1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

6月11日・クストーの海

2024-06-11 | 科学
6月11日は、作曲家、リヒャルト・シュトラウスが生まれた日(1864年)だが、海洋学者のクストーの誕生日でもある。

ジャック=イヴ・クストーは、1910年、フランスの大西洋岸、ジロンド県で生まれた。2人兄弟の下のほうだった。パリのカトリック系の学校を卒業したジャックは、20歳で海軍の士官学校に入った。卒業後、海軍士官となり、海軍基地のある地中海岸の街トゥーロンではじめての水中ダイビングを体験し、海への興味を深めていった。
海軍時代のクストーは、諜報活動にも関与し、第二次世界大戦前夜だった彼が20代後半のころには、上海やロシア、そして日本にも派遣されたという。
大戦中だった33歳のとき、クストーはそれまでの海中空気補給システムに改良を加え、現代のアクアラング(潜水用呼吸装置)を開発した。
39歳で海軍を退役すると、クストーは、慈善家で探検家のパトロンでもあったトーマス・ギネス(ビール・ブランドのギネス創業者の弟の家系)から、カリプソ号という船を年間1フランというレンタル料で借り受け、船を修理して、海洋調査に乗りだした。
43歳のとき、最初の著書『沈黙の世界』を発表。
46歳のときには、「死刑台のエレベーター」のルイ・マル監督とともに共同監督でドキュメンター映画「沈黙の世界」を発表。世界の海のなかの珍しい映像を水中カメラで詩情豊かにとらえ、カンヌ国際映画祭で最高賞(パルムドール)を受賞した。
56歳のときから10年間にわたり、米国のテレビ局で「ジャック・クストーの海底世界」というテレビシリーズが制作された。この番組により、クストーは世界的に有名になった。彼が67歳のときから、第二次シリーズが制作され、5年間続いた。
63歳のとき、世界じゅうにメンバーをもつ組織、コクトー財団を設立し、海洋環境の保護と、その啓蒙活動に努め、82歳のときには、ブラジルでおこなわれた地球サミットに参加して、環境破壊・海洋汚染を警告し、母国フランスの核実験再開を批判した。
1997年6月、クストーは心臓発作のため、パリで没した。87歳だった。

その昔「クストーの海底世界」というテレビ番組があって、毎回、世界各地の海を船で訪ね、もぐって、海中の世界を紹介していた。それの探検隊の隊長がクストーだった。
どの回を見ても、いつもはじめて見る、不思議な生き物を見せてくれる、ほんとうに新鮮な番組だった。スタジオのセットにお笑い芸人を集めてしゃべらせて一丁上がりという番組全盛の今日にあっては、隔世の感がある。

歌手ジョン・デンバーが生前、クストーの船の乗ったことがあって、デンバーが自分の番組中で、そのときの模様を紹介していた。
昼間、海にもぐって、夕方になると、船上パーティーとなる。デンバーがギターを弾き、みんなで大合唱。歌って飲んで、
「ラムパンチで乾杯。ボールに入っていたのは、パイナップル1個にラム酒3本」
デンバーを迎えたクストーは当時60代なかばだったはずだが、若々しく活動的だった。デンバーはクストーを讃え「カリプソ」という曲を書き、リリースしている。

クストーは、地球感覚というものを広く伝えた、世界の意識を変えた人である。
(2024年6月11日)



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