platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

月の光に

2005-04-13 | うたっておどろんぱ!
今夜もやっぱり三忍者の話。真昼のように明るいシーンの多いおどろんぱで、月光のような照明が新鮮でした。少し落ち着いてきたので、他の男性によるパ・ド・トロワ(3人の踊り)をいろいろと見比べてみました。

 その中のひとつ、アメリカン・バレエ・シアターがレパートリーにしている「レマンゾ」も月明かりのような照明と、グラナドスのピアノに彩られたとても美しい作品です。衣装は、おどろんぱのユニフォームを思い切りタイトにした感じのノースリーブの男性用レオタード。アプロンとよばれるバレエダンサー独特の、天井から垂直に吊り下げられたような(いわゆる「良い」)姿勢から始まります。これは新しい作品で、かなり自由な振付なのですが、「三忍者」を見た後では重心がものすごく高く感じられます。勿論それが彼らの美であって、批判しているのでは全くありません。ただ頭ではわかっていても、あまりの違いに少し驚きました。

 キリスト教社会に常にある天上への憧れを写してなのか、人間の能力の限りを尽くして上へ上へと昇りつめていくようなバレエと比較すると、人間の身体のエネルギーが満ちているのは同じなのに、「三忍者」の低く重心を落とした澱みのない動きには、水が上から下へ流れるような「重力の法則に従った自然」を感じてしまいます。「レマンゾ」の舞台は2.5m四方ぐらいの白い壁を一枚立てているのに対し、「三忍者」は最初のシーンで満月、と対照的なのも眼が留まります。

 かなり前のことですが、坂東玉三郎さんが「日本舞踊とは」という問いに対し、日本人の四季折々の感情を詞にしたものを曲につなげ、それを体で表現したもの、とこたえておられました。いくばくかの作品しか目にしたことのない私でも、日本舞踊の舞台にあふれる季節の花々、美しく荘厳な自然、そしてその移り変わりの傍らで生をつむぐ人間の姿には、ちぢこまった心がはらはらと解かれていくような気がします。

 アメリカで学んだダンサーであっても、青山さんには、自然、ひいては宇宙をどこかに感じないではいられません。それが見せる側にとって、また見る側にとっても、四季を意識する「血」であり「民族」だということなのかもしれません。「おちばとあそぼ」や、ずっと以前、「ゆらゆらゆれる」の橋の上のセットで、「アルビノーニのアダージョ」の一片を踊ったときも、冷ややかな初冬の夜の風が一瞬さあっと吹くようでした。再放送を見込んでか、季節感のある映像を教育テレビであまり見かけないのは、とても残念です。(今回の「三忍者」、私は頭の中で勝手に水音と散桜を合成しています。)

 月は男神、というのも日本の特徴らしいのですが、日本神話の月読命のいでたちなんかもきっと青山さんに似合うと思います。来年あたりどうでしょうか~。本当は「月下美丈夫」という題にしようかと思ってたけど、一日しか咲かないのは困るのでやめにします。・・・シリーズ、ですよね? ね? 

 追記:「レマンゾ」の舞台写真がウラジーミル・マラーホフのHPにありました。"launch site again"をクリック、左上の"gallery"をクリックすると下部にフィルム状の小さな写真が出ます。その最初から16番目、最後から4番目の写真をクリックすると拡大表示されます。3人の場面でないのが残念ですが・・・

http://www.malakhov.com/index3.html