大関暁夫の“ヒマネタ”日記~70年代大好きオヤジのひとりごと

「日本一“熱い街”熊谷発コンサルタント兼実業家の社長日記」でおなじみ大関暁夫が、ビジネスから離れて趣味や昔話を語ります

天皇賞春

2012-04-28 | 競馬
明日4月29日は元々天皇誕生日。昭和天皇亡き後はてっきり「みどりの日」だとばかり思っていたら、いつの間にか「みどりの日」は5月4日に移動し29日は「昭和の日」と言うそうです。聞いたような気はしますが、忘れてました。でも競馬ファンからすれば、昭和天皇の誕生日を「みどりの日」でなく「昭和の日」として天皇賞春が開催されることはレースの趣旨にそったものとして誠に喜ばしい訳であります。

さて今年の春天、実力は圧倒的に三冠馬18オルフェーヴルでありますが、前哨戦で派手に道中逸走するような馬に由緒正しい天皇賞をJRAとしと勝たせて良いのか否か、であります。まあそんな観点はともかく、前走後の逸走による再審査による馬へのストレスは相当なものがあるとか。ストレスで内蔵を痛めたとの話もあり、軸をオルフェにするか否かは、当日の馬体重をみてからと思います。マイナス6キロまでが許容範囲と池江師が言っています。

マイナス6キロをこえるなら2、3番手にも勝機ありかもというわけで、8ギュスターヴクライ、11ウインバリアシオンの組み合わせも押さえておくべきでしょう。マイナス6キロ以上でオルフェを軸としない場合、やはりトライアルの前走勝ちという上り調子をかって、8ギュスターヴクライを上位に見ます。穴は腐ってもG1馬、一昨年のこのレースの勝ち馬5ジャガーメイル、昨年の勝ち馬15ヒルノダムール。穴はコース適性抜群のG1馬14ローズキングダム、と秋天馬16トーセンジョーダン。大穴はコース適性No.1の7ユニバーサルバンク。オルフェ軸の場合は買い目を極端に絞りますが、7からのワイドは押さえたいです。

軸と買い目の最終決定は、オルフェの場体重を見てからです。

さようならザ・バンド~リヴォン・ヘルムの死を悼む

2012-04-22 | 洋楽
ザ・バンドのドラマーでリードボーカルでもあったリヴォン・ヘルム氏が亡くなられたと報じられています。享年71歳。90年代半ばから癌との闘病生活をしつつ音楽活動を続けてきたようですが、遂に病魔には勝てず。無念の死です。

リヴォン・ヘルムはザ・バンドの魂とも言える存在でした。ザ・バンドの前身はロニー・ホーキンスのバックバンドからのスタートで、そこに在籍していたのが彼でした。バンド名はザ・ホークス。カナダツアー中にメンバーの入れ替わりがあり、新たに4人のカナダ人を迎えたことが後のザ・バンドのスタートになりました。4人のカナダ人はアメリカ南部の音楽にあこがれ、カナダの地から南部をめざす放浪のツアーが彼らの原点となったのです。

ディランのバックバンドして、ストーンズやクラプトンをも驚愕させ時代を揺るがせた67年の「ベースメント・テープス」はルーツロックの原点であり、英国ミュージシャンたちのスワンプへの傾倒はこの音源が発火点であったと言っていいでしょう。68年、ザ・バンドとしての正式レコード・デビュー後の歴史に残る名作「ミュージック・フロム・ビッグピンク」「ザ・バンド」収録の「ザ・ウエイト」や「クリップル・クリーク」といった代表曲はほとんどリヴォンのボーカルによるもので、ファンにとってバンドの「声」と言えば確実にリヴォンであったのです。

ちなみに、エリック・クラプトンがスワンプに傾倒しアメリカ人ミュージシャンたちとデレク&ドミノスを組む動機づけは、ザ・バンドの「ベースメント・テープス」と「ビック・ピンク」を聞いたことに他なりません。翻ってザ・バンドの4人のカナダ人が目指したものは、リヴォンに導かれたアメリカ南部へのあこがれに他ならず、その意味で言えば、クラプトンが求めた理想郷はリヴォン・ヘルムによってザ・バンドにもたらされたアメリカ南部に根差した音楽の世界なのです。すなわち突き詰めれば、クラプトンのアイドルはリヴォンその人だったというわけです。

