大関暁夫の“ヒマネタ”日記~70年代大好きオヤジのひとりごと

「日本一“熱い街”熊谷発コンサルタント兼実業家の社長日記」でおなじみ大関暁夫が、ビジネスから離れて趣味や昔話を語ります

昭和問わず語り18 ~ 子供の日に思う私の「紙芝居」体験

2012-05-04 | 昭和
J-CASTさんの連載「営業は難しい~ココを直せばうまくいく!」(http://www.j-cast.com/kaisha/2012/04/26130332.html)で、昭和の紙芝居のおじさんは実は有能なプレゼン師だったというお話を書き、懐かしく私の紙芝居体験を思い出しました。子供の日にちなんで、昭和の思い出話を…。

私は東京の白金小学校という学校に通っていたのですが、家は目黒で家まで距離があったので帰り道はいろいろな道順を試す寄り道し放題の毎日でした。小学校3年生ぐらいの頃のある日、友達に連れられて行った五反田方面の公園でのこと。そこは公園としても広く驚くほど子供たちがたくさん遊んでいて、「なんだみんな学校帰りにこんなところで遊んでいたのか」という新たな発見が本当に嬉しかった、楽しい場所でした。

着いてしばらくは知らない子もまじって「缶蹴り」とか「だるまさんが転んだ」とかで遊んでいたのですが、小一時間もすると誰かの「始まるぞ~!」という声と共に、皆がぞろぞろとある場所に集まり始めます。「なんだろう?」と私も皆が集まっている方向に行ってみると、そこには1台の自転車が。見るとおじさんが荷台をいじって何やら準備をしている風です。「はいはい、お菓子買った人はこの線より前で見ていいよ。買ってない人は後ろ後ろ…」。事情がつかめない私は、菓子を買うでもなく、ひとまず線の後ろにおずおずと下がります。どうやら紙芝居というものが始まるらしい、それは初めての紙芝居体験でした。

気がつけば私の前には黒山の人だかり。30~40人はいたような。高学年のお兄さんお姉さんもけっこういて、皆お菓子を買ってどんどん前に。お菓子を買うか否か悩んだ私はその期を逸し、気がつけば自転車はほとんど見えなくなりました。「なるほど、お菓子を買わないと見えないのか」と納得しながら、おじさんの声を聞きつつ隙間からわずかに覗く自転車荷台上の絵をこっそり眺めました。冒険ものだったと思います。「今日から新しい物語のスタートだよ」と言っていたのを覚えています。出し物が始まると、あたりは水を打ったように静まり返って、さっきまであんなにいろいろな遊びに興じて騒いでいた子供たちがウソのようにおじさんの紙芝居に見入っているのです。

おじさんの話はとにかく面白かった。語り口のじょうずさと、時折聴衆に振る問いかけや同意を求める投げかけが実に絶妙で、お兄さんお姉さんたちの隙間からわずかにのぞく静止画の紙芝居が、おじさんが話すたびに幾通りにも見えてしまう不思議。まるでテレビのマンガのように、否双方のやり取りがある分、テレビなんかよりもよっぽど臨場感があって、すっかり引き込まれてしまったのでした。紙芝居の絵はチラ見状態の私でも本当におもしろかった。今思い出してもスゴイ技だったなと思います。絵を見ていないと音だけでは楽しくないテレビに比べて、絵をちょっと見ただけでもおじさんの語り口で想像が膨らむ紙芝居のおもしろさは、本当に新鮮でした。

紙芝居のその日の分のストーリーが終わると、今度はまた別の遊びをおじさんが提示しました。何か薄くて小さいクラッカーのような素材に数字が打ちこまれていて、その数字だけをきれいに切り取ったら景品のお菓子が貰える。確か全部で10枚程度。1枚でも数字部分が割れちゃったらその時点でゲームオーバー。できなければその数字クラッカーを食べて終わりみたいなゲーム。1回20円ぐらいだっでしょうか。驚くほど多くの子供がこのゲームにも参戦していました。きっと紙芝居の魔術にはまってそのゲームにも引き込まれていたのでしょう。一種の催眠効果かなと、今思い出すとそんな気がします。

私はその日は紙芝居をタダで後ろで見たうしろめたさもあって、おじさんに話しかけにくくその次なるゲームには不参加。気がつけば、大半の子供が数字切り抜きに精を出し、「缶蹴り」や「だるまさん」が成立しなくなっていました。おじさんに切り抜きのコツを教わったり、1個5円~10円のお菓子やジュースを買ったり、すっかり公園はおじさんが支配する世界に変わってしまいました。紙芝居を導入にすっかり子供たちの心をつかんでしまったのです。今思うと、ものすごいプレゼンの達人であったわけです。

それからしばらくして、再び件の公園に再び寄り道しました。もちろん目当ては紙芝居と数字くりぬきゲーム。意を決して今日こそおじさんと話をするぞと、意気込んで行ったのです。ところが公園に着いてみると子供数がグッと減っていて、おじさんも来ていません。パラパラと遊んでいる子供に、「紙芝居来ないの?」って聞いたら、「別の公園に移ったんだってさ」と。なんともさびしいお話。子ども心には理由は分からなかったけど、今思えば、許可なく公園で商売して警察に追い出されたのかなと。子供たちはきっと紙芝居目当てで、あの公園にいたのでしょう。だから紙芝居が来なくなって急に遊ぶ子供の数が減ったのでしょう。

私の紙芝居体験は、おじさんの卓越したプレゼンテーション力との出会いの衝撃と消化不良のその結末さびしさのコントラストが、強烈に記憶に刻まれた思い出です。
皆さんの紙芝居体験はどんなですか?

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