1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

11月1日・ヴェーゲナーの疾走

2017-11-01 | 科学
11月1日は、マンガ家の西原理恵子が生れた日(1964年)だが、「大陸移動説」を提唱したヴェーゲナー(英語読みでは、ウェゲナー)の誕生日でもある。

アルフレート・ロータル・ヴェーゲナーは、1880年、独国(当時のプロイセン)のベルリンで生まれた。父親は牧師で、5人きょうだいの末っ子だった。
アルフレートは、気象学の道に進み、気球を使った高層の気象観測技術を開発した。気球に乗ってコンテストに出て、最長滞空記録を作ったこともあった。空に浮かんでいた時間は、52・5時間だった。
ヴェーゲナーは、30歳のころ、世界地図をながめていて、各大陸の海岸線の形が似ていることに気づいた。
彼は32歳の年に、世界の大陸はもともとひとつだったのを、割れて移動し、いまのような分かれた大陸が分立する状態になったという大陸移動説を、フランクフルトでの地質学の学会で発表した。
そして35歳のときには、論文『大陸と海洋の起源』のなかでも、大陸移動説を主張した。
しかし、気象学畑からのこの議論は、地質学の学者からは相手にされなかった。大陸移動という発想はあっても、大陸を動かすメカニズムについての説明は説得力がなかった。大陸は沈むことはあっても、移動することはない、という考えが当時は圧倒的だったらしい。
ヴェーゲナーは、自説の根拠を探すために、グリーンランドへ何度も調査に出かけた。そうして、1930年の遠征中に、摂氏零下60度にもなる現地で、ヴェーゲナーは消息を絶った。
翌1931年5月に、ヴェーゲナーの遺体が発見された。過労により心臓麻痺を起こしたものと推定されている。

はじめて「大陸移動説」を知ったとき、世界地図をながめて、なるほどなあ、と感心した。たしかに、南北アメリカ大陸は、大西洋のほう押してやると、ヨーロッパとアフリカにぴったり重なる形をしている。一目瞭然、そうにちがいない、と思ったが、この説が発表されたときは、そうすんなりとは受け入れられなかったらしい。

1950年代以降、岩石に残された過去の地磁気の痕跡から、これを合理的に説明するため、大陸移動説がふたたび取り上げられるようになり、プレートテクトニクス理論が提唱され、現代ではヴェーゲナーの大陸移動は再評価されているという。
気象学でもたいした業績のあったが、確信した説を証明するために彼は命をかけ、グリーンランドに散った。安楽な学者生活を送る道もあったろうに、夢のために、あえて危険に向かって突っ走った。勇気ある偉大な人生だった。
(2017年11月1日)


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