大関暁夫の“ヒマネタ”日記~70年代大好きオヤジのひとりごと

「日本一“熱い街”熊谷発コンサルタント兼実業家の社長日記」でおなじみ大関暁夫が、ビジネスから離れて趣味や昔話を語ります

昭和問わず語り17 ~ マイ・ソニー・ブランドイメージ

2012-02-10 | 昭和
このところオフィシャルでソニーの話をいろいろ書いております。ちょっとこっちでも個人的な思い出を交えて語っておこうかなと。

僕らが小学生の頃は、「レコードで聞く」から「録音機材で音楽を録り聞く」ことへ移行し始めた時代でした。我が家では時々趣味で物を書いていた親父が、自分の思いつきを録音したいとナショナルの家庭用オープンデッキを買い、「もったいないから使え」という指示の下、僕はもっぱら歌謡曲の録音に精を出しました。当時はライン接続なんてしゃれたモノはなかったので、常にオープンデッキをテレビの前にスタンバイさせて、好きな歌手が登場するとオープンテープに録って聞く、の繰り返し。マイク録音なので、「静かにして!」とか言いながら緊張の沈黙の中録音を敢行し、録り終わると「いいよ」で一同フーッと息を吐いて肩の力を抜くみたいな(なぜか息を止めていたりして)、妙な録音環境でありました。

中学生の時代にはカセットテープが登場し、録音中に声を出しても大丈夫なエアチェックができるラジカセが僕らのあこがれの機器となります。ナショナル、アイワ、東芝、ソニー…各社入り乱れてのラジカセ戦争が勃発していましたが、僕がけっこうこだわったのは機器よりもむしろテープ。TDK(当時は東京電気化学工業と言っていました)、ソニー、日立マクセルの3社がいわゆる3強でしたが、初期は安さと種類の豊富さでTDKを主に使っていたように思います。ソニーは若干価格が高かった。これは家電製品も同じでしたが、一定以上は値引きしないという“ソニーの掟”があって、我々世代のソニーのブランドイメージ形成にこの当時の録音テープからくる印象は、大きく影響しているように思います。ちなみに、初期のマクセルはデザインがイマイチでした。

カセットテープはその後進化して、TYPEと言われるクロームテープが登場。これを機にTDKが一気にシェアを伸ばしたような感覚がありました(確かSAとか言う商品です)。クロームテープは従来のテープに比べてワイドレンジ(録音音域)が広いというのがウリで、特に低音域の厚みが違うとか言われてけっこうクラシックファンなんかの友達は喜んで使っていたような記憶です。ただ僕はクロームテープは高音の抜けが悪いような気がして(根拠レスの勝手な先入観です)、ロックには向かないと決めつけていました。実は、何よりクロームポジション付のラジカセやデッキを持っていなかったことで、悔しまぎれに自分を納得させる言い訳を作っていただけだったりもするのですが…。

そんな折も折、ソニーが画期的な新テープを発売します。その名は「DUAD(デュアド)」。フェリクロームテープという新素材で作られていて、何より僕を喜ばせたのは「ノーマルポジションでも使えます」のうたい文句でした(もちろんソニー製のデッキに新搭載されたフェリクロームポジションで使うのがベスト)。「ざまーみろ!クロームテープ!」と訳の分からない罵声を心の中で叫びながら、秋葉原に買いに走ったのを覚えています。でも高かったなぁ。60分で800円ぐらいしたかな。90分は千円以上したので買えなかった。でもうれしかった。このパッケージデザインがまた当時としてはイカシテいて、高級感あふれていたんですよ。さっそく家に帰ってレコードを録音すると、なんとなく音が良いようで「クロームポジションを使っている奴らは、こんな喜びを感じていやがったのか!でも追いついたぞ!」みたいな達成感を味わったわけです。

このDUA登場で私のソニーのブランドイメージはさらに高まりました。まさしく他社とは一味違う「技術のソニー」「世界のソニー」「信頼のソニー」。高いお金を出してクロームポジション付ラジカセやデッキを買わなくとも、良い音で音楽を楽しませてくれる僕らの味方のすごい企業。しかも名前も(当時個別で愛称的なネーミングが付けられたテープって他になかったと思います。デュアドって響きは、どこかグラムロック的でカッコ良かったです)パッケージデザインもイカシテる!もうベタホメ状態でした。テープの金額が高かったことも、高級感のイメージづくりに一役買ったような気がします。マイ・ソニー・ブランドイメージはこうして出来上がったわけです。

後日談として、この「DUAD」どうも1回録音したモノを消したり上から違うものを録音したりすると元の録音音源の消えが悪いという事実が発覚します。曲間の無録音部分に前の音が残って聞こえたり、これはショック大です。おこずかいの少ない当時の僕ですから、録ったモノに飽きるとまた上から録音して楽しむのが常でしたし、こんな高価なテープは何度も使わなければ元が取れないぐらいに思っていましたから。しかし、一回録りで使わないと本来の性能を活かせないようで。「実は、金持ち向けのテープかも」と少々ガッカリもさせられたりしました。ソニーは僕らの味方じゃなかったかも…と。ただ、それでかえって「ソニーDUAD=金持ち向け商品」というさらなる高級感が、マイ・ソニー・ブランドイメージに付加されたのでした。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