ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】理工教育を問う -テクノ立国が危うい-

2007年10月25日 22時07分23秒 | 読書記録2007
理工教育を問う -テクノ立国が危うい-, (編)産経新聞社会部, 新潮文庫(6052)さ-33-2, 1998年
・日本における "理工離れ" についてのレポート。「若者の理工離れの暗雲」、「大学院博士課程の貧困」、「理工教育再生への試み」と題した三部からなり、関係各所への豊富なインタビューで構成される。
・今のところまだ "理工離れ" からくる弊害を、肌で感じた事はありません。本書は10年以上前の内容ですが、これからジワジワと影響が出てくるのでしょうか。これに加えて、単純に数(人口)の上で日本人の比率はどんどん減るし、最近まで "発展途上" と呼ばれていた国々の人は力をつけてくるしで、この先の技術競争はずっと厳しくなるのでしょうね。問題の底には「他の国には負けられねぇ」という考えがあるようですが、「国の隔たりを無くした技術・人材・知識の共有」のような方向には流れないものでしょうか。…なんて無理な話か。"技術戦争" に終わりは無い?
・表紙[写真]の豆電球は、うっかりすると見過ごしそうですが、この配線では点きません。本書中で紹介されている、豆電球と乾電池の接続法についての設問で某大学の学生では正解者が35%しかいなかった現状を揶揄したものか、それとも素で間違っているのか。
・「「医学が人の命を救うなら、国の命を救う意味で理工系の人材の育成は重要だ」」p.32
・「「入試科目を減らした年には一時的に志願者が増えるが、翌年は高倍率が敬遠され、大きく志願者を減らすケースが多い。結局、入試科目の減少は志願者増にはつながらず、あとが怖いんです」」p.35
・「研究開発担当役員の一人は、最近の新入社員を「しんにゅう社員」と揶揄する。「難しい仕事は『避』け、普通の仕事も『遅』い。自分では判断できず、『迷』う。そのくせ、『遊』びはうまい」というわけだ。」p.46
・「「理科嫌いが増えている原因は教師にあります。いまの先生はどうしても、結果の出る入試や運動部のほうに目が向いてしまい、"将来の科学者を育てたい" などと考えている先生はほとんどいません」」p.74
・「一連の調査結果は、現代の若者が科学技術の成果に対しては強い関心(受容的関心)を示すものの、科学技術の成果が得られるまでのプロセスに対してはあまり関心(能動的関心)を示さない傾向を示している。こうした若者を小林助教授は「文明社会の野蛮人」と呼ぶ。  なぜ「野蛮人」なのかというと、「高度に文明が発達した社会に生まれた人間は、小さいころから便利な製品が身のまわりにあふれ、科学技術の恩恵に浴しているため、それらが先人たちの努力の結晶であるというプロセスを見失い、自然物と人工物との区別がつかなくなる」からだそうだ。」p.84
・「「私は恵まれています。友人の中には、親から『学費はもう出せない』と言われ、泣く泣く大学院進学を断念した優秀な学生が何人もいます。親のサポートがないと大学院、特に学費の高い私学の大学院には進めないのが現状です」」p.130
・「最近、豆電球のエナメル線のカバーをむかずに実験を始め、「電球がつかない。この豆電球は壊れている」と生徒に話した小学校の女性教員の実例が日本物理教育学会で報告されたが、」p.146
・「小委員会のテーマは「"理科" が消える危機感への対応策」だった。  議論の末、最終的に緊急に解決しなければならない課題が三つに絞られた。一つは大学入試の問題。二つ目は「国民的素養としての理科」と「専門家養成のための理科」の考え方とその在り方の問題。そして最後が、教員養成に関する問題だった。」p.148
・「理工教育再生の大きなカギの一つは、間違いなく大学が握っているのである。」p.178
・「アメリカをすべて見習う必要はないが、日本の大学は競争的環境があまりにも少なすぎる。  今後、日本の大学が外国人にも教員採用への門戸を拡大し、世界に伍した教育・研究成果をあげていくためには、若手研究者の競争的環境をつくりだすための「任期制」の問題は避けて通れないだろう。」p.188
・「「現在の日本の教育が抱える最大の問題は、教育の流れがあまりに体系化され過ぎた点だと考えます。小学校から東京大学に進学するまでに非常に体系化されたルートがあるわけです。これは子供の創造性を養う上で困ったことです」」p.208
・「「最大のソフトは人材であり、資源小国の最大の資源である」  大学キャンペーンを始めてから三年経って、私たちが行き着いた結論のひとつがこれである。」p.218
・「その有馬氏は、理工教育再生のポイントについて「まず、お父さん、お母さんたちが理科に興味を持つことだ」と強調している。」p.220
・「わが国の家庭においては、親子の対話、特に父親との対話が極めて少ない。人間の才能は、優れた他の人間との個人的な接触によって育まれると言われる。その意味で、多様な社会経験を持つ父親との、ゆったりとした対話こそが、「考える力」を子供達に備えさせる原点であると言っても過言ではない。」p.227

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