た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

12月20日

2011年12月20日 | essay
 年の瀬の慌しさの中で、ふと時間が空くと、何をしていいかわからずじっと一点を見つめてしまう。

 午前中に車を出して街中でいくつもの用事を済ませて、なおかつ午後からこなすべき用件の数を考えながら、早めに食事をとろうと行きつけの食堂の駐車場に乗りつけたら、まだ開店していなかった。あと十五分程度待つ必要がある。時間がふと空いた。
 他の用事に取り掛かるには中途半端なので、仕方なく車の運転席に座って外を眺める。
 晴天である。しかし車の窓を開けたら寒いのもわかっている。松本平の、乾燥した冬である。
 見ると、駐車場の隅に小さな祠があった。両腕に抱えて運べそうなほど、小さな祠である。白狐が両脇に立っているので、お稲荷さんだろうか。板金でできたような鳥居もあるのだが、倒れて祠の階段にもたれかかっている。全体におもちゃのような祠である。
 一方の白狐には陽が当たる。一方の白狐は陰である。

 不意に泣きたくなった。私は何をあくせくしているのだろうか。何にとらわれ、悩んでいるのだろうか。私はあいつらによって嘲笑われているのだろうか。私は、どこで、何を失ったのだろうか。
 
 キー回し、車を出した。食事はここでなくてもとる場所はある。
 
 
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