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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

5月14日・ジョン・フィールズの大西洋横断

2024-05-14 | 科学
5月14日は、社会事業家、ロバート・オーウェンが生まれた日(1771年)だが、数学者、ジョン・フィールズの誕生日でもある。数学のノーベル賞と言われる「フィールズ賞」を作った人である。

ジョン・フィールズは、1863年、カナダのオンタリオ州ハミルトンで生まれた。父親は皮製品店の経営者だった。
21歳でトロント大学を卒業したフィールズは、米国へ行き、メリーランド州ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学で博士号を取得した。彼は同大学で2年間教鞭をとった後、 ペンシルヴェニア州でも教えたが、北米の数学研究の状況に幻滅し、28歳のときにアメリカ大陸を離れ、ヨーロッパへ渡った。ベルリン、ゲッティンゲン、パリを歴訪し、フロベニウス、マックス・プランクなどの大数学者たちと交友をもった。
39歳のとき、乞われて母国カナダのトロント大学へもどったフィールズは、大学で教鞭をりながら、オンタリオ州(州都トロント)に働きかけて、大学への補助金を確保するとともに、研究会議や研究基金の設立をうながした。
晩年には、フィールズはすぐれた研究をした若手数学者を表彰する賞の創設を提唱し、運動していたが、その実現を見る前に、1932年8月、トロントで没した。69歳だった。

フィールズは数学者の賞ためにと遺言し、47000ドル(約470万円)の遺産を賞の基金に寄付した。これを原資として、1936年にフィールズ賞が創設されたが、初回に2人の数学者にメダルを授与した後、しばらくお休みがつづいた。その後、1950年になって、4年に一度の賞としてフィールズ賞は再創設され、40歳以下の2人から4人のすぐれた研究成果をあげた数学者に授与されるようになった。
日本の学者では、小平邦彦(1954年)、広中平祐(1970年)、森重文(1990年)の3人が受賞している。ここ20年以上、日本人の受賞者はない。

虎は死んで皮を残す。フィールズはフィールズ賞を残した。あなたは何を残せるか。

若き数学者フィールズが、北米の数学研究の状況を見渡し、がっかりしてヨーロッパへ脱出したという話には、感心させられる。
日本の若者の海外志向が衰えてきたと言われる昨今、フィールズのように、母国の状況が悲惨ならばもっといいところへ行けばいい、と自由に動く態度はまぶしい。
もちろん業種にもよるけれど、どこの場所で自分を生かすかでなく、どの分野で自分を生かすかを優先して考えるのは健康的である。ネットが進んだ現代社会では、なおさらのこと。
(2024年5月14日)



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