大関暁夫の“ヒマネタ”日記~70年代大好きオヤジのひとりごと

「日本一“熱い街”熊谷発コンサルタント兼実業家の社長日記」でおなじみ大関暁夫が、ビジネスから離れて趣味や昔話を語ります

私の名盤コレクション19~Leon Russellとスワンプ名盤(7‐2)「All Things Must Pass /George Harrison」

2012-02-19 | 洋楽
★All Things Must Pass /George Harrison

1. I'd Have You Anytime
2. My Sweet Lord
3. Wah-Wah
4. Isn't It A Pity (Version One)
5. What Is Life
6. If Not For You
7. Behind That Locked Door
8. Let It Down
9. Run Of The Mill
10. Beware Of Darkness
11. Apple Scruffs
12. Ballad Of Sir Frankie Crisp (Let It Roll)
13. Awaiting On You All
14. All Things Must Pass
15.I Dig Love
16. Art Of Dying
17. Isn't It A Pity (Version Two)
18. Hear Me Lord
19. Out Of The Blue
20. It's Johnny's Birthday
21. Plug Me In
22. I Remember Jeep
23. Thanks For The Pepperoni

雑用に追われてまた間が空きましたが、引き続きジョージ・ハリスン「All Things Must Pass」のお話です。前回触れたようにミュージシャン的には完ぺきにスワンプ路線で固めていながら、この作品スワンプとは違うにおいが強くするのはなぜなのでしょう。独特のにおいを発しているのは、スワンプとは別世界の奇人プロデューサー、フィル・スペクターその人に他ならないわけで…。フィル・スペクターと言えば、ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」に代表される“ウォール・オブ・サウンド”がその特徴であり、その音の壁とスワンプサウンドの食い合わせの悪さがこのアルバムに妙な違和感を生んでいるのです。

フィルの起用理由ですが、ジョージがデラニー&ボニーはじめとするスワンプ・ロッカーたちの存在を意識し始めた頃、暗礁に乗り上げていたビートルズの「ゲット・バック・セッション」の素材集約がフィルの手にゆだねられ、それにジョージが立ち会っていたという流れがこの摩訶不思議な取り合わせを生み出したと考えていいでしょう。ある意味ビートルズの「原点回帰=スワンプ的制作姿勢」とも言えそうな「ゲット・バック・セッション」。その集約不能と思われたほどとっ散らかった素材が、フィルの手によって魔法のようにまとめられていく様を目の当たりにし、ジョージはスワンプ勢の演奏をまとめるのはこの人しかないないぐらいの気持ちで、プロデュースを彼に依頼したのではないのでしょうか。

結果はご存じのとおり息苦しいほどぶ厚い音の壁を施された、純然たるスワンプロックからは大きくかけ離れた作品に仕上がってしまいます。特に「ワー・ワー」や「アート・オブ・ダイイング」「アウェイティング・オン・ユー・オール」などはその真骨頂。エコー目一杯のアコギにオルガンやらストリングスやらホーンやらでさらなる厚化粧を施し、ウォール・オブ・サウンドが一丁上がりというわけです(ディラン作の「イフ・ノット・フォー・ユー」では、なんとハーモニカにまでエコーが…)。あの大ヒット曲「マイ・スウィート・ロード」にしても、デラニー直伝のスライドギターにゴスペル風コーラスというほとんどスワンプの基本要素で構成されていながら、まったくその気配すら感じさせぬ厚化粧のものすごさ。音楽の潮流など一般には知る由もなかったあの時代にはこのサウンドがもろ手をあげて受け入れられたのかもしれませんが、スワンプの登場とその重要性が明確になった今となっては「スワンプの名盤として聞き直したい」という気分満載なのです。

この作品ジョージ生前の2000年に、「ニューセンチュリー・エディション」というカラフルなカラー・ジャケに模様替えした新装盤が出されました。私なんぞは、遂にウォール・オブ・サウンドとっぱらいのスワンプ・ミックス盤の登場かと期待したのですが、結果はボートラ収録はあったものの、単なるデジタル・リマスタリングどまりというジャケットの割には何とも消化不良な内容でした(唯一レオン・ラッセルも取り上げている「ビウェア・オブ・ダークネス」のデモバージョンは、鳥肌モノでしたが…)。もちろんこの作品が、元ビートルズ第三の男が解散後にいきなり放った名盤であることには違いないのですが、スワンプ路線でビートルズ解散前後の音楽スタイルを確立してきたジョージですから、本作の歴史的位置づけを明確にマーキングするためには、このアレンジのままはどうなのかなと。何とも座りの悪い感覚だけが残っている気がしてならないのです。

同じくフィル・スぺクターによって化粧を施され長年居心地の悪さを感じさせられていたビートルズのアルバム「レット・イット・ビー」は、03年に「レット・イット・ビー・ネイキッド」としてスペクター・アレンジを排除しシンプルな形に戻されたリミックス盤が出されました。この手のやり方に賛否あるとは思いますし、発売当時は幻のアルバム「ゲット・バック」の発売を期待していたがためにやや肩透かしを食らった印象でもあったのですが、その後聞き込めば聞き込むほど意外にもスワンプなテイストで良いわけです。このプロジェクトはポールが動いて実現したもののようですが、同じようなプロジェクトをおこしジョージのアルバムを“再生”できる人と考えたら、本作品にも全面参加している“親友”クラプトンあたりにその期待がかかるわけですが…。

ここ数年、クリーム→ブラインド・フェイスと懐古趣味的な同窓会ライブ活動に入ってやや老後を迎えた感がしてきた彼ですが、昨年11月でジョージの死からちょうど10年を経たタイミングでもあるわけで、ここいらで遠い昔の罪滅ぼしも兼ねて“親友”のアルバムの再編集を通じてをスワンプへの回帰を実現してはもらえないものでしょうか。「レット・イット・ビー」と同じく、この大名盤の気持ち悪さの払しょくを望んでいるファンは意外に多いのではないかと思うのです。「オール・シングス・マスト・パス~ネイキッド」の登場を、首を長くして待つことにします。
※次回はいよいよ、そのクラプトンの「レイラ」をスワンプ最高峰作として取り上げます。

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