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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

ルドルフ RUDOLF The Last Kiss/原作者フレデリック・モートン

2008-01-15 | RUDOLF The Last Kiss
 ミュージカル『ルドルフ RUDOLF The Last Kiss』の原作はニューヨーク在住・フレデリック・モートンの"A Nervous Splendor"。書評を見ると「ノンフィクション」に区分されているので、かなり史実に忠実な内容のようです。原作も音楽もアメリカ製なのにハンガリー発?と少し不思議に思っていましたが、モートンの履歴を少したどると(勝手な思い込みかもしれませんが)納得がいきました。
 1924年ウィーンでユダヤ人の家庭に生まれたモートンは、ユダヤ人迫害が日常化した1940年に一家でいったんイギリスへ逃れたあと、改名し、アメリカに移住しています。アメリカという国は自由で平和そうに見えて、今も癒やし様のない傷を背負った方がたくさんおられますが、『ルドルフ RUDOLF The Last Kiss』の作者もその一人のようです。
 皇太子ルドルフの父、フランツ・ヨーゼフが即位した1848年にはユダヤ人に移動の自由が認められ、その後67年には居住と職業の自由も法的に認められるなど、ルドルフの存命中はユダヤ人に対する差別が解消する方向にあったようです。が、第一次世界大戦中にユダヤ系難民がオーストリアに集中したことから、食糧難・住宅難など問題が多発しました。国中に反難民感情が高まり、後のナチス・ドイツによるユダヤ人差別にその反感が増幅される形になったようです。オーストリアにも強制収容所が造られ、多くのユダヤ人が殺戮の対象になりました。自由主義者だったルドルフが即位していたら・・・? 多くの人の運命が変わっていたかもしれないですね。
 原作には当時を生きたフロイト、ブラームス、ブルックナー、クリムト、マーラー、シェーンベルク、そしてヒットラーの肖像も書き込まれているといいますが、自分自身の家族の運命が、その時間と空間に織り込まれていた人が作者だという重みが、この物語をかつてのオーストリア=ハンガリー帝国の都市で再生しようという想いにつながったのだという気がします。
 東宝公式サイトの宮本亜門さんのメッセージにも、ルドルフが生きていたら世界は今とまったく違っていたと言われている、とありますが、誰よりもモートン自身が痛感していることなのかもしれません。