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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

6月28日・イーロン・マスクのいじめ

2024-06-28 | ビジネス
6月28日は、フランスの啓蒙思想家、ジャン=ジャック・ルソーが生まれた日(1712年)だが、合衆国の事業家、イーロン・マスクの誕生日でもある。

イーロン・リーヴ・マスクは、1971年、南アフリカ共和国のプレトリアで生まれた。
父親は電子工学の技術者、エメラルド商人、不動産業など色々な顔をもつ実業家で、母親はカナダ生まれ南ア育ちの栄養士・モデルだった。イーロンには4人の異母兄弟がいた。
当時の南アフリカは、アパルトヘイト(人種隔離政策)の社会で、少数の白人が政治、経済を牛耳り、多数の黒人が隔離され貧困と差別にあえでいた。そんな周囲を取り巻く地獄の真ん中に、ぽっかりと浮いた白人のための天国でイーロンは育った。
しかし、彼の少年期代も地獄的だった。9歳のときに両親が離婚。イーロンは父親と暮らすことにしたが、厳しい父親とはそりが合わなかった。
あるとき、彼は学校で同級生に階段から突き落とされ、そこをさらに大勢で寄ってたかって暴行され、病院に担ぎ込まれた。退院した彼は家で、父親から「能無し」とののしられ、1時間立っている罰を受けたという。その事件の後、彼は公立校から私立高へ移った。
小さいころから読書家で、ロケットの実験をしていたイーロン・マスクは、10歳でインターネットを始め、独学でプログラミングを学び、12歳のときには自作のゲームソフトを雑誌に売却し、500ドルを稼いでいた。
彼は、母親がカナダ生まれである縁からカナダのパスポートを申請し、カナダへ移住した。カナダの農場や製材所で働く一時期を過ごした後、19歳のとき、クイーンズ大学に入学した。すると今度は「可能性の国」米国へ移住したい気持ちが募り、20歳のとき、ついに奨学金を得て米国のペンシルベニア大学へ移った。マスクは学生寮内でナイトクラブを経営して生活費を稼ぎながら、同大学で経済学と物理学を学んだ。
マスクは、24歳で弟や友人と共同で会社、Zip2を設立し、地図や道順、企業紹介を備えたシティガイド・ソフトを作って新聞社に販売した。
このZip2を皮切りに、オンライン決済サービスのX.com(PayPalの前身)、宇宙開発のSpaceX、電気自動車のテスラ、人間の脳とAI(人工知能)の融合を目指すニューラリンク、地下交通路のトンネルを掘るボーリングカンパニー、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のX(旧ツイッター)と事業を展開した。発想力と時代の先を読む目、そしてプログラミング力を生かしてインターネットで起業し、株式取引、企業買収、企業統合などによって、自分の野心を次々と実現してきたビジネス界の雄である。

イーロン・マスクは、「タイム」誌によって2021年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた、現代もっとも世界で影響力のある人物のひとりであり、2021年には世界一の長者と認められた。その富は2024年時点で1910億とも1820億ドルとも見積もられている。

火星で植物を育てようと企み、宇宙ロケットを打ち上げ、低軌道衛星からの位置情報を被侵略国ウクライナに提供し、SNS上の言論の自由を守る守護神を自ら任じ、AIの未来をデザインし、都市間に地下高速列車を走らせようとする。それらをすべて自分のビジネスとして実行してしまう男、イーロン・マスク。
その彼が、もともとアフリカの南端の孤立した白人社会の学校でいじめにあい、それを父親から怒鳴られるという絶望的な環境にいた少年だった事実を考えると、人間のもつ可能性の巨大さに驚かされる。自分の未来を信じることは、つくづく大切である。
(2024年6月28日)



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