリティを、そしてストーリーの輪郭を強調してわかりやすさを演出し、「ブロードウェイミュージカル」という一大産業としての成功も手にいれたことになりますが、いのうえ版『TOMMY』は、純粋に『TOMMY』という舞台であって他の何物でもない、と思えました。開幕前の特別番組で、青山航士さんが「これはミュージカルじゃない」と話されたのも、もっともなことです。The Whoのサウンドが、はっきりと舞台で「見える」感触はとても新鮮でした。
前の記事で触れたパロディ"Pommy"では、ケン・ラッセル監督の「シネマを脱する映画」という言葉にひっかけて脱出劇が展開されるのですが、"Tommy"という作品自体が、既存の枠にはめられることを拒否していると言ってもいいのかもしれません。多分いのうえさんには「受ける」舞台をつくることなど幾らでもできたのだと思います。でもこの"Tommy"という作品を舞台空間という立体に仕上げるとき、野性を侵すことなく美しい野獣を手なずけるような、深いリスペクトと愛情を最優先されたのではないか、とまた勝手な想像をしています。
そして今回青山さんが歌った"Eyesight to the Blind/押し付けがましい男"は、観劇後改めて聴くと、サウンドと記憶がフィットするのに驚かされます。違う演奏者で、そのうえ英語で聴いているのだから、「やっぱり違うな」と思うのが普通なのですが(まして私は青山さんのファン)、まったく違和感なく、記憶がますます鮮明になります。唯一The Whoのオリジナルでなく、他にも多くのアーティストが歌っていることは以前にも触れましたが、その中でも際立って劇的なアレンジでThe Whoがこの曲、この音にこめたドラマを、いのうえ版ほど忠実に演出するのは難しいのではないでしょうか。もう一度観たい、聴きたい場面です。
Deaf, dumb, blindのトミーを巡って、日本の観客が見て、聴いて、話した二ヶ月にわたる公演、本当にお疲れ様でした。再演があればなお嬉しいです
予習しないとわかりにくいということに抵抗のある方も多かったようですが、れっきとした日本語上演なのに「イヤホンガイド」のある歌舞伎、ネイティブでも歌詞を完全に聞き取ることは難しく、リブレットとよばれる台本を携行する人も多いオペラなど、「舞台芸術」と呼ばれるものには、あらかじめ観客が何かしら準備をして出向くものが少なくありません。
BW版"Tommy"は史実を周到に織り込みリアリティを、そしてストーリーの輪郭を強調してわかりやすさを演出し、「ブロードウェイミュージカル」という一大産業としての成功も手にいれたことになりますが、いのうえ版『TOMMY』は、純粋に『TOMMY』という舞台であって他の何物でもない、と思えました。開幕前の特別番組で、青山航士さんが「これはミュージカルじゃない」と話されたのも、もっともなことです。The Whoのサウンドが、はっきりと舞台で「見える」感触はとても新鮮でした。
前の記事で触れたパロディ"Pommy"では、ケン・ラッセル監督の「シネマを脱する映画」という言葉にひっかけて脱出劇が展開されるのですが、"Tommy"という作品自体が、既存の枠にはめられることを拒否していると言ってもいいのかもしれません。多分いのうえさんには「受ける」舞台をつくることなど幾らでもできたのだと思います。でもこの"Tommy"という作品を舞台空間という立体に仕上げるとき、野性を侵すことなく美しい野獣を手なずけるような、深いリスペクトと愛情を最優先されたのではないか、とまた勝手な想像をしています。
そして今回青山さんが歌った"Eyesight to the Blind/押し付けがましい男"は、観劇後改めて聴くと、サウンドと記憶がフィットするのに驚かされます。違う演奏者で、そのうえ英語で聴いているのだから、「やっぱり違うな」と思うのが普通なのですが(まして私は青山さんのファン)、まったく違和感なく、記憶がますます鮮明になります。唯一The Whoのオリジナルでなく、他にも多くのアーティストが歌っていることは以前にも触れましたが、その中でも際立って劇的なアレンジでThe Whoがこの曲、この音にこめたドラマを、いのうえ版ほど忠実に演出するのは難しいのではないでしょうか。もう一度観たい、聴きたい場面です。
Deaf, dumb, blindのトミーを巡って、日本の観客が見て、聴いて、話した二ヶ月にわたる公演、本当にお疲れ様でした。再演があればなお嬉しいです
そしてThe Hawkeのシーン、しつこくてすみませんがいまだにAcid Queenも含めてあの場に居る娼婦達一人一人とのサイドストーリーをそれぞれ想像したり楽しんでいます(元婦人警官とか、ありそう)。
映画と全く違ったおかげで素敵なシーンを誰とも較べようが無く耽溺する事が出来てファンとして幸せです。The Whoの演奏で聞いて思い出せるなんて最高ですよね。本当にこれまでTommyに関わった全ての人に感謝したい気持ちです。The Whoありがとう!いのうえさんありがとう!映画も曲順が違ってありがとう!BW版も、役者さんが小太りのおじさん風(逆の意味でリアル?)でRockっぽくない演奏でありがとう!クラプトンも死んだ目の教祖役でありがとう!あと申し訳ないけど空いてて急にチケットが取れたのにもありがとう!etc.
ダンス公演でなら「見せ場」として持ってくるようなことをカーテンコールでサッとやってのけるのが青山さんらしいですね。
The Hawkerに関してはいくら書いても書き足りませんよね。私もビー玉さんのリストアップされた方々、そして青山さん、キット・ランバートに心から拍手を贈りたいと思います。また、このシーンと曲を制作当初のアイディアに戻すことを主張したピート・タウンゼント、それに同意したデス・マカナフにも