(承前)
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ケガ猫は、昨日の場所から、10メートルほど移動したらしい。 それくらいの移動はできる、と考えれば、重篤ではない。 それくらいの移動しかできない、と考えれば……重篤である。 |
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ところで、保護に必要なのは、「カネ」と「テマヒマ」である。 「カネ」というのは、主に、病院の支払いである。 今の場合、少なくとも数万円はかかるだろう。では、誰が払う? 「テマヒマ」というのは、主に、保護預かりである。 つまり、給餌・給水と、糞尿処理と、投薬である。 それを毎日続けるのだ。では、誰がやる? |
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XさんやYさんと話した。 「カネ」と「テマヒマ」というハードルが、 かろうじてクリアされたようなので、 保護を試みることにする。 |
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その際、いつものリュックを使うことにする。 ちなみに、私は以前にも、 たまたま持参していたリュックで猫を保護したことがある。
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Xさん・Yさんと共に、現地に行ってみる。 いた! |
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患部の状態は、よく見えない。 地面に接しているあたりが、患部なのだろう。 なんだか「腰が抜けている」ように見える……。 |
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ケガ猫は、護岸を昇りたいらしい。 だが、それが、できないようだ……。 |
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私たちは慎重に近付いた。 私はかろうじて、ケガ猫に触れることができた。 なんとか、背中をなでることができた。 |
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だが、ケガ猫は、私を威嚇する。 逃げてしまうかもしれない。 或いは、こちらが傷つくかもしれない。 私は諦めかけたが ―― Yさんが、ケガ猫をうまくなだめた。 どうやら、ダッコできそうだ。 |
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私は、リュックのジッパーを開けて、保持。 すかさずYさんが、ケガ猫を抱え上げて、リュックに入れた。 リュックごと、護岸の上に搬送。 Yさんが車を回してくれるのを待つ。 |
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ケガ猫は、おとなしい。 暴れる気力もないのかもしれないが……。 |
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ちょっと中をのぞいてみる。 ケガ猫は、落ち着いている。 やれやれ。 |
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やがてYさんの自動車が到着。 ケガ猫は、このリュックに入れられたまま、動物病院に搬送された。 |
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後でリュックを返却してもらってから判ったことだが、 リュック内部には、凄まじい悪臭が付着していた。 ケガ猫の患部には、ウジが湧いていたとのこと。 おそらくは数日間、ろくに動けなかったであろうケガ猫は、 糞尿も垂れ流しだったようだ。 |
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私はリュックを捨てることにした。 リュックとしても、これほどまでに猫に尽くしたのだから、本望だろう。 |
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ケガ猫は、数日間、入院した。 詳しいことは、ここには書かないが、ともかく一命を取り留めた。 保護しなかったら、あの場所で死んでいただろう。 ケガ猫は退院後、とりあえずYさんの家で療養することになった。 |