チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「シベリウス『フィンランディア』の5拍3礼」

2010年10月27日 00時09分05秒 | 説くクラ音ばサラサーデまで(クラ音全般
クラ音において、
"sf"もしくは"sfz"といえば、
スフォルツァンド(sforzando)もしくはスフォルツァート(sforzato)、であり、
この記号が附された箇所の音をことさらに
強く奏することを要求してる強弱記号である。いっぽう、
"fz"なら、フォルツァンド(forzando)あるいはフォルツァート(forzato)であり、
そこだけ強く奏することを要求してる強弱記号である。
語義的には前者らのほうが後者らより程度は大きいはずである。が、
桜田淳子女史とロス・インディオスと「別れても好きな人」を歌ってた
シルヴィア女史の顔の区別がつかなかった拙脳なる私には、
正確な違いは解るはずもない。ともあれ、
現実に使用されてる意味としては大差ない。

ジャン・スィベリウス(1865-1957)はフィンランドの作曲家、
として知られてる。つまり、フィンランド人、として。が、
民族的には未だ「フィンランド人」など存在しない。
「フィンランドの国民」は、ざっくりいえば、
ウラル系のフィン人か、ゲルマン系のスウェーデン人か、それらの混合か、
である。というように、
ジャン・スィベリウスはフィンランドにおいて少数派ではあるが
支配階級ではあるゲルマン系のスウェーデン人である。
ロスィアの支配階級(皇帝一家、貴族、技師)がほとんど
ドイツ系であるのと似てる。それはともかくも、
スィベリウスはスェーデン語を使う家に生まれた。その
スィベリウスがなぜフィンランドへの「愛国心」を強くしたのか、
といえば、

それはひとつには、
(ベタすぎるが)「愛の」ためである。
当時の宗主国であるロスィアの陸軍の将校だった
アウグスト・ヤーネフェルトの娘アイノ(1871-1969)に惚れたのである。
ヤーネフェルト家はスィベリウス同様、その名からも判るように、
同じくゲルマン系のスウェーデン人である。しかしながら、
フィン語を話すという一家だった。そのため、
スィベリウスは子供のときに学校で習っただけの不慣れなフィン語も
再度勉強しはじめた。なにしろ、
若い頃のアイノは愛くるしい超美人だったのである。ちなみに、
アイノの兄のひとりアルマス・ヤーネフェルトもそこそこ著名な
作曲家・指揮者となった。

もうひとつ、
スィベリウスが結婚した頃のフィンランドの宗主国ロスィアは、
強大化するドイツ帝国への警戒感から、あの
愚かさを絵に描いたような猿づらのニコライ2世が、
フィンランドの自治を取り上げる政策を採ってしまった。
立法権の剥奪とロスィア語の強要である。これには、
自治を認められる支配に甘んじてきた"フィンランド国民"も
我慢の限界である。穏健派はただ自治権回復を望んだが、
そうでない国民も多かった。そんな機運の中、
スィベリウスは"フィンランド独立"の象徴として、
アルペラン男爵によってまつりあげられた、
のである。スィベリウスは当然に"愛国者"となった。
交響詩"Finlandia"は、
そんな機運の中、作られ、そうタイトル化された。

「フィンランディア」は、
[Allegro部イントロ、4/4拍子、4♭(変イ長調)]で、
***♪●●・ドー・・<レー・<ミー│>ドー・>ソー、・・ドー・<レー│
  <ミー・>ドー・・>ソー、・ドー│<レー・<ミー・>ドー・>ソー、♪
[ド<レ<ミ>ド>ソ]という
【5拍】を三度、4拍子の中で繰り返す。これは、
ファゴット2管、チューバ、コントラバス、それにチェロのトレモロ、
という、一見普通そうではあるが、じつに
妙ちくりんな組み合わせで奏される。ともあれ、
この1拍めの「ド」にスィベリウスはそれぞれ
"fz"を附してるのである。つまり、
実質的にはこの箇所は
【5拍子】である。

ちなみに、
この[ド<レ<ミ>ド>ソ]という音型は、
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の
第23曲「パ・ドゥ・カトル」のヴァリヤスィヨン3「サファイアの精」の
【5拍子】の主題の動機である。
[ヴィヴァチッスィモ、5/4(2/4+3/4)拍子、調号なし(ハ長調)]
**♪ド<レ・<ミ>ド>ソ│<ミ<ファ・<ソ>ミ>ド│
 <ファ<ソ・>ファ>ミ>レ│>ド<レ・>ド>ラ>ソ│
 <ド<レ・<ミ>ド>ソ│<ミ<ファ・<ソ>ミ>ド│
 <ファ<ソ・>ファ>ミ>レ│>ド<ミ・>ド>♯ファ<ソ♪

サファイアはダイアモンドに次いでモース硬度が高い、硬い石である。ゆえに、
「愛の不変」「誠実」を表す宝石である。実際、
名家の出のアイノに対して、幼い頃に医者の父を亡くして
けっして余裕ある生活をしてきたとはいえないスィベリウスは、
負い目を感じてた。なりたかったヴァイオリニストになれず、
作曲の勉強にも行きづまって、ベルリン留学時代には、
自暴自棄の荒れた生活をしたこともあった。
アイノの夫として相応しい男になるためには、
作曲家として成功するしかなかったのである。
その涙ぐましさは、この「フィンランディア」にも見受けれる。
フィンランドはその国旗が「白地に青のスキャンディネイヴィアン十字」
というくらい、雪(白)と湖(青)の国である。
北欧だから当然であるが。
「交響曲第2番」の冒頭の音型が「波」を表してるらしいのと同様、
この【5拍】(チャイコフスキーの【5拍子】サファイアの精)も
サファイアの青、すなわち、海・湖の青を示してるのである。

などと、
ホラ吹きの私はこの話に尾ヒレ(fin=米5ドル紙幣)を附けて、
リンカン大統領に結びつけることもできる。すなわち、
リンカン大統領が撃たれて死んだのは1865年(4月15日)、
スィベリウスが生まれたのは1865年(12月8日)、と、
同じ年だった、というように。ちなみに、
アイノとジャンとの間には6人の女児が生まれた。そのうち、
3女だけは夭逝したが、あとの5人の娘は、
両親の長生き遺伝子(父=91歳、母=97歳)を素直に受け継いで、
それぞれに長生きした。
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