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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

6月13日・マックスウェルの悪魔

2024-06-13 | 科学
6月13日日は、サッカー選手、本田圭佑が生まれた日(1986年)だが、物理学者、マクスウェルの誕生日でもある。

ジェームズ・クラーク・マックスウェルは、1831年、英国スコットランドのエディンバラで生まれた。裕福な荘園領主の家系で、父親は科学実験好きの弁護士だった。
英語やラテン語の詩を書き、幾何学が好きだったジェームズは、23歳でイングランドのケンブリッジ大学を卒業し、25歳で故郷スコットランドのカレッジの大学教授になった。
以後、キングズ・カレッジやケンブリッジ大学の教授を務めながら、物理学、とくに電磁気学の分野で画期的な業績をあげた。
彼は26歳のとき、土星の輪が多数の粒子でできていることを論証し、30歳で、色の三原色を利用した世界初カラー写真を撮影した。
33歳のとき「マックスウェルの電磁方程式」を発表した。これは、コイルのそばで磁石を動かすとコイルに電気が発生する現象を発見したマイケル・ファラデーの電磁場研究を発展させた成果で、この方程式を解くと、電磁波は光と同じ速度で動く、つまり、光は電磁波の一種だということがわかるのだった。
ファラデーとマックスウェルの電気力学は画期的な進歩で、これにより、人類はニュートン力学の世界から一歩外へ踏みだした。
マックスウェルは、40歳のとき、有名な仮説「マックスウェルの悪魔」を提出した後、1879年11月、腹部のガンにより、ケンブリッジで没した。48歳だった。

「マックスウェルの悪魔」は、反エントロピーの仮説である。
その前に、まず熱力学の第二法則「エントロピーの法則」は、要するに、熱は高いほうから低いほうへ流れその逆には流れない。同じ器に入れられた水とアルコールは混ざり合っていき、分離していくことはあり得ない、という一方通行の法則である。このことを「エントロピーはつねに増大する」という。
でも、マックスウェルは、こう反論する。
たとえば、混ざった水とアルコールの容器中に仕切り板を立て、仕切りにドアをつける。そこに悪魔が番をして、ドアを開閉する。右から来たアルコール分子は通すが、水の分子は通さない。左から来たアルコール分子は通さないが、水分子は通すようにドアを開け閉めする。やってきた分子は、開いたドアを抜けて向こう側へ行ったり、閉まったドアにはね返されたりする。そういうドアをたくさん配置すれば、右と左にアルコールと水が分離していく。エントロピーの逆の現象が起きるではないか、という提案だった。
「マックスウェルの悪魔」は、ある理想的な弁を表している。(都筑告卓司『マックスウェルの悪魔』講談社・参照)

思えば、人間は、汚染、破壊、殺戮ばかりを積み重ねて、地球環境に悪いことばかりしてきた、いわばエントロピーの権化みたいな存在。自滅を志向する種である。でも、人間には思考力があって「マックスウェルの悪魔」になれる可能性も、いちおうもっている。それが一縷の望み、である。
(2024年6月13日)



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