ロビー・ロバーソンのナルシスト的エゴによるザ・バンドの解散に納得できなかったリヴォンはバンドを再結成させ、デビュー当時のルーツ探しに放浪するヒットとは無縁の音楽活動に戻ったのですが、リチャード・マニュエル、リック・ダンコという相次ぐ悲しい仲間の死によってバンドは活動の停止を余儀なくされます。そんなつらい状況下に、自身は死に至る病と闘いながらも独自の音楽活動を続けてきました。遺作となった一昨年の「エレクトリック・ダート」でも、一貫したルーツロックのこだわる姿勢が素晴らしく、個人的にはセカンドアルバムの「リヴォン・ヘルム」に匹敵する傑作であると思ったものです。

復活ザ・バンドの日本公演と、リンゴ・スターのオールスターバンドでの来日時と、生のリヴォンには2回触れる機会がありましたが、名曲「ザ・ウエイト」などでみせたレコードと同じあの声での熱唱ぶりは素晴らしく本当に感動したものです。あくまで商業主義的だったロビーとの間にはかなり根深い確執があったようで、そんなエピソードにもなぞらえて聞く彼の武骨な歌声には、いつでも作り物ではない“本物”感が漂っていたのです。演奏をするその表情も、本当に人の良さそうなおじさんの風情。ひねくれ顔で気難しそうなロビーとは大違いですね。

3人のボーカリストを擁し、三人三様の素晴らしい歌を聞かせてくれたザ・バンドですが、遂にその3人が皆亡くなってしまったことになります。ザ・バンドはロビーが演出した「ラスト・ワルツ」で無理やり解散させられたことやその後のリチャードの自殺等もあり、どことなく“無念さ”が漂うバンド・カラーになってしまっただけに、レヴォンの訃報にはどうしても重苦しい気分にならざるを得ません。ネットでロビーがリヴォンの死にコメントを寄せていたことを知りどこか違和感を感じながら、「ザ・ウエイト」を聞きつつ彼のご冥福を祈っています。日本で彼のソロ・ステージを見たかったですね。

さようならリヴォン、さようならザ・バンド…。

<余談>
73年に吉田拓郎がツアーのバックバンドに、自身のアイドルであったディランのバックバンドであるザ・バンドを使いたいと言い出し、事務所がザ・バンド・サイドにオファーを出しOKをもらっていたという話があります(当時私が聞いた拓郎のツーアトークでの本人の弁)。しかし、ツアー間近になって突如キャンセルに。理由は時同じくしてディランが復活ツアーに出ることになり、ザ・バンドをバックバンドに指名したためでした(ディラン&ザ・バンドのライブ・アルバム「偉大なる復活」のツアーです)。ディランが相手じゃ拓郎も勝ち目はないわけで、仕方なく拓郎は広島フォーク村の後輩バンド愛奴をバックにツアーに出ました(ディラン&ザ・バンドのツアーをまねて、バンドが中央に陣取り拓郎はステージ端で歌うと言うものでした)。この愛奴でドラムを叩いていたのが誰あろう無名時代の浜田省吾(「ドラムは下手なくせに、女にはやたらにモテた」という逸話も、その後拓郎が語っていました)。まさに“歌うドラマー”リヴォンの代役は浜省だったというオチです。

私の名盤コレクション22~Leon Russellとスワンプ名盤(8-3)「Lyla /Derek&The Dominos」

2012-04-15 | 洋楽
またまた間が空きましたが、「レイラ」の続きです。

◆Lyla /Derek&The Dominos

�「LAYLA」
9. WHY DOES LOVE GOT TO BE SO SAD?
4. NOBODY KNOWS YOU WHEN YOU'RE DOWN AND OUT
11. LITTLE WING
7. KEY TO THE HIGHWAY
13. LAYLA
10. HAVE YOU EVER LOVED A WOMAN

�「TELL THE TRUTH」
1. I LOOKED AWAY
2. BELL BOTTOM BLUES
3. KEEP ON GROWING
5. I AM YOURS
6. ANYDAY
8. TELL THE TRUTH
12. IT'S TOO LATE
14. THORN TREE IN THE GARDEN

前回このアルバムで4つのジャンル分けの話をしましたが、残りのブルーズとスワンプが実はアルバムの2本軸であり、ブルーズ&ロック、スワンプ&バラッドをそれぞれ組み合わせると実に座りのよいアルバム2枚が出来上がるのです。題して�「LAYLA」と�「TELL THE TRUTH」。分け方は上記のとおり。結局のところ、アルバムの主題が明らかにスワンプであるはずなのに、どうもその部分が不透明になりがちなのは、両者の混在感にあるのは明らかなのです。そこで主題のスワンプ的な曲を抜き出せば、残るはブルーズ&ロックになるわけです。

