platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

ルドルフ RUDOLF The Last Kiss/ウィーンの森を抜けて

2008-02-21 | RUDOLF The Last Kiss
 『ルドルフ RUDOLF The Last Kiss』原作"A Nervous Splendor"は、ブラットフィッシュが手綱を握る馬車でルドルフが外出するところから始まりますが、その行き先がマイヤーリンク。ウィーンの街を南下し、鉄道に乗りバーデンで下車、さらに馬車で美しいウィーンの森の中を進むと、1887年にルドルフのために造られた狩猟の館があるというわけですが、世間から隔絶されたようなこの館が、彼にとって精神を休める場所だったようです。マイヤーリンク事件の現場を訪ね、ウィーンの森の美しさを堪能する観光コースとしても人気があるようですね。
 原作では、このときルドルフは、少年時代から毛嫌いしていた同い年のプロイセンの皇太子ウィルヘルム(帝劇版では岸祐二さん)が、プロイセン(ドイツ)皇帝になり、その声明を読んだ、という設定になっています。先のプロイセン皇帝フリードリヒ3世は、在位わずか3か月で亡くなったため、息子であるウィルヘルムはわずか29才で皇帝の座に着きました。自分が最高位に付くためには肉親の死を待たなくてはいけない、という王子たちの複雑な心理を「プリンスの悲劇」と呼ぶそうですが、犬猿の仲の皇太子が若くして皇位につく一方で、オーストリア帝国の政務から排除されている我が身をルドルフがどう思っていたかは想像に難くありません。鳥類の研究家としても評価されていたルドルフですが、ウィーンの森の美しさもこのときは慰めにはならなかったかもしれません。

ルドルフ RUDOLF The Last Kiss/ルドルフとジャーナリズム

2008-02-21 | RUDOLF The Last Kiss
 ルドルフが信頼を寄せていた新聞記者ツェップス。彼は『新ウィーン新聞』の記者でしたが、ルドルフも彼の依頼を受けて匿名でこの新聞に寄稿し、自分の政治的意見を述べています。スパイどころか皇太子がもらす情報、そりゃ特ダネでしょうね~。そのうえ父帝フランツ・ヨーゼフの信頼厚い首相ターフェ(もう思い浮かべるのは岡幸二郎さんのお顔だったり)の政治を繰り返し批判したといいますから、読者も目が離せなかったでしょう。
 左派ジャーナリスト・ツェップスはユダヤ系の名家に生まれ、娘のゾフィーは、のちのフランス首相クレマンソーの兄弟の妻になりました。クレマンソーは、第一次世界大戦終結時にドイツに対し、厳格な制裁を主張したことで知られています。ルドルフは父帝によって執務から排除されていたため、ツェップスを介してフランスをはじめとする諸国の情報を得ていたといいます。ルドルフもまた、王宮の情報をもらしていたといいますが、普通の父子の感覚ではないですね。
 が、そんな動きに王宮が気付かないわけはなく、フランツ・ヨーゼフの知るところとなります。ルドルフには24時間監視が付き、ツェップスとの交友も断たれることに。ルドルフは24才年上のツェップスに理想の父親像を見ていたとも言われていますし、父帝への感情は複雑にならざるを得なかったことでしょう。
 もしもルドルフが現代に生きていたら、さしずめブログで世界に自分の意見を発信しているでしょうか。時代を先取りするように、労働時間の短縮・児童就労の禁止・富の再分配に賛同した彼はきっと多くの人々の支持を集めたことでしょう。それとも父帝はそれもまた抑制したでしょうか。

 追記:引っ越しに伴い、両方見ていただいたりしているので水増し気味になりますが、gooとjugemあわせて28万のアクセスいただきました。また、ブログランキングにもたくさんの応援頂き、本当に有難く思っています。心から御礼申し上げます。