時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

Doing Bayesian Data Analysis 読書録9

2011年05月15日 | ことば
前から紹介したいと思っていた本、読んだのはずっと前です。
John K. Kruschke
Doing Bayesian Data Analysis: A Tutorial with R and BUGS.
2011. Academic Press

これは、インディアナ大心理学科(大学院)で2007年の秋学期から開講されている、Bayesian Data Analysis I & IIという二学期一続きの授業の教科書で、担当者のJohn Kruschke教授は、この授業を繰り返しながらこの本を執筆・改稿、去年ついに出版となりました。私は2007年秋・2008年春と受講し、2009年春にもう一度IIを聴講させてもらいました。当時の受講者は、草稿をPDFで配布してもらいました。

この本の特徴は、ユーザーフレンドリーなところでしょう。表紙のデザインも、「難しくないよ」とアピールしたくて、こうしたそうです(3匹の子犬の名はPrior、Likelihood、Posteriorとのこと)。理論的解説や、MCMCサンプリング等、手法の解説も十分ていねいだと思いますが、専門的で難解な部分に陥りすぎず、数学がやたらに強くなくても理解可能です。さらに素晴らしいのは、全ての章にたくさんの練習問題があり、その分析を実行するためのプログラムが収録されていることです。タイトルにあるように、統計プログラミング言語Rに、WinBUGSのR用パッケージ、BRugsをインストールして使います。ちょっと手を加えれば本格的な研究目的に使える、非常に強力なプログラム群です。

具体的な内容は以下のリンクから。ベイズ定理から入って、MCMC法等の解説、モデル比較、階層モデル、さまざまな一般化線形モデル、ノンパラメトリック統計への応用例、パワーアナリシスと、一冊としてはかなり広くカバーしていて、理論と実践のバランスがとてもいいと思います。

http://www.indiana.edu/~kruschke/DoingBayesianDataAnalysis/

われわれはこの本の練習問題を必死で解き、毎週の提出に何とか間に合わせたのですが、Kruschke先生も、受講者専用の掲示板を使って、毎回、夜遅くまで質問に答えてくれました。このやりとりを通じて「この練習問題のここは難しすぎた」等の問題点を発見し、この本を改稿したようです。だから、この本はもちろん先生個人の著作ですが、同時にわれわれ受講生の汗と涙(?)の結晶でもあります。

私はこの授業ではじめてRに触れました。プログラミングなど自分にはとても、と思って近づかないでいたのですが、この授業でしごかれたのをきっかけに、今はあらゆるデータ処理にRを使うようになりました。幸い自分のプロジェクトにKruschke先生が参加して、いっしょにロジスティック回帰+ANOVAのプログラムを開発してくれたこともあり、さらに実践的訓練を積み、自分の研究のデータ分析にもベイズ統計が使えるようになりました。今書いている博士論文も、可能な限りすべてベイズ統計にしています。そんなわけで、個人的にも思い出深い一冊ですが、内容もほんとうに素晴らしいので、英語が苦にならなければ(読みやすい英語です)、強くお奨めします。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