ブルーズ&ロックの�「LAYLA」は若干曲順をいじってみました。ここにあるブルーズは、この四半世紀後の「フロム・ザ・クレイドル」からのバック・トゥ・ベーシック路線に至るまでの一貫した“クラプトン・ブルーズ”のプロトタイプでもあります。もともとブルーズをこよなく愛し、ジョン・メイオール&ブルースブレイカーズの時代からブルーズ・ギタリストを指向。60年代最強のロックバンド、クリームでもブリティッシュ感覚の独自解釈によるブルーズカバーをしてきたエリックが、いよいよ本場のブルーズで育ってきた連中に加えデュアン・オールマンと言うこの上ない共演者を得て、彼のブルーズ・スタイルの基礎を確立させるに至ったのです。

7と10が純粋なブルーズカバーで、4はブルース系のバラッド。特に10は彼のこの後のブルーズ・ギタリストとしてのスタイルを決定づけた1曲と言っても過言ではないでしょう。9、13はクラプトン一流のギターロック。これもまた、この後繰り返し彼の分かりやすいウリの部分として前面に押し出され、彼の根強い人気を支えることになる一大要素であるのです。11はジミヘンのカバーで、スワンプ色も強く感じはするのですが、イントロの仰々しさと、作者の立ち位置を考えればこちらに振り分けるのが正解かと思われます。この6曲通しで聞くと、「あー、いつものクラプトンだ」と妙に納得できるのではないでしょうか。

一般ウケはこの�「LAYLA」かもしれませんが、本来のアルバムの主題は�「TELL THE TRUTH」にあります。並びは変えていませんが、この8曲を抜き出して聞くと、本作がいかに優れたスワンプアルバムであるのかがよくお分かりいただけると思います。�「LAYLA」がギタリスト・クラプトンのデュアン・オールマンとの共演がウリであるとするなら、この�「TELL THE TRUTH」はボーカリスト・クラプトンのボビー・ホイットロックとの共演がウリであると言っていいでしょう。それは、彼の初のスワンプ・アルバムであった前作「エリック・クラプトン・ソロ」が、デラボニ&フレンズの全面協力を持ってしてもクラプトンのボーカルのあまりの弱さゆえにスワンプ足りえなかったという問題点を、補って余りある出来にまで持ち上げた最大の要因でもあったのです。

デュアンのゲスト起用も、ボビーのダブルボーカル的起用もすべては、“南部を知り尽くした男”プロデューサーのトム・ダウドなればこそ、なし得たのでしょう。特にボビーのボーカルは野太く野性的で、時折エリックのボーカルを圧倒するような迫力をもって迫ってきます。「I LOOKED AWAY」「ANYDAY」「TELL THE TRUTH」あたりは、まさしくダブルボーカルの効果がそのまま強力な南部臭となって表現され、本作を本物のスワンプ・アルバムに仕上げているのです。また、ボビーはボーカルだけでなく、キーボードプレイヤーとしても、ゴスペルタッチのオルガンなどでスワンプの肌触りを決定づける役も演じています。名曲「BELL BOTTOM BLUES」あたりを、単なるバラードに終わらせないボビーの演奏が効果的な演出効果を発揮しているのです。

スワンプ&バラッドの�「TELL THE TRUTH」の8曲はとにかく素晴らしい。どうも一般的には、ゴシップ的な要素も含めてタイトルナンバーの印象が強く、それとブルーズナンバーがところどころにちりばめられることで、クラプトン的ではありながらもややつかみどころのない作品になってしまってもいるのです。ここはぜひ、iPodやiPhoneのプレイリスト機能を使って�「TELL THE TRUTH」として、聞いてみていただきたい。60年代末期からの、英国勢とデラボニ&フレンズやレオン・ラッセルらスワンプ勢との交流から生まれた最高の音楽が、ここに結実しているといっても過言ではないと思っています。

記憶力馬券!~皐月賞

2012-04-14 | 競馬
毎週末雨にたたられ、トライアルの成績がいまひとつ信頼性に乏しく本当に予想のリズムを崩されてしまう今年の春のG1シリーズです。

牡馬の三冠第一戦皐月賞。今年はきさらぎ賞を見たときに、勝ったワールドエースと2着のヒストリカルで「ダービーは決まりだな」と思ったものです。ただ皐月賞は難しい。中山の内回り2000メートルは器用さを要求されるコースで、まぎれが起きやすくもあります。先の2頭のような追い込み脚質の馬には不向きなコースでもあります。そんな理由もあってか、毎日杯を勝ったヒストリカルはここを回避してダービー一本の路線を選択。加えて一昨日夜からの雨。完全良馬場は望める状況になく、ワールドエースの取捨がポイントになりそうです。

