1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

5月25日・ソニア・リキエルの傘

2024-05-25 | ビジネス
5月25日は、米国の思想家、エマーソンが生まれた日(1803年)だが、ファッション・デザイナー、ソニア・リキエルの誕生日でもある。人呼んで「ニットの女王」である。

ソニア・リキエルは、1930年、仏国のパリ郊外の町 ヌイイで生まれた。ユダヤ系の家系で、父親はルーマニア人、母親はロシア人だった。ソニアは5人姉妹の長女だった。
17歳のとき、パリの布地屋のショーウィンドウを飾る仕事についた彼女は、知り合った高級ブティックのオーナーと23歳で結婚。
33歳で妊娠しているとき、彼女は自分に合うセーターがないのを不満に思い、夫の店と取り引きのあるヴェニスの衣裳工房に頼んで、自分がデザインした妊婦用の服を作ってもらった。それがデザイナー、ソニア・リキエルの出発点となった。
リキエルははじめ、夫のブランドから、後に自分のブランドとして、妊婦用のセーター、子ども用のセーター、男性用のセーターなどを作った。ふだん着だったニットを、ファッショナブルな服の素材へと変え、「ニットの女王」と呼ばれた。ニット以外の素材の衣服を作った彼女はやがて、香水や傘などの分野にも進出した。
彼女は、衣服の表面に縫い目を見せるようにしたはじめてのデザイナーとされ、また、セーターに文字をプリントしたはじめてのデザイナーとも言われる。
1983年、フランスの芸術文化勲章を受勲し、晩年はパーキンソン病を患った後、2016年8月、パリの自宅で没した。86歳だった。

その昔、ソニア・リキエルの折りたたみ傘をもらって、一時期使っていた。
黒い折りたたみ傘を開くと、外側の端がぐるりと白、赤、青、緑、黄など、色とりどりに色分けされて美しかった。気に入って使っていたのだけれど、どこかへ出先の傘立てに置いて用足しをしているあいだに、誰かにもっていかれてしまい、それきりになった。
傘は天下のまわりもの。気に入っている傘にかぎってよく盗まれる気がする。やっぱり、もっていく人も、せっかく失敬するのなら、きれいなものを、と、いちおう選んでいるのかしら。
ソニア・リキエルというと、ニットでなく、あのカラフルな傘を思いだす。
妊婦やふだん着の女性にもお洒落の楽しみを。日常のちょっとしたものにカラフルな楽しさを。そういう仕事をした人である。
(2024年5月25日)



●おすすめの電子書籍!

『ブランドを創った人たち』(原鏡介)
ファッション、高級品、そして人生。世界のトップブランドを立ち上げた人々の生を描く人生評論。エルメス、ティファニー、ヴィトン、グッチ、シャネル、ディオール、森英恵、サン=ローランなどなど、華やかな世界に生きた才人たちの人生ドラマの真実を明らかにする。


●電子書籍は明鏡舎。
https://www.meikyosha.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする