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小松の嫁入り(後編) (本多忠勝公を大河ドラマにしたい)

2011年09月26日 | ☆おおたき観光協会大河ドラマ 本多忠朝

 昨夜に続き、秋の夜長に贈る物語(後編)です。

本多家と深いかかわりを持つことになる真田信幸 (1566~1658)は、昌幸の長男。幸村の兄です。

参考にどうぞ: 真田氏の館  真田太平記

下の動画は「真田太平記・本多忠勝の遺言」です。真田信幸と本多忠勝の関係がわかります。

 

小松の嫁入り (後編)

 稲姫の執拗な視線を受け止めて微笑む信幸が静かに口を開いた。
「姫様、この信幸、いかがでござろう。」
 稲姫はその言葉が聞こえているのかいないのか、じろじろ信幸の顔を眺めまわすだけである。
「姫、聞こえていますか。」
 信幸の問いかけに、稲姫は右手で信幸の顔に触れようとした。その時、
「無礼であろう。」
信幸は微笑みが止まり、厳しい顔つきで一喝し、その右手をぴしりと払いのけた。
 稲姫の胸に衝撃が走った。今までに、彼女に対してこの様に強い態度を示した男はいない。稲姫に見つめられると、その父本多忠勝が同席していることもあり、ほとんどの男は視線をそらしてうつむいてしまう。しかし、真田信幸は稲姫が差し出した右手をはらいのけ、
「このような無礼な振る舞い、本多殿の姫とも思われぬ。」
と、静かながらも威圧的な声で言い、稲姫をぐっと睨みつけた。
 その声を聞くと稲姫は、
「試合をしてください。」
と言った。
「ふっ。」
 信幸は短く笑った。
「姫様、正気の事とは思われません。」
「お願い致します。是非とも、試合を。」
 稲姫の言葉を聞くと忠勝は、「おや?」と稲姫の後ろ姿を見た。
(こやつ、信幸殿を見染めたか?)
 試合がしたいと言うことは、稲姫はその男が気にいったと言うことである。ではあるが、自分より強い男でないと満足できないと言う傲慢な心も持っていると言うことだ。
 忠勝は信幸が試合に勝ち、稲姫が真田に嫁ぐことを期待した。家康もが称賛する真田家へ我が娘が嫁ぐことは忠勝にとっては願っても無いことだ。しかし、信幸は意外なことを稲姫に問いかけてきた。
「姫は戦場にでたことがあるか?」
 稲姫は答えた。
「いいえ。」
「では、命のやり取りをしたことは?」
「いいえ。」
 信幸はすさまじい形相で続けた。
「戦場に出たこともなく、真剣の命をやり取りもしたことがない小娘が、この真田信幸に試合を請うとは片腹痛い。我は信州の片田舎に住む者なれど、誇りを持ったさむらいである。おなごと試合などをすると思うか。悪ふざけは言い加減にせよ。」
 稲姫は顔を真っ赤に紅潮させ、立ち上がると、片足でドンと床を踏み付け、客間から走り去った。稲姫が部屋を飛び出すと、信幸は忠勝に深く頭を下げ、
「ご無礼をいたしました。誠に、誠に申し訳ありません。あのような僭越な言葉、なにとぞお許しください。」
と、心から詫びたが、その態度は決して卑屈なところは無く、むしろ堂々たるものだった。
「いやいや、面をあげられよ。よくぞ、申して下された。忠勝、ますます信幸殿が好きになりもうした。」
 忠勝は昌幸に向かい、
「いかがであろう、真田殿。あのようなできの悪い娘であるが、信幸殿の嫁にもうろうてはくださらぬか。」
と言った。
「ほっ、ほほほ。これは面白い事を申される。信幸の言いよう、あれでは姫様も信幸の事をお嫌いになられたであろうよ。」
 昌幸が答えると、忠勝は首を横に振った。
「いやいや、娘も信幸殿を気にいったようである。是非とも、な、信幸殿、娘をお頼み申す。」
 信幸は思わず頭を下げて、
「願っても無いことでございます。」
と答えた。昌幸は驚いて信幸を見た。
(あのような、じゃじゃ馬が真田の嫁に?こ奴本気か?)
 昌幸は思わず渋い顔になったが、忠勝は手を叩き、満面に喜びの表情を浮かべた。
「これで、決まりだ。いや、うれしい。このようにうれしいことになるとは思うてもみなかった。めでたい、めでたい。」

 その夜。忠勝は稲姫を自分の居室に呼び出した。稲姫はすっかりとしょげていた。
「稲よ、やっとお前にふさわしい男が現れたのう。」
「なにを、あのような無礼な男。父上以外で私に怒鳴りつけた男は初めてです。ああ、思い出しただけでも悔しい。」
 忠勝はにたりと笑い、稲の肩をに右手でぽんぽんと叩くと、
「うれしそうな顔をして、何を言うやら。お前の嫁ぎ先は真田と決まった。」
と言った。
「嫌でございます。」
 稲姫の言葉に押しかぶせるように、
「いい加減にせよ。決めたことじゃ。真田と縁を結ぶ事は徳川にとっても重要なことであり、殿様からもきつく言われている。お前一人の我がままが通じると思うか。」
と怒鳴りつけた。
「私は嫌です。嫁ぎ先は自分で決めたい。他人が決めた嫁ぎ先など嫌でございます。」
「わかっておる。で、あるから今日、信幸殿に会わせたではないか。」
「ですから、あのような無礼な男は嫌だと言っているのです。」
「そうかな?」
「そうです。」
 父と娘はしばらく、見つめあっていた。どれほどの時間が過ぎたか。
「嫌でございます。」
 稲姫が繰り返すと、
「わかった。では、殿様に詫びを入れなければならん。真田との縁組は失敗したと。」
と忠勝は立ち上がろうとした。
「今から?」
「今からだ。」
 忠勝は立ち上がり、部屋を出ようとしたところ、
「お待ちください。」
と稲姫が呼びとめた。
「真田様との縁組が失敗したとなると父上は、、、、」
 忠勝は黙って、右手を腹にあて、ゆっくりと横に動かした。
「仕方ありません。真田様との縁組、お受けします。」
 稲姫は両手をついて頭を下げた。
「良いのだな。」
「はい。」
 顔をあげた稲姫の口角がわずかに上がり、頬が赤く染まったのを忠勝は見逃さなかった。
(ほれたら、ほれたと、素直になればよいものを。ひねくれものめが。)

イラストは福田さんの新作:http://sengoku-gallery.com/ 

 

 こうして、真田信幸と稲姫と縁組が決まり、稲姫は徳川家康の養女として嫁ぐことになった。
 稲姫が真田に嫁いることを聞くと忠朝は稲姫のもとに行き、
「姉上は、嫁にいくの。」
と寂しそうにした。
「そうよ。どうしたの、そんな寂しそうな顔をしないでおくれ。」
「もう、あえなくなるの。もうあそべないの。」
「忠政がいるでしょう。これからは兄上と仲良くして、お前が父上と母上を守って行くのですよ。」
 稲姫に父と母を守れと言われ、忠朝は泣きそうな顔をした。
「はい。忠朝は姉上の様に強くなります。でも、でも、、、」
「でも、なあに?」
「兄上と遊ぶのはつまらない。」
 稲姫は忠朝を抱きしめた。
「そのような事を言うものではありません。」
 そう言いながら、稲姫はおとなしい忠政の顔を思い浮かべた。

 真田家の人となった稲姫は、小松の方と呼ばれ、信幸の家臣からも慕われ、徳川と真田の間を結ぶ重要な役割を果たすこととなる。
 もちろん、夫婦仲は良く、激動の戦国の世をきびしいながらも幸せな人生を送ったと言う。  

 完

おまけLOVE真田太平記ではこうです。 こちらは、はっきりと惚れていますね 

 

連載中の小説:忠朝と伊三 

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番外編 小松姫の嫁入り(前)



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4 コメント

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本当でも妄想でも・・・ (ジャンヌ)
2011-09-27 00:19:17
久我原さん、いつも初めて知ることばかりで勉強になります。
あまりにも歴史に疎くて、よく今日まで過ごして来れたものです、私。
ありがとうございます。

小松姫(稲姫)の

>片足でドンと床を踏み付け

鍋之助さんのイラストのイメージとぴったりです。息がぴったり合っていますね。

本多忠勝公が大河ドラマになった時には、やはり親子三代のお家物語風がよろしいかと思います。
忠朝もかわいいのう(*^_^*)


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Unknown (久我原)
2011-09-28 00:35:00
ジャンヌの方様、毎度毎度、名編集ありがとうございます。
わかりやすい補足が助かります。

今回はちょいとばかり、時代を戻して忠朝の姉である小松の方と真田信幸の結婚について書いてみました。

それにしても、真田太平記の動画をよくも見つけてくれましたね。ネタばらしをすると実は真田太平記のこのシーンを見て今回の番外編を書いてみようと思いました。本編「忠朝と伊三」では今後、真田信之(信之改め)と小松姫も登場する予定なので、イメージ・トレーニングのつもりです。

信幸との見合い(?)の時に、叱られた小松姫が信幸に惚れたと言うエピソードですが、それ以外の場面は得意の妄想です。木に登った忠朝が降りられなくなり、ピーピー鳴いていると言うシーンもこんな記録はどこにもありません。こんなことがあったかも知れないと言う妄想です。わんぱくの忠朝が大人しい兄忠政よりも、おてんばな稲姫の方が好きだったと言う話もこうだったらいいなあという希望的想像です。
勉強など言わずに、軽い気持ちでお付き合いいただけると助かります。

茂辺地様。
お読みいただきありがとうございます。実は登場人物は勝手にキャスティングをしながら書いています。
例えば、伊三は赤井英和、サキは中村優、忠朝の少年時代は加藤清史郎君、岩和田の茂平は中村又五郎もしくは田中邦衛(こりゃ、梅安の音羽の半衛門とかぶってる)

次回は本編「忠朝と伊三」の大多喜の場がやっとこさ再開です。しばらく、忠朝にも会えなかったので、楽しみです。(と、悦
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編集 (ジャンヌ)
2011-09-28 20:03:54
久我原殿

私も「忠朝と伊三」に、真田親子が出てくるだろうなと妄想して、イメージトレーニングのつもりで、他人まで巻き込んでいます。小さな親切大きな・・・という感じのジャンヌです。
掲示板ではイメージトレーニングを通り越して、怒られそうなyoutubeもUPしてみました(笑)
キャスティングもぴったりですが、高橋英樹さんも特別出演させて欲しいです。
大人になった忠朝は、金城武さんはいかがでしょう?

小松姫は・・・とか、妄想も楽しいですね!


真田幸村や伊能忠敬等をNHKの大河ドラマにという活動も行われているようですが、地域のPRだけでなく、それがどのように今の私と繋がっているのか知りたいです。

久我原さんのお陰で、ドンロドリゴを救助したことが、国際的に意味のあることだったと知り、それだけでも大多喜城主に感謝したいです。



それにしても、ふくだやさんの芋ようかんの重箱が欲しい!!!
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小松姫が・・・ (倭音)
2011-09-29 09:05:58
久我原さん・・・

小松姫が・・・生き生きと描かれていて・・・つい・・・引き込まれてしまいましたぁ

この時代の・・・姫君様方は・・・いろいろと・・・大変だったのですねぇ・・・

歴史に疎い倭音は・・・この小説を読むことによって・・・この時代の様々な人々の生活を知るましたぁ・・・

それにしてもぉ・・・この時代に生きて・・・それでも・・・自分を貫く・・・小松姫はぁ・・・女性としてもぉ・・・憧れますねっ

この強さは・・・何処からくるものなのでしょうかぁ・・・やはり・・・本多の血筋でしょうか・・・

そして・・・この時代に・・・それを許している・・・本多忠勝公が・・・また・・・すごい・・・

器が違うなぁと思わずにはいられません・・・

読み終えて・・・少しでも・・・小松姫に近づかなくては・・・と考えた・・・倭音なのでしたぁ

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