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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

6月17日・明川哲也の考

2019-06-17 | 文学
6月17日は、「エースをねらえ!」の少女漫画家、山本鈴美香が生まれた日(1949年)だが、創作家の明川哲也の誕生日でもある。。またの名を「ドリアン助川」。

明川哲也は、1962年、東京で生まれた。本名は、助川哲也。大学では東洋哲学を専攻し、学生時代、劇団を主催していた。大学卒業後、雑誌のライターなどをへて、渡米。ニューヨークでバンド活動を続けた。
帰国して、33歳のころ、真夜中のラジオ番組、「ドリアン助川の正義のラジオ! ジャンベルジャン!」のパーソナリティを担当。その番組内で、中高生の電話による人生相談を受け付けた。寄せられた相談は、勉強の悩み、将来の希望といった内容から、恋愛問題、性的暴力、性犯罪、校内暴力など深刻な相談までさまざまだったが、彼は公式見解的でない、親身さと熱意でもって対応して人気を集めた。「がんばれ」ということばはけっして口にしなかった。「友だちがいない」という悩みに対しては、自分が友だちになるから、手紙か電話をと、自分の住所と電話番号を教えたという。この番組は38歳のころまで続いた。
以後、テレビ、新聞、雑誌などのマスメディア媒体で、「明川哲也」または「ドリアン助川」の名前で独自の個性的な表現活動を続けている。
2015年には、ドリアン助川名義で書いた小説「あん」が、河瀬直美監督、樹木希林主演で映画化された。

明川哲也はこんな文章を書いている。
「やる気がでない時にどうしたらやる気がでるようになるのか。それがわかっていたら、ボクは違う人生を歩んでいたと思う。(中略)でも現実は、この一年も川原の石に腰かけて、アメンボの気持ちなどを考えていた。」(朝日新聞、2011年5月9日夕刊)

「何年か前、ボクはよく自転車を漕いでいた。仕事にあぶれ、自信も失い、消え入りたいような気持ちで多摩川の土手を行ったり来たりしていた。ある日、河原の一面のコスモスがみなこちらを見ていることに気付いた。(中略)あのときの気付きを、論理的に語ろうとするとどこか嘘が混じる。ただ、それはあったのだ。(中略)破れたズボンを穿いた十六歳のアルチュール・ランボーが、希望と絶望のない交ぜとなった瞳でこちらをじっと見るのは、ボクが孤独である時だけだ。(中略)すなわち、孤独とはボクらの存在基盤であるとともに、越えていくためのチャンネルである」(朝日新聞、2011年10月24日夕刊)

子どものころからアメンボをよく見かけて育ったけれど「アメンボの気持ち」はさすがに考えたことがなかった。一度じっくり考えてみなくては。世の中にはまだまだたくさん考えてみるべき余地が多いとわかる。
(2019年6月17日)


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