中山2000メートルは騎手の腕も重要です。道悪実績と騎手の腕と馬の実績を加味すれれば、人気でも18グランデッツァははずしたくない存在です。荒れると見てこの馬からの穴っぽいワイドを狙ってみます。穴の筆頭は15コスモオオゾラ。前走トライアル弥生賞をフロックと見る向きもありますが、同じような馬場状態で全く同じ距離・コースならば軽視は禁物です。前売6番人気は評価が低すぎませんでしょうか。道悪で警戒は逃げ馬。4メイショウカドマツ、16ゼロスは要注意。特にゼロスは前々走では道悪でワールドエースを完封しています。弥生賞2、3着組の3トリップ、5アーデントにも警戒したいです。

18からワイドで、15、4、16、3、5へ。

9ワールドエースは馬場とコースと不調の鞍上という三重苦が嫌な感じ。ダービーでのヒストリカルとの再戦を楽しみに待ちますか。でも記憶によればこういう時は、大荒れか超堅いかのどちらかかなと。おさえるなら、超堅く9-18のワイドを厚めに、です。

記憶力馬券!~桜花賞

2012-04-07 | 競馬
牝馬三冠の初戦、桜花賞です。G1予想も前回あまりに堅かった高松宮記念で連勝を阻まれましたので、一に立ち返って気楽にいきます。

このレースは、記憶をたどれば例年二歳G1上位馬とチューリップ賞1~4着馬と2月以降の各前哨レース優勝馬が好走します。今年は、チューリップ賞優勝のハナズゴールが外傷で回避したので、二歳女王でかつチューリップ賞3着の17ジョワドヴィーヴルが軸最適かと。前走は久々に加えてゴール前での不利もあり、まともならハナズゴールといい勝負をしたハズであり、人気でもこの馬からいくのがセオリーかと思われます。

阪神外回り1600メートルはペースが落ち着きやすく、上がりの勝負になる傾向が強いです。ならば上記条件での相手筆頭は、上がり33~34秒台を必ず繰り出すクイーンカップ勝ちの15ヴィルシーナ。シンザン記念勝ちでチューリップ賞4着の10ジェンティルドンナも有力な一頭ですが、前走熱発明けで厳しいレースをした疲れが心配。むしろ、シンザン記念大敗ながら、勝ち馬以上の最速上がりを見せ次走エルフィンステークスを上がり33秒台で勝った4サンシャインに穴の匂い感じます。鞍上デムーロで一発要注意です。

結論
人気馬を軸にしての予想なので相手を絞ります。
馬連&ワイド15-17、4-17

大穴は最近5年で当レース4連対のアンカツ騎乗12プレノタートか。
念のためのワイド12-17

二歳G12着でトライアルフィリーズレビュー勝ちの11アイムユアーズ、二歳G13着の�サウンドオブハート、アネモネS勝ち5パララサルーは共に上がりの足がイマイチ。チューリップ賞2着の2エピセアロームは最内枠が不安ですべて消します。

名盤復刻!「Live In Japan/Stuff」

2012-04-06 | 洋楽
長らく復刻が待たれていたスタッフの名盤「Live In Japan」が、このたびめでたく紙ジャケで再CD化されました。本当に待ちに待った復刻、晴らしいですよ。しかもリマスターで楽器の分離もよくなりました。とは言っても私、以前のCDを買い逃していて、長年宝物として持ち続けていたアナログ盤落としのMDで聞いたので、音が格段に良くなったのは当たり前ではあるのですが…。

スタッフをご存じない方々に少々ご紹介を。70年代半ばに登場したフュージョン・バンドで(当時はまだフュージョンという言葉はなく、クロスオーバーとかいう新ジャンルに位置付けられていたと思います)、クインシー・ジョーンズ傘下でアレサ・フランクリンらのバックメンがベーシストのゴードン・エドワーズを中心として自発的に組んだインストバンドで、まさにロック、ポップ、ジャズ界の腕利きミュージシャンが集まって、カッコよくて聞きやすいインスト・アルバムを作っちゃいました、みたいなノリでした。彼らの演奏は様々な番組のテーマやバックで使用されたこともあり、本国アメリカ以上に日本で受けていたと記憶しています。

メンバーはリーダーのゴードンの他に、ギターのエリック・ゲイルとコーネル・デュプリーという渋い二人。そこにキーボードのリチャード・ティーとドラムのスティーブ・ガッドが絡むという鉄壁の布陣。スタジオ盤では、もう一人のドラマー、クリストファー・パーカーが加わって、凄腕ツインリード、ツインドラムというさらに贅沢なつくり(日本公演は急病で欠席)。ジャズ、R&B系のスタジオ・ミュージシャンというと、モータウンのバックメンでもあったクルセイダーズが思い浮かびますが、スタッフは管楽器の使用は一切なく、そのあたりがジャズよりもむしろポピュラー寄りに受け止められ、当時の日本で人気を博した理由であったのかもしれません。

インストバンドには無縁だった私ですが、ラジオで聞いた1枚目「スタッフ」2枚目「モア・スタッフ」でそこそこ気に入り、このアルバムを聴いてぶっ飛ぶわけです。スタジオ作における彼らのオシャレ感は当時としては半端ないのですが、それもそのはずデビューアルバムのプロデューサーはあのミスターAORのトミー・リピューマなのです。一方ライブはスタジオ盤のプレAOR的な雰囲気とはうって変わって、R&B色やルーツ色を色濃くにじませつつ、かなりワイルドな楽器の絡みが魅力的です。このアルバムは1、2作目の大ヒットを受け待望の来日公演の実況録音盤で、私は当時FM東京で深夜にやっていた「アスペクト・イン・ジャズ」という番組のこのアルバムの特集を聞いて、鳥肌モノですぐさまレコード店に買いに走ったという記憶があります。

まずオープニングは、1作目のオープニング・ナンバーでもあった「フーツ」。彼らのテーマ的な楽曲でおとなしめのスタートではありますが、スタジオ・バージョンとは違うアドリブ的な遊びもところどころにちりばめられ、徐々に気分を盛り上げてくれます。2「ジュニア・ウォーカー・メドレー」では、スティーブ・ガッドのドラムソロ炸裂。この人ほど幅広いジャンルで活躍するドラマーも少ないのですが、まさにジャンルを超えた“ガッド節”が堪能できます。このアルバムにおけるガッドのドラムソロは、スティーリーダンの「エイジャ」でのプレイと並んで、彼の生涯ベスト3に入る演奏であると思います。

アナログで言うところのB面はさらにスゴイです。圧巻は15分弱にわたる4「涙を届けて~スタッフのテーマ」。スティービー・ワンダーの名曲からオリジナルへ、各メンバーが見せ場たっぷりにソロを次々と聞かせてくれます。二人のギタリストの絡みもさることながら、リチャード・ティーのピアノソロから再び登場の“ガッド節”は感動の嵐です。あの“ドロロン・ドラム”をお腹一杯聞かせてくれます。熱演の余韻さめよらぬ中、今度は5「あこがれの君」でゴードンが渋いボーカルを聴かせます。まるでニューオリンズあたりの酒場での演奏でも聞いているかのような、ホットな歌と演奏がたまりません。

そして最後は満員の会場の興奮を余韻たっぷりに鎮静化させていくかの如き6「ディキシー」。トラディショナル・ナンバーを彼ら風にアレンジ。スタジオ盤のトミー・リピューマの都会的で洗練されたアレンジがそのまま再現されます。ここでは、リチャード・ティーの代名詞でもあるとろけるようなフェンダー・ローズの音色に、ギターの2人がそれぞれの個性で絡んでくるという美しさ。本当に最高です。6曲じゃ物足りない、もっと聞きたい、そんな渇望感を煽るようなエンディングであります。

93年にリチャード、94年にはエリックが相次いで亡くなり、昨年にはコーネルまでも。もうこのスタッフの生演奏は見ることができないのかと思うと、当時不覚にも見逃したことが本当に残念でなりません。この週末は、このアルバムをヘッドフォンの大音量で聞き78年の郵便貯金ホールにトリップしたい気分ですね。

※余談として、彼らの作品を聞くにはベスト盤が手頃ですが、できればスタジオ盤はオリジナル・アルバムで聞くことをお勧めします。3作ともプロデューサーが違うので(2作目がヴァン・マッコイ、3作目はスティーブ・クロッパー)、プロデューサーの個性の出方を比較する視点で聞いてもとても面白いと思います